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2022.04.19

アルコ&ピース平子祐希のファッションのこだわり「靴ヒモを締めた瞬間、スイッチが入る」

ビジネスの最前線で闘うリーダーやスペシャルな人の傍らには、仕事に活力を与え、心身を癒やす、大切な愛用品の存在がある。それらは、単なる嗜好品にとどまらず、新たなアイデアの源となり、自らを次のステージへと引き上げてくれる、最強の相棒=Buddyでもあるのだ。今回紹介するのは、アルコ&ピース 平子祐希さんの相棒シューズ。特集「最強の相棒」

平子祐希

「妻がこの靴を贈ってくれたのは4年前、39歳の誕生日。スーツにもカジュアルにも合わせられるところも気に入っています」。

自分を変えてくれた特別な存在

世界中の紳士の足元を130年以上にわたって包んできた、歴史あるオールデンの革靴。なかでも「革のダイヤモンド」といわれるコードバンは、履きこみ磨きこむほどに光沢と重厚感が増していく。

「最初は硬かった革が自分になじんできたのを確認しながら、じっくり磨く時間が好きです。シワが入って嬉しいなんて思うものって他にないですよね」

妻から誕生日に贈られたこの靴を、芸人・平子祐希氏は愛おしそうに眺める。

「もういい大人なんだから、足元から固めなさいということだったのでしょう。オールデンは最高級の靴だと知っていましたから、まさか自分が履くものだとは思っていませんでした。だけど履いて、なじんでくると、その心地よさに、ああ、いい靴ってこういうことだったのかと、ハッとしましたよ」 

そこから色違いも購入、さらにはタッセルつきローファーも手に入れて現在合計3足のオールデンを所有している。けれども記念すべき最初のオールデンは自分を変えてくれた特別なものだという。

「履くと足元から背筋が伸びるような気がして、服や時計も、この靴によりそえるようなものを自然と選びます。この靴のおかげで自分のことを改めて考えるようになりましたよ。だって芸人はTシャツやジャージーで舞台に上がっても許される職業。自分で意識しないと年齢に合ったものを身につけなくなってしまうんです。でも自分は、最低限はちゃんとしたい、そう思うようになりましたね」

平子祐希

オールデンの専用シューケア用具で念入りに手入れ。「月に1度、靴磨きの日をつくって、持っている革靴を腕がパンパンになるまで全部、じっくり磨きます。本当は週に1回くらいやりたいんですけど、なかなかヘビーな作業ですからね~」。

平子祐希

馬の臀部の皮であるコードバンは、水牛の角で作られたレザー・スティックを押しつけるように磨くといっそう美しく輝きが増す。平子氏も定期的にこの手入れを行っているという。

ネタ作りは誇らしくも後ろめたい

コンビを結成して16年、常に「いかに常識を切り崩すか」を考えてネタを作ってきた。

「社会の一員でいながら、常識に反するものを作ろうとする、これって後ろめたいことなんですよ。ネタはいつも喫茶店で作るんですが、どの店でも絶対に奥の隅の席に座ります。店の中では、パソコンで円グラフと睨めっこしているような人ばかり、そんななかで、自分だけネタ作っているなんて、とても誇れることではないですから。まして作りかけのものを、後ろから誰かに見られたらと思うと怖いんです。奥の隅が空いてなければ1時間くらいなら待ちますね」

平子氏のストイックで謙虚な仕事人としてのスイッチは、家の玄関を出た瞬間から入る。

「家を出る時に、革靴のヒモを一度全部解ほどき、最初から締め直します。最後にキュッと締めた瞬間に、足がホールドされて、心身ともにひきしまった感覚になる。そこからオンの自分になりますね。だけど、芸人という仕事の特性上、突然落とし穴に落とされたり水をかけられたりしますから(笑)、怪しいなって思う日は、この靴は履かないように気をつけています。だってせっかくドッキリしかけてくれるのに『オールデン汚したくないんで、いいです』って芸人としてダメでしょう(笑)」

平子祐希

Yuki Hirako
1978年福島県出身。2006年にお笑いコンビ、アルコ&ピースを結成。漫才、コント、バラエティー番組だけでなく、ドラマ出演や小説執筆など幅広く活動。著書に『今日も嫁を口説こうか』(扶桑社)がある。

TEXT=安井桃子

PHOTOGRAPH=太田隆生

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