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2020.12.26

阿部勇樹が信頼する、浦和レッズの影のムードメーカーとは

阿部勇樹は輝かしい経歴の持ち主だが、自らは「僕は特別なものを持った選手じゃないから」と語る。だからこそ、「指揮官やチームメイトをはじめとした人々との出会いが貴重だった」と。誰と出会ったかということ以上に、その出会いにより、何を学び、どのような糧を得られたのか? それがキャリアを左右する。水上主務編3回。【阿部勇樹 〜一期一会、僕を形作った人たち~31】

空気を締めるのもまたムードメーカーの役割

20年あまり浦和レッズで主務として仕事をされてきた水上裕文さん。トップチームのスケジュール管理をはじめ、選手にとっては頼れる人でした。

人懐っこい笑顔の持ち主で、その顔を見るだけで、ホッとする安心感がある。こちらの緊張感をほぐして、話がしやすい空気を醸し出している。

僕はそんな水上さんがいてくれると落ち着いた。

「最近、試合前に水上さんがボールを蹴っていないけれど、どうされたんですか?」

 知人からそう問われたことがある。今季、フットボール本部強化担当に異動し、トップチームから離れたから、水上さんの不在を不思議に思う人も多いだろう。

常にチームに帯同していた水上さんは、試合前のアップのときにはゴールキーパーにロングキックを蹴ることも多かった。那須大亮が出場するとき、那須の要望で、気合いを注入するように彼の背中を叩いて送り出していたのも水上さんだった。以前ACLで相手選手と衝突したときも、選手を守るために戦ってくれた。浦和レッズを見続けているファン・サポーターにとっても、水上さんの存在は大きなものだったに違いない。

チームがうまく回るよう陰に日向に動いてくれていた。その気の配り方は、チーム内、クラブハウス内だけでなく、練習場やスタジアムの周囲のことにまで苦心されていたと感じる。

「今は楽しく騒ぐときじゃないだろう」

選手にそう告げる水上さんの姿を何度も見た。逆にその言葉すらふさわしくない状況では、厳しい表情を浮かべていたことを思い出す。

水上さんはチームのムードメーカーだった。

ムードメーカーといえば、盛り上げるタイプの人をイメージするかもしれないけれど、空気を締めるのもまたムードメーカーの役割だ。

特別なにかをやるというよりも、自然にそれをやっていた。多分、水上さん自身も特別意識することなく、行動していただけに違いない。その自然体のふるまいがすごかった。

長きに渡り、チームや選手を見てきた経験のなかで身につけた水上さんならではの技と言ってもいいのかもしれない。

キャプテンとして、ベテランとして、チームのために何ができるかを考えるとき、僕はそんな水上さんを思い出すこともあった。特別な言動ではなく、日々のプレーやふるまいで「今やるべきことはなにか」をチームに発信したいし、空気を作ることができれば、それが一番だと考えていたから。

水上さんは「レッズ愛」に溢れていた。

本当に好きじゃないとできないだろうという仕事をしてくれたから。感謝しかない。

これからは新しい場所で、レッズのために力を尽くしてくれるはずだ。

練習場にジャージを着た水上さんがいないのは僕ら選手にとっては、寂しさしかないけれど。その経験とレッズの歴史を見てきた眼が、新しい場所で生かされるだろうし、クラブの武器になると思う。水上さん自身にはいろんなことにチャンレジしてほしいし、上へ行ってほしいとも思う。でも、社長という感じは、今はしないけど(笑)。
 
今季、浦和レッズレディースが6年ぶりになでしこリーグ優勝を果たした。僕らトップチームが苦戦しているなかで、レディースの優勝が浦和の街に活気をもたらしてくれた。本当にうれしいし、いいプレッシャーをかけてもらえた。

来季から女子プロリーグWEリーグが開幕し、浦和レッズレディースもそこへ参入する。女子サッカーが盛り上がっていけば、小さな女の子がそれを見て、サッカーを始めてくれたら、本当に素晴らしい。
 
クラブはトップチームだけでなく、アカデミーという育成チームやレディースチームもあり、浦和レッズという大きなファミリーをつないでいるのが、スタッフの存在だと感じる。

浦和レッズには水上さんに限らず、長くクラブを支えて来てくれたスタッフがいる。女性スタッフも少なくない。そういう歴史を知っているスタッフの声を大事しながら、新しいスタッフと融合することで、クラブも強くなっていくんだと思う。

TEXT=寺野典子

PHOTOGRAPH=Getty Images

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