小林直己はフィルムカメラで写真を撮る。ここにあるのは撮ったなかでも三代目の今の空気感が立つ写真だ。本特集「偉業の軌跡、7人の結キズナ束」のエピローグに代えて。
名前のつけられない関係
小林直己
全てのものが写り込んでいる。初めてプリントした写真を見てそう思った。ファインダーを覗き、心が動いた瞬間にシャッターを切る。フィルムはその場でどんな写真が撮れたかを確認できない。家に帰り現像をしてネガにする。暗室で印画紙にプリントしていく。浮かび上がるその画を見た。『全てのものが写っている』
心の内の言葉をさらけ出す方法としての写真は、そのタイムラグも含め最高のツールだと感じる。モノクロで浮かび上がるその一瞬の切り取りは、あくまで光と影が映し出す明暗でしかない。レンズの絞りとシャッタースピードを調節し、いま目の前にある風景をそのままの姿でただ切り取る。しかしそこには確実に、写真家と被写体の関係が切り取られている。
一説によると、まばたきは1/60秒と言われている。その時間の幅で切り取られている一人一人のメンバー。けれど、映し出された画が露わにするものは僕と被写体との、この十年の時間である。
肉体は正直で、その衝動が動く瞬間にシャッターは押される。お互いの信頼、歴史、緊張、甘え、全てがそこに映し出される。1/60秒という時間の幅が写真によって十年以上に引き伸ばされ、それが一目で感じられる形に定着される。それだから写真は面白い。
十年目を迎え、未だ歩みを止めないメンバー同士の関係性は、十年前のそれとは確実に違う。兄弟であり、ライバルであり、仲間、そのどれもが当てはまりそして何かが欠けている。そんな名前のつけられない関係を、この先も重ねていきたいと思う。
2020.1.26