PERSON

2022.01.06

【オカダ・カズチカ】「ハッピーでいることで自分の持つ力を発揮できる」──新刊『「リング」に立つための基本作法』Vol.7

2022年に創立50周年を迎える新日本プロレス。団体を牽引するプロレスラー、レインメーカーことオカダ・カズチカが自身のポリシーやプライベートを綴った『「リング」に立つための基本作法』が発売中。そのなかから一部を抜粋して紹介する。

オカダ・カズチカ氏

SNSとの距離

僕は自分のスマホにリミッターをかけている。15分でSNSを見られなくなるように設定しているのだ。

設定の解除は僕一人ではできないようにしている。というのも、YouTube やTwitterはきりがない。何時間でも見続けてしまう。

SNSはポジティヴな情報だけくれるわけではない。

新型コロナウイルス感染症に関する政治の不手際、著名人の不倫など、ネットにはネガティヴな情報が溢れている。それに、ときには僕自身へのネガティヴな指摘もある。

2016年6月に4度目のIWGPヘビー級チャンピオンになり、連続防衛回数12回を達成したときにはアンチからの書き込みが激しかった。

〈またオカダが勝ったのかよ!〉

そんなコメントを防衛の度に目にした。最近は、阪神ファンの人が巨人が勝つ度に言うのと同じだな、と思うようになって気にしなくなったが、勝つこと、強いことを責められると、プロレスラーとしての自分の存在が否定されていると感じてしまう。周囲の人たちは、強いからこそだと言ってくれる。トップの宿命だと励ましてくれる。それでも、言われる本人の気分はよくない。モチベーションが下がる。だから、SNSを見ないように努める。

コロナ禍になり、新しいデスクを買った。すると、自宅での時間の使い方ががらりと変わった。勉強をするようになったのだ。

デスクの上に、まずデスクトップのパソコンを置いた。モニターも買い替えた。すると、そこでリモートインタビューを受けられる。本棚も置いたので、落ち着いて読書もできる。

以前はリビングでパソコンを使っていた。おもしろいもので、くつろげる場所でパソコンを開くと、YouTubeをいつまでも見てしまう。ところが、書斎のデスクだと、勉強しようという気持ちになる。

少し前までは、スマホを入れるタイムロッキングコンテナも購入して、デスクに置いていた。このコンテナにスマホを入れてタイマーをかけると、設定した時間まで開かない。スマホが使えなくなるのだ。今は、スマホ自体を書斎に持ち込まないようにしている。

こうしてSNSと距離を置くことに成功した。

ただし、ときどきSNSを見る。最近は、よくない情報が入っても平気になった。

〈オカダ、ここのところ腹がだらしなくなってない?〉

そんな書き込みを見つけても、少しずつだけど、おおらかに受け入れられるようになった。

せっかく指摘されているので、自分の腹を見る。

なるほど、確かに脂肪がついてきた気もする。SNSの指摘を素直に聞いて、練習法を変えることもある。

〈オカダ、動きが遅くなってない?〉

なるほど、そう見られているのか。

せっかく指摘されているので、コンディションを整え直す。

ネガティヴな書き込みのなかにも、気づきはある。ネガティヴな書き込みですら素直に聞けるのは、SNSと距離を置きつつ付き合っているからではないかと感じている。

ふだんから負の情報を自分のなかに入れる必要はない。汚染された情報を入れないことによって、純度の高い自分でいられると考えている。でも、食事も同様だが、良質なものばかりを身体に入れていると、免疫力が低下する。元気なときにはあえてちょっと毒を体内に入れて、抵抗力を強くするべきだと思う。

僕は常にハッピーでいたい。ハッピーでいることで、持つ力を発揮できるタイプだと感じている。そしてハッピーでいるために、矛盾するようだけど、アンハッピーなことも少しずつ体験しておく。

ただし、占いの本は見ない。神社にはよく行くが、おみくじを引くこともない。

占いを見て、よくない結果だとわざわざ気分を害するだけだ。初詣で凶が出たら、「今年はダメな年か」と思ってしまう。でも、その結果には自分の努力はまったく反映されていない。かといって大吉が出ても、幸せになれるわけではない。

僕は、自分の努力がきちんと反映される領域で勝負する。偶然起こることに心を乱されるのは無駄だ。

 

『「リング」に立つための基本作法』

『「リング」に立つための基本作法』
オカダ・カズチカ
¥1,600 幻冬舎
なぜ強いのか、なぜ特別な存在であり得るのか……。オカダがトップに昇りつめるにあたって、強く意識したこと、自分に課していることを、心と身体、両面から率直に綴る。老若男女、誰もが自らの「リング」に立つためのヒントになる、オカダ流人生の極意の数々。アントニオ猪木や天龍源一郎との遭遇、闘い、教えられたことの記述も興味深い。
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オカダ・カズチカ
1987年愛知県安城市生まれ。15歳のときにウルティモ・ドラゴンが校長を務める闘龍門に入門。16歳でメキシコのアレナ・コリセオにおけるネグロ・ナバーロ戦でデビューを果たす。2007年、新日本プロレスに移籍。11年からはレインメーカーを名乗り、海外修行から凱旋帰国した12年、棚橋弘至を破りIWGP ヘビー級王座を初戴冠。また、G1 CLIMAX に初参戦し、史上最年少の若さで優勝を飾る。14年、2度目のG1制覇。16年、第65代IWGP ヘビー級王座に輝き、その後、史上最多の12回の連続防衛記録を樹立。21年、G1 CLIMAX 3度目の制覇を成し遂げる。得意技は打点の高いドロップキック、脱出困難なマネークリップ、一撃必殺のレインメーカー。191cm、107kg。

TEXT=玉川 竜

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