人生を取り憑かれた、熱狂的コレクターの偏食ぶりを拝見。まずは午前零時、神楽坂のとあるレストランの個室では、スニーカーをおかずに夜ごもり。熱々な“快食”が始まっていた。
スニーカーの価値はプレ値ではなく、自分の直感で決めるもの
京都で西陣織を経営する加納幸。5代目となる加納大督(だいすけ)さんは伝統に身を置く存在でありながら、足元はスニーカーで遊ぶスタイルだ。
「中学生の時、ブーム真っ只中に親からエアマックス90を買ってもらって履いていたことが原体験。昔からスニーカーがとても好きでした」
人に見せられるコレクションは約40足、そのほかも含めると約100足を所有している。
「一応ジョーダン1やエア マックスも持ってはいるんですけど、いわゆるプレ値スニーカーより大好きなスニーカーがあって。一番はリーボックのクラシックLX8500なんです。’80年代のMTVみたいな雰囲気が愉しくて。復刻版でも5000円そこそこで売っていますから」
人と被らない点でも英国のリーボックはお気に入り。
「僕にとってスニーカーは、音楽とリンクしている。履くと音楽が脳内再生されるんです」
そんな加納さんのスニーカーが増える理由は、スマホで気軽に買えるという環境。それが大人買いに拍車をかける。
「忘れてまた同じものを買ってしまうことも(笑)。それでも気持ちが勝るというか。大好きじゃないとできない。それが仕事に対する精神安定になっていますね。“スニーカー”と“着物”は、真逆。50年にも満たないものと、かたや1000年以上の伝統を持つもの。生活必需品と嗜好品。形の制約がある、という点では同じですし、モノづくりという意味でいえば両者はまだまだ可能性を秘めている」
西陣織を後世に伝える加納さん。その足元は近未来を彷彿とさせるスニーカーが存在感を放っている。