PERSON

2022.01.09

【オカダ・カズチカ】「あえてブランド品を持つのには意味がある」──新刊『「リング」に立つための基本作法』Vol.10

2022年に創立50周年を迎える新日本プロレス。団体を牽引するプロレスラー、レインメーカーことオカダ・カズチカが自身のポリシーやプライベートを綴った『「リング」に立つための基本作法』が発売中。そのなかから一部を抜粋して紹介する。

オカダ・カズチカ氏

後輩にトゥミのスーツケースを贈る理由

「カタチから入る」ーーという考え方がある。

物事の本質を摑むよりも前に、見た目や道具を整えて、継続することによって、やがて実質が伴ってくる、というものだ。

たとえば、高級なスーツを着る。最初は似合わない。それでも着続けると馴染んでくる。やがて、そのスーツにふさわしい人間になっていく。

現実的にはそんなに簡単ではないと思うけれど、理にかなってもいる。自分にふさわしくない高級な服を着たり、クルマに乗ったり、道具を使ったりすると、ふつうは恥ずかしいと感じるものだ。周囲の目が気になる。バカにされないように必死になる。努力の結果、実質が伴ってくるのだ。

逆もある。身なりがよくないと、実質も劣化してくる。というのも、相手を見た目で判断する人は多い。身なりが悪いと、安い扱いを受けることが多くなり、そういう環境に馴染んでしまう。

1990年代までアメリカでもっとも権威があるタイトルとされていたNWAをはじめ16回も世界チャンピオンになった、リック・フレアーというレスラーがいる。

ニックネームは「狂乱の貴公子」。髪を黄金に染めた紳士的な容姿ながら、ラフなファイトを得意としていた。猪木さんとは1995年、北朝鮮・平壌の綾羅島メーデースタジアムで開催された「平和のための平壌国際体育・文化祝典」のメインイベントで闘っているレジェンドだ。

アメリカ遠征中に、リック・フレアーの会場入りに遭遇した。カッコよかった。金髪をなびかせ、びしっとスーツを着込み、さっそうとおしゃれなスーツケースを引いていた。

そのスーツケースのブランドはトゥミ。はっとした。というのも、当時、ブランドもののスーツケースを持つ日本人選手は見たことがなかったからだ。僕自身、量販店で買った名もないメーカーのスーツケースに服を詰めて転がしていた。

僕も日本に帰国するときにトゥミのスーツケースを購入した。持ち物で人を評価することが正しいとは思っていない。しかし、持ち物で評価する人は多い。自分の中身に自信があっても、持ち物や身なりで実際よりも低く評価されたらもったいない。

それからはスーツケースに限らず、丁寧にものを選ぶように心がけている。自分としては知らない人には気付かれず、わかる人には気付いてもらえるものを持ちたいと思っている。

最近は後輩の若い選手が海外修行に行くときには、餞別に、トゥミかリモワかゼロハリバートンのスーツケースをプレゼントしている。

彼らには鞄にも気を遣えて、身だしなみもきちんとしているプロレスラーになってほしい。

 

『「リング」に立つための基本作法』

『「リング」に立つための基本作法』
オカダ・カズチカ
¥1,600 幻冬舎
なぜ強いのか、なぜ特別な存在であり得るのか……。オカダがトップに昇りつめるにあたって、強く意識したこと、自分に課していることを、心と身体、両面から率直に綴る。老若男女、誰もが自らの「リング」に立つためのヒントになる、オカダ流人生の極意の数々。アントニオ猪木や天龍源一郎との遭遇、闘い、教えられたことの記述も興味深い。
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オカダ・カズチカ
1987年愛知県安城市生まれ。15歳のときにウルティモ・ドラゴンが校長を務める闘龍門に入門。16歳でメキシコのアレナ・コリセオにおけるネグロ・ナバーロ戦でデビューを果たす。2007年、新日本プロレスに移籍。11年からはレインメーカーを名乗り、海外修行から凱旋帰国した12年、棚橋弘至を破りIWGP ヘビー級王座を初戴冠。また、G1 CLIMAX に初参戦し、史上最年少の若さで優勝を飾る。14年、2度目のG1制覇。16年、第65代IWGP ヘビー級王座に輝き、その後、史上最多の12回の連続防衛記録を樹立。21年、G1 CLIMAX 3度目の制覇を成し遂げる。得意技は打点の高いドロップキック、脱出困難なマネークリップ、一撃必殺のレインメーカー。191cm、107kg。

TEXT=玉川 竜

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