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2020.12.12

阿部勇樹がリハビリで改めて感じた大切な人とは

阿部勇樹は輝かしい経歴の持ち主だが、自らは「僕は特別なものを持った選手じゃないから」と語る。だからこそ、「指揮官やチームメイトをはじめとした人々との出会いが貴重だった」と。誰と出会ったかということ以上に、その出会いにより、何を学び、どのような糧を得られたのか? それがキャリアを左右する。水上主務編1回。【阿部勇樹 〜一期一会、僕を形作った人たち~29】

4カ月ぶりの完全合流

11月上旬、紅白戦に出場した。2週間ほど前から部分的な合流をしてはいたけれど、4カ月ぶりの完全合流。リハビリ期間は長引いたが万全を期して復帰したかったので、リバウンドもなく、順調に調整が続いている。

サッカーの試合で、多くの人の目に映るのは、選手や監督、コーチなどの姿だろう。指揮官のもとでトレーニングを積み、そして試合のピッチに立つために監督から選ばれた選手がスターティングメンバ―として戦う。そんな選手は試合に出ていないチームメイトをはじめ、スタンドを埋めたファン・サポーターなど、多くの人たちの想いを背負う覚悟がなければならない。それがプロ選手だと思う。

けれど、チームやクラブにはさまざまな仕事があり、前線で戦う僕ら選手をバックアップしてくれている。

今回、僕のリハビリにおいても、ドクターやトレーナーなど、多くのスタッフが僕の復帰に力を貸してくれた。けっして、ひとりで復帰できたわけじゃない。

それと同じように僕らが快適な環境で、サッカーに集中できるのは、そういう縁の下で活躍してくださっているスタッフたちの「プロとしての仕事」のおかげだ。

クラブハウスの食堂で食事を作ってくださる方、練習着の洗濯やクラブハウスの掃除をしてくださる方、いつもグラウンドの芝を最高のコンディションを維持してくれる方……練習環境だけを取り上げても、たくさんの人たちの力を借り、僕らの日々は成り立っている。

当たり前にサッカーができる日常は、実は当たり前ではなく、それを可能にしてくれる人たちがいるから、成立しているということを忘れてはいけないし、レッズへの愛情に溢れた彼らの分まで、僕らは頑張らなくちゃいけない。

なぜ、今日も滞りなくトレーニングができたのか? 試合ができたのか?

そのことを日々意識し、サポートしてくれる方たちも含めて、ファミリーとして団結すれば、その輪がどんどん大きくなることが、大切だ。

今回はそんな黒子のひとり、水上裕文さんについて話そうと思う。

今季からフットボール本部強化担当に就任した水上さんは、浦和レッズで20年以上主務として、トップチームを担当されてきた方だ。

主務の仕事を簡単に言えば、チームの活動、試合や練習、合宿などが円滑に行えるように準備することだろう。だからその仕事は多岐にわたるんだと思う。僕もすべてを把握しているわけではないけれど。

まず、練習など毎日のスケジュールを管理している。監督からの意向をまとめて、そのために必要な段取りを行い、僕ら選手に伝達してくれる。遠征があれば、その移動手段や宿泊先を調整する。ACLなど海外でのアウェイ戦の場合は事前に現地へ行き、チームがストレスなく試合に挑める環境作りをするのも主務の仕事だ。

水上さんの的確で素早い仕事ぶりに触れていると「やるべきことを後回しにしない」という姿勢を痛感した。僕自身、「あとでもいいか」と後回しにしてしまうことがあるが、それが無用な遠回りになったり、タイミングを逸してしまい悔やんだ経験もあった。でも、水上さんはやるべきことから逃げない。長くクラブにいれば、目をそむけたくなるようなこともあったかもしれない。でも、水上さんが目をそむけずにやるべきことを淡々とやってくれたから、チームは回ってきたんだと思う。

TEXT=寺野典子

PHOTOGRAPH=Getty Images

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