PERSON

2022.01.01

【オカダ・カズチカ】「僕はほかの選手たちにとっての高い壁になり続ける」──新刊『「リング」に立つための基本作法』Vol.2

2022年に創立50周年を迎える新日本プロレス。団体を牽引するプロレスラー、レインメーカーことオカダ・カズチカが自身のポリシーやプライベートを綴った『「リング」に立つための基本作法』が発売中。そのなかから一部を抜粋して紹介する。

オカダ・カズチカ

自分が壁になって組織を強くする

2022年は新日本プロレスにとって特別な年。

1972年1月13日に設立し、同年3月に旗揚げ戦をしてから50周年を迎える。設立時のメンバーは、猪木さん、魁勝司さん(後にレフェリーになった北沢幹之氏)、小鉄さん、柴田勝久さん、木戸修さん、藤波さんの6人。

3月6日に、東京の大田区体育館で旗揚げ戦を開催した。メインイベントでは猪木さんが“プロレスの神様”とも言われたカール・ゴッチと闘い、敗れている。それから今日まで半世紀、新日本の闘いの歴史が続いてきた。

その50周年記念の年は、オカダ・カズチカの年にする。

2022年は、僕が初めてIWGPヘビー級チャンピオンになって10周年の年でもある。2012年2月12日、大阪府立体育会館で僕は棚橋さんを破り、IWGPヘビー級のベルトを初めて腰に巻いた。

その10年後の最初の大会、1月4日の東京ドームのメインイベントで、僕はIWGP世界ヘビー級チャンピオンの鷹木(信悟)さんと闘う。その試合に勝って、翌日の1月5日にウィル・オスプレイの挑戦を受けるつもりだ。

鷹木さんとは2021年に2戦して、2戦とも苦汁を飲まされた。オスプレイは、首の負傷でIWGP世界ヘビー級王座を返上した選手。この二人にすっきりと勝って、2022年を走っていきたい。

その助走としての2021年はいい形で終えることができた。10月21日、日本武道館で行われたG1 CLIMAX 31の優勝決定戦で、飯伏さんに勝ち優勝した。

この年のG1 CLIMAXのリーグ戦は、思いがけず感慨深いシリーズになった。初戦は大阪で棚橋戦。10年前に初めてIWGPヘビー級を獲ったのも、大阪での棚橋戦だった。棚橋さんとはその後何度も闘っているけれど、僕がチャンピオンだった試合が多く、たいがい後から入場している。しかし、この日は久しぶりに僕が先にリングに上がり、棚橋さんが上がってくるのを待った。棚橋さんをリング上で待っていると、10年前のタイトルマッチがフラッシュバックした。

東京の後楽園ホールでのYOSHI-HASHIさんとの試合も、“ヤングライオン”と言われた若手時代がフラッシュバックした。

YOSHI-HASHIさんとは同期。寮でも同部屋だった。毎日一緒に練習し、道場やトイレや風呂場を掃除した。日本中の会場で、第1試合を闘った。YOSHI-HASHIさんの攻撃が偶然、僕の急所に直撃して、悶絶したこともある。それまでに体験したことがないほどの激痛だったけれど、今となれば懐かしい思い出だ。

G1優勝決定戦では、飯伏さんのフェニックス・スプラッシュを僕がかわした。飯伏さんは自爆。肩を脱臼して戦闘不能になりレフェリーストップという予想外の結末になった。

あのときなにが起きたのか──。すぐにはわからなかった。

マットにうずくまった飯伏さんが次の攻撃を仕掛けてこないので、不思議に思っていると、うめき声と「大丈夫か?」というレフェリーの声が聞こえて事情を察した。

本心はピンフォール勝ちしたかったけれど、レフェリーストップでも立派な勝利だと受け止めている。

このようにG1 CLIMAX 31では、切磋琢磨してきた選手たちと闘うことができた。僕のキャリアの集大成になったと感じている。

11月にはアメリカのカリフォルニア、サンノゼで行われた大会でバディ・マシューズと闘った。気持ちのいい大会だった。

というのも、サンノゼでは久しぶりに歓声のある会場で闘うことができたからだ。

バックヤードからゲートを抜けると、客席の大歓声を浴びた。その歓声をできるだけ長く浴びていたくて、リングに向かって僕はゆっくりと歩を進めていった。

50周年を僕の年にする準備は整った。この10年、新日本は僕が牽引してきたと思っている。ここからの10年も僕が牽引していいの? 活きのいい若手は台頭してこないの? 新日本の未来に心配がないわけではない。

でも、強い若手が出てきても、もっと強い僕が叩きのめすだけだ。2022年も、僕はほかの選手たちにとっての高い壁になり続ける。僕が強くあり続けることで、新日本全体がレベルアップしていく。

 

『「リング」に立つための基本作法』

『「リング」に立つための基本作法』
オカダ・カズチカ
¥1,600 幻冬舎
なぜ強いのか、なぜ特別な存在であり得るのか……。オカダがトップに昇りつめるにあたって、強く意識したこと、自分に課していることを、心と身体、両面から率直に綴る。老若男女、誰もが自らの「リング」に立つためのヒントになる、オカダ流人生の極意の数々。アントニオ猪木や天龍源一郎との遭遇、闘い、教えられたことの記述も興味深い。
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オカダ・カズチカ
1987年愛知県安城市生まれ。15歳のときにウルティモ・ドラゴンが校長を務める闘龍門に入門。16歳でメキシコのアレナ・コリセオにおけるネグロ・ナバーロ戦でデビューを果たす。2007年、新日本プロレスに移籍。11年からはレインメーカーを名乗り、海外修行から凱旋帰国した12年、棚橋弘至を破りIWGP ヘビー級王座を初戴冠。また、G1 CLIMAX に初参戦し、史上最年少の若さで優勝を飾る。14年、2度目のG1制覇。16年、第65代IWGP ヘビー級王座に輝き、その後、史上最多の12回の連続防衛記録を樹立。21年、G1 CLIMAX 3度目の制覇を成し遂げる。得意技は打点の高いドロップキック、脱出困難なマネークリップ、一撃必殺のレインメーカー。191cm、107kg。

PHOTOGRAPH=玉川 竜

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