「宇宙への挑戦を支える幸運のお守り」
2014年、種子島宇宙センターから打ち上げられた「はやぶさ2」は、地球から約3億キロ離れた小惑星「リュウグウ」を探査。その表面サンプルを持ち帰るという壮大なミッションを成功させ、昨年12月、地球に帰還した。
このプロジェクトでメンバーをまとめるミッションマネージャを務めたのが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の吉川 真氏。その原点には、サン=テグジュペリの小説『星の王子さま』の存在があった。
「子供の頃から天体観測が大好きでしたが、中学生の時に『星の王子さま』を読んでから宇宙への興味が一気に高まりました。多くの謎を解き明かし、宇宙の本質に踏みこんでいけたらと」
吉川氏の研究室の壁には、星の王子さまの’03年のカレンダーが今もなお飾られている。
「’03年は、私が軌道決定を担当していた初代『はやぶさ』が打ち上げられた年。小惑星物質のサンプル採取と地球への帰還という、成功すれば世界初の偉業となる大勝負でした。カレンダーはその前年、箱根にある星の王子さまミュージアムに行って購入したもの。何度かトラブルに見舞われたものの結果的に『はやぶさ』は成功を収め、大きな注目も集めました。私はゲンを担ぐ性格ではありませんが、このカレンダーを買ってから物事がうまく進んでいる気がして、幸運のお守りとして大事に飾り続けています」
『はやぶさ2』は大きなトラブルもなく、ほぼスケジュール通りに進行。当初の予想をはるかに超えた大成功だった。
「『星の王子さま』の主人公である王子は、B612という小惑星の出身。カレンダーのご利益かどうかはわかりませんが、小惑星といい縁をもたらしてくれたのかもしれませんね(笑)」
YOSHIKAWA’S TURNING POINT
20歳 東京大学の天文学科で勉強を始める。
41歳 軌道決定に関わった火星探査機「のぞみ」と交信が途絶える。
48歳 「はやぶさ」が小惑星からの試料持ち帰りに世界で初めて成功。
58歳 「はやぶさ2」が帰還。「リュウグウ」の表面サンプルを持ち帰る。