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2019.02.08

ワインスペシャリスト渡辺順子×中野信子 「ワインとは教養である!」【対談】

世界有数のワインオークション会社、Zachys(ザッキーズ)の日本代表であり、高級ワインに関するコンサルティングサービスを行うプレミアムワインで代表取締役を務める渡辺順子さん。対しフランスで研究に従事し、ワイン文化を肌で感じた脳科学者の中野信子さん。ビジネスの現場と人の脳という異なる視点から、エグゼクティブが知るべきワインという教養について話してもらった。

中野信子

ワインの知識と経験がビジネスを左右する!?

渡辺 NYのように人種も宗教も多様なビジネスの現場では、会食の話題にも配慮が必要です。そんな時、共通の話題として最適なのがワイン。詳しくなくても、自分の好みやその日のワインの感想を伝えるだけでも、無理なく会話に参加できますし、詳しい者同士であれば、ワインを通じて知的なコミュニケーションも交わすことができます。

中野 日本だとワインに詳しいことが特別なように受け止められますが、フランスではどんな人もワインを知っているのは当たり前。味の特徴や産地など、普通の言語空間に”ワイン”が存在しているんです。

渡辺 そうですね。アメリカでも、社会人のマナーのひとつという感覚だと思います。

中野 フランス人とドイツ人が自国のワインのほうが美味しいとジャブの応酬を楽しんでいたり。自分の国をアピールするツールでもあるので、これから私たちも日本ワインをちゃんと知るべきですね。

渡辺 政治の世界でも、ワインは重要アイテム。例えばホワイトハウスに外国の要人が招かれた時、出されたワインをチェックしてみてください。どの程度のレベルのワインなのか、ワインの格がその国との関係性を表しているんです。ビジネスパーソンなら、そんな国際情勢や外交の視点でワインを見るのも面白いと思いますね。脳科学の観点からだと、どんなところにワインの面白さがありますか?

中野ワイン

「出されるワインに国同士の外交関係が透けて見えることも」

中野 ワインの重要な要素に”香り”がありますよね。視覚や聴覚、味覚などは大脳皮質で処理された後に、記憶の領域である海馬に到達するんですが、五感のなかで唯一、海馬近傍に直接神経が伸びているのが嗅覚。だから香りは記憶に定着しやすく、その時の思い出とともに呼び覚まされます。

渡辺 確かに、フランスでワインの勉強をしていた時も「香りの記憶は残る」と言われました。

中野 ただ、嗅覚は言語化するのはすごく努力が必要だと思います。ワインの表現にも「濡れた犬の匂い」などユニークなものがありますよね(笑)。

渡辺 いったいどんな匂いだっていう(笑)。私の場合は、現地のスーパーに行って陳列されている果物の匂いとか嗅ぎまくってました。ワインを飲んで、それが何に似た香りかを一瞬で判断できるくらいに。また、ビジネスとして知っておくべきなのが、ワインは世界中にマーケットがある投資のひとつでもあるということ。アメリカでは景気がよくなると、まずワインが売買されるんです。株価を見なくてもウォールストリートのワインショップを見れば、その忙しさで株価が上がったかわかると言われているんですよ。

中野 それは面白い!

渡辺 最近だと、米中の貿易戦争の影響でワインオークションの上顧客だった中国の方の購入が伸び悩む状況に。そんな今の経済や国際情勢が面白いように表れるんです。ワインは世界共通の言語であり、通貨のひとつとも言えます。

中野 ますますビジネスには必須だと納得できます。さらに言えば、知識としてワインの銘柄は重要ですが、味わいを捉えるなら直感を磨くことも必要だと思います。どちらの飲料が美味しいか選択する脳科学の実験で、商品名を見せずに試飲すると無名ブランドを選ぶのに、商品名を見せると有名ブランドを選ぶ傾向があるというものがあります。社会性を司る前頭葉がブランドの価値を判断し、味よりブランド名に引っ張られてしまう。意外と自分の理性的な判断に自信がある人のほうが、プリミティブな感覚を信じられずに、騙されることが多いんですよ。

渡辺 確かに一時期フェイクワインが出回って、世界で120億円もの被害が出たことがあります。味に疑問を持っても「いやこれはロマネ・コンティだから、そんなはずはない」と思ってしまうんですよね(笑)。

中野 そのプリミティブな感覚は、実はビジネスでも必要だと思います。今評価されていなくても、自分の感覚で新しい魅力的なワインや、これから有能になる人材を見いだすこともできるかもしれません。

渡辺 自分の感覚も磨くことができ、美味しいうえに教養にもなる。そんなワインを楽しんでいただきたいですね。

中野ワイン2

「ワインの知識以上に自分自身の直感を磨くことも重要」

Junko Watanabe
1963年愛知県生まれ。2001年「クリスティーズ」入社。帰国後、’10年にプレミアムワイン設立。著書『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』が話題になっている。

Nobuko Nakano
1975年東京都生まれ。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。東日本国際大学特任教授。『シャーデンフロイデ』、『不倫』、『戦国武将の精神分析』など著書多数。の精神分析』など著書多数。

TEXT=牛丸由紀子

PHOTOGRAPH=太田隆生

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