今まで自分が「自分らしさ」と「求められているもの』の間で正解がどこなのかを探してきたけど、それはすべて間違っていた……。感染拡大の渦中に始まった文春digitalの連載で、小林が書いたこの言葉には少なからず驚かされた。
「誰が読んでくれているんだろうと思いながら(笑)、でもだからこそ自分の感じたことを素直に書けたところがあるのかも。でも唐突だったので、読み手を驚かせてしまう部分もあったと思います。ただ、自分の気持ちや考えを表に出さなければ、本当の意味で相手とつながれないということを伝えたかった。三代目になった頃の僕は肩肘を張っていたし、グループでの経験を昇華しきれず、自分の心の置き場を見失っていたんです。コロナ禍でそういったことからすべて離れ、肩の力が抜けました。そして改めて、自分の気持ちのままに挑戦すればいいんだと思いました」
オンラインの試行錯誤で、これからの道が見えてきた
広く知られる映画俳優としての活動に加え、文章、写真など表現者としてのさまざまな活動をしてきた小林。1年遅れの10周年ツアー「THIS IS JSB」を終えて、グループの今後を模索すると同時に、3年後に40歳を迎える自分自身のあり方にも想いを巡らせている。
「コロナ禍で止まっている海外への挑戦は、人生で達成したいことのひとつであり、改めて悔いのないように考えたいです。年齢がすべてではないとは思いますが、気力体力が充実しているうちに……と思うと、これから迎える40歳はポイントになる年齢だと。ただ最近は、人間の内面から出てくるものも考えます。日々ちゃんと生活する。きちんと食べて、きちんと眠る。常に感謝の気持ちを伝える。上手く言えませんが、クオリティ・オブ・ライフのようなものからにじみ出る表現もあるように思うんですよね」
ステイホーム中には「閉ざされてしまった今だからこそ、手の届く距離から始めていく」と、さまざまなオンラインのエンタテインメント企画に挑戦した。なかでも特に印象に残るのは、自身のインスタグラムで配信した短編映画『箱の中』だ。目の前にある日常を疎かに生きてきた男が「箱の中に閉じこめられる」という超現実的な体験を通じ、本当に大切なものに気づいてゆくというストーリーだ。自身初の父親役に挑戦したことも含め、思い入れは強い。
「制作チームと話し合いながら、コロナ禍で自分が感じていた『今まで自分は何をしてきたんだ』という後悔と向き合い、自分のなかで転機になった作品でもあります。演者としての活動と並行しながら、作品のプロデュースは今後挑戦してみたいという新たな夢も生まれました。メッセージをエンタテインメントに込めて伝えるのは、それこそグループのライブと共通するものがある。YouTubeで開設したチャンネル『Naoki's Dream Village』がそういう夢に挑戦できる場所になればと思います」
パフォーマンスができなかった1年半は「自分の芸能活動のなかで最も大きな壁」と振り返る小林。自分の存在意義を考え、どうすればいいのかを悩み、落ちこんだ時期でもあったという。そういうなかで自身を変えてくれ、勇気となったのが、そうした試行錯誤だった。
「オンラインやリモートの可能性も感じましたし、歩みを止めちゃいけないんだなと。ただ同時に、実際に顔を合わせることの貴重さ、かけがえのなさも再確認しました。目の前の人を想いながら伝えてゆくことに、改めてもう一度取り組んでいきたいと思っています」