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2022.04.24

【OWNDAYS田中修治・後編】稼ぐ力をつけさせるために教育にお金を使う──連載「イノベーターの子育て論」Vol.10

日本のビジネス界やエンタメ界を牽引するイノベーターたちの“子育て論”に迫る本連載。第10回目は、「破天荒な経営者」として知られる、OWNDAYS代表取締役社長、田中修治氏の子育論・後編。【連載 イノベーターの子育て論はこちら】

田中修治01

11歳の男子と、3歳になる男女の双子、3人の父として考えること、想うことを、赤裸々に語ってもらった。

世の中の事象をリアルに受け止めるには、実体験が大切

11歳の長男は、現在、インターナショナルスクールの4年生。卒業後は、スイスに留学することが決まっている。

「息子をインターに入れたのは、英語という目的もありますが、さまざまな価値観に触れさせたいというのが大きかったですね。インターは、いろいろな国籍の、文化も価値観も、家庭環境も異なる子どもが通っています。息子はそこで、世界にはいろいろな国があり、いろんな人種がいて、いろんな価値観や暮らしがあるということを、体感しているわけです。幼少期にその体験をしておくことは、すごく大切だと思う。

例えば今のウクライナの問題にしても、『どこか遠くで起きている、自分とは無関係なもの』と捉えている人もいるでしょう。よほど感受性が強くない限り、自分が実際に目にしたり、体験したりしていないことは、現実感が乏しいのは、ある意味、しかたがないと思います。でも、外国人の友人がいる息子にとって、それは、身近な問題として受け止められる。世の中のさまざまな事象や価値観を、リアルに感じられる人間になってほしいんです」

スイスに留学させるのも同様の理由からだ。

「ウチくらいの家庭でも、日本では、お金持ちの部類に入ってしまう。だけど、スイスの寄宿舎では、ウチなんて庶民以下。上には上がいるし、下には下がいる。それを、息子に体感してもらいたい。当社はボランティア活動にも力を入れていて(OWNDAYS EYECAMP)、東南アジアの貧困層のサポートも行っていますが、コロナ禍前は、息子を同行させていました。彼が8歳の時に、初めてフィリピンのスラム街に連れて行った時は、さすがにショックで、言葉を失っていたけれど、何度か体験するうちに、息子にとってそれは“リアル”になった。『世界には、自分と同じくらいの年齢で、その日食べる物にも困り、働かざるを得ない子どもがいる』ということを、息子は、経験を通して、知ったわけです」

スケールはやや小さくなるものの、日本にいても、こうした貧富の差を子どもに認識させることは可能。

「高級住宅街と呼ばれるエリアと、ドヤ街みたいな場所、その両方を子どもに見せるだけでもいい。子供が、そうした格差に疑問を持ち、親に尋ねるかもしれないけれど、答えを用意する必要はないと思います。『どうしたらいいんだろうね、いっしょに考えよう』でOK。とにかく、自分が暮らしている世界がすべてではないんだということを教えることが大事だというのが、僕の考え。価値観の、上下の振れ幅とでもいうのかな。それをできるだけ広く持たせることが、これからの社会を生き抜いてく上で、物事を考える一番重要なモノサシになってくれると思います」

OWNDAYS EYECAMP

3年前、長男はフィリピンのスラム街で、同世代の子どもにメガネや文具、食料配布のお手伝いを。日常との”落差”を体験させることも、田中流子育てだ。

価値観の振れ幅の大きさが、多様性の時代を生きる力になる

自分の力で道を切り開き、社会で影響力を持つリーダーになれる人間。それを意識して、子育てをしているという田中氏。多様性が求められる時代、リーダーたる者に必要なのは、さまざまな価値観を認め、取り入れていくことだ。

「狭い社会のなかで生きていると、自分とは異なる価値観や発想に耳を傾けることはできないし、別の世界、暮らしがあること自体、想像できないでしょうね。『パンがないなら、お菓子を食べればいい』という言葉は、まさにそれ。人間は、自分が想像できないことは、受け入れられないものだから」

言葉を選ばずに言えば、多くの人を従え、牽引するリーダーは、社会において成功者と称される存在だ。社会的地位はもちろん、金銭的にも恵まれた“持てる者”と言っても過言ではなかろう。“持てる者であるリーダーが、”持たざる者“の存在をリアルに感じられず、自分の価値観だけで動いてしまったら……。持てる者が富を独占し、持たざる者を踏み台にするなどして、分断が生まれる危険性は大。世界は悲惨な方向に向かってしまうだろう。

「僕は、自分の力で、“持たざる者”から“持てる者”になったけれど、子供たちは、最初から“持てる者”として生まれ、育っています。持たざる者の存在をリアルに感じ、その声に耳を傾けられる人間にするために、さまざまな体験をさせる。それは、親としての責任だと思っています」

生活レベルを維持できる「発射台」に載せるまでが、親の役目

「持てる者と持たざる者」といった言葉をはじめ、謙遜を美徳とする日本人は、口にしたがらないようなお金に関する話も、田中氏からは、“普通のこと”として飛び出す。

「ウチの子たちは、毎年ビジネスクラスで、海外の高級リゾートに当たり前のように遊びに行ったりする。でもそれは、もちろん子供が望んだ事ではなくて、親である自分達がやりたいことに、ただ子供を付き合わせているだけ。でもそんな暮らしに否応なく慣らされてしまった子供たちに対して、大人になった時に、『あとは、自分たちでどうにかしろよ』と放り出すのも、親として無責任かなと思います。かといって、大金を渡して、『これで生活を維持しろ』というのも違う気がするし、何より子供が自らの力で成長して豊かになる楽しみを奪ってしまうことにもなる。

だから今、できる限りお金を子供の教育に費やして、“人生を自ら豊かにできる力”をつけさせようと思っています。小学校時代に基礎学力をつける、英語を話せるようにする、世界中に友人を作る。それらは、子供たちを、“発射台”に載せてあげるためなんです。

だけど、親がやるのは、そこまで。あとは、親がコントロールできるわけではないし、するものじゃない。子供の人生は子供のものであって、親の手を離れたら人生は自分で決めて、自分の力で進んでいかなくてはいけない。その結果、人が羨むような、せっかくの教育や環境も全部台無しにしてしまうかもしれないし、世界を変える偉人になるかもしない。あとは野となれ、山となれ……です(笑)」

※前編はこちら

Shuji Tanaka
1977年埼玉県生まれ。20代から起業家として、さまざまなビジネスに携わり、2008年に「OWNDAYS」を買収、同社代表取締役社長に就任。著書『破天荒フェニックス オンデーズ再生物語』、『大きな嘘の木の下で ~僕がOWNDAYSを経営しながら考えていた10のウソ』(共に幻冬舎)で、独自の経営&人生哲学を披露している。

【連載 イノベーターの子育て論はこちら】

TEXT=村上早苗

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