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2021.06.19

猪子寿之×小橋賢児「朝に瞑想して夜は踊る!? アフターコロナなんてない!!」

今、六本木けやき坂下で開催中の展覧会「チームラボ & TikTok, チームラボリコネクト:アートとサウナ」。そして完全会員制リトリートラウンジ「UNBORN」。それぞれを手がけた、チームラボ代表の猪子寿之とクリエイティブディレクターの小橋賢児が、今、人間の内面へのアプローチを始めたわけを語り合った。対談後編。

猪子小橋

“ととのう”ことで新たな自分を発見する

小橋 今、時代的には、自分の外部拡張というよりも、内面のほうを拡張していく時代になり始めてきていますよね。そういう意味でいうと、今までは情報によって自分が賢くなったり、刺激を受けるみたいなことはあっても、自分自身が変わるみたいなことに触れてなかったから、最近のサウナの流行りもそうですが、こんな心になるの? こんな感覚になるの? ってみんな驚くわけじゃないですか。こんな自分を持っていたのかっていうことに、みんな興味を持ち始めていると思います。

前編はこちらから

猪子 確かに。

小橋 アジアの人たちはもともと持っていたんでしょうけど、20世紀の高度成長期や物質文明の中で忘れてきてしまった。今はその感覚をもう一回思い出そうという流れですよね。

猪子 少なくともサウナで“ととのう”っていうのは、内面的に変化を起こす身体的なハックみたいなものなんで。熱くて死にかけて、冷たくて死にかけて。休憩して生きていると体が知って、頭が脳内物質のカクテル状態になって。脳が特殊な状態になるっていうのは、精神論じゃなくて、物理現象みたいな。ととのうことで、全員、脳の感度があがるんじゃないですかね。

小橋 そういう特殊な脳の状態をつくろうとしている人は世界にいっぱいいるんですよ。例えば、インドではみんな瞑想をしていたり。

猪子小橋2

会員制リトリートラウンジ「UNBORN」にて

猪子 瞑想って古くからあるアジアの文化かもしれないけど、今は世界中ですごい流行ってるじゃない。特に宗教から切り離して、マインドフルネスみたいな感じで。僕は瞑想を数十分しかやったことがないから修行が足りないけど。

小橋 でも、猪子さんがやられているアートの創作活動って、僕は瞑想だと思うんですよ。

猪子 つくってること自体がね。

小橋 そうです。作品をつくっている時って究極の集中状態で、我を忘れる忘我と一緒だと思うんです。

猪子 確かに制作の後半はそうなってますね。時間を忘れ、我を忘れている状態になっています。お台場の「チームラボボーダレス」で初めて作品をつくった時は、各作品が勝手にコミュニケーションをとって好きに動き回るから、何かを見ようと思っても視点が定まらなさすぎて。でもその視点が定まらなさすぎている集中状態って好きなんだよね。

小橋 その感覚を普段から感じているから、猪子さんは座って行う静的な瞑想はたぶん必要ないんです。

小橋

猪子 座る瞑想への興味はすごくあるんだけど、一方で快楽への執着とか許せないものに対する怒りとかがすごくあって、それが創作へと掻き立てるんじゃないかと思っていて。小橋さんぐらいまで悟ると作品がつくれなくなるんじゃないかなって思っちゃうんですよね。だから執着とか怒りの感情って好きなんです。

小橋 歴史を振り返ってみても、やっぱりそういう感情が原動力の作品って多いですよね。社会に対して何かを思わなかったら、何もつくらないし。

猪子 ただ、アートにしても、あるアーティストが普通の人からすると意味がないかもしれないことに何か意義を見いだして、延々と人生をかけてやったことっていうのは、他の人からすると、理解できなさすぎて自分の存在を超越した存在のように感じるし、それを認識した瞬間、意味がわからなすぎて感動するの。

小橋 アーティストが本当に自分の存在を超越した時に、よく何かが降りてきたみたいなことをいうじゃないですか。でもそれって、何かロジカルに考えたからたどり着いた答えではなくて、手前の究極の圧縮状態、圧倒的に自分を超越したなかで出会う、セレンディピティみたいなことだと思うんです。

自分を超越した圧倒的な何かと繋がることは、その人のなかで最大の幸福なんですよね。でも、その自分ではない何かみたいな状態をどこかで追い求めると、それは執着になっちゃうから忘我ではなくなるんですけど(笑)。

猪子

猪子 話は変わって、コロナが終息したらどうなるかと聞かれるけど、結局、前と変わんないと思うよ。アフターコロナとかないから。過去の歴史においてもアフター天然痘とかアフター水疱瘡とかなかったでしょ(笑)?

小橋 コロナ禍を経験したからといって、いきなり人間が変わるわけじゃないですよね。だから、基本的にはやっぱり集団で集まりたい、我を忘れたいみたいな感覚ってあると思います。コロナ禍前と同じ状態が実現できるのであれば、その状態には戻ると思います。ただ、時代によってコンテンツも変容していくので、まったく同じものがウケるかどうかってのは別の話ですよね。

猪子 そうだよね。大昔から禅僧は座禅を組んでいるし、大昔から祭りはあるんです。祭りがない文明なんて絶対ないわけだから、そこに戻るよね。

小橋 オンラインができて、リアルもできるみたいなことと同じで、どちらかに偏るってことじゃなくて、人間にとって忘れていた部分が戻り、でも祭りも戻るみたいなことは、短期的にはそういうのが苦手な人も出てくるでしょうけど、でも人類はすぐに繰り返す。これまでの反動で、今後は楽しいことがむしろめちゃくちゃあるんじゃないですか。みんながいきなりチーンって感じで瞑想をし始めることはないと思います。

猪子 おそらくコロナ禍が落ち着いたら、みんな朝に瞑想をして、夜は踊っているんじゃないですかね(笑)。

小橋×猪子

「UNBORN/カラーサウンドメディテーション」にて

チームラボ & TikTok, チームラボリコネクト:アートとサウナ
会期:3月22日〜8月31日
所在地:東京都港区六本木5-10-25
開館時間:10:00〜23:00) ※最終入館は21:30
休館日:不定休
料金:平日 4800円/日祝・特定日 5800円
詳細はこちら

UNBORN
場所は非公開
体験予約はこちら

Toshiyuki Inoko
1977年徳島県生まれ。2001年東京大学工学部を卒業と同時に、アート集団チームラボ創業。大学では確率・統計モデルを、大学院では自然言語処理とアートを研究。現在、お台場の「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」、豊洲の「チームラボプラネッツ TOKYO DMM」、六本木けやき坂下の「チームラボ & TikTok, チームラボリコネクト:アートとサウナ」をはじめ、常設を含むさまざまな展示が国内外で開催中。

Kenji Kobashi
1979年東京都生まれ。88年に俳優デビューし、数多くのドラマに出演後、2007年に芸能活動を休止。『ULTRA JAPAN』のクリエイティブディレクターや『STAR ISLAND』の総合プロデューサーを歴任。500機のドローンを使用した夜空のスペクタルショー『CONTACT』でJACEイベントアワード最優秀賞の経済産業大臣賞を受賞。日の出桟橋の「Hi-NODE(ハイノード)」の企画アドバイザーを務めたり、都市開発や地方創生に携わる。2020年、完全ノンアルコールバー「0% NON ALCOHOL EXPERIENCE」、2021年、「UNBORN」をオープンする。

TEXT=石川博也

PHOTOGRAPH=太田隆生

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