師匠か、恩師か、目をかける若手か、はたまた一生のライバルか。第4回は、大胆な取り組みで次々に話題を生み出す経営者ふたり。
高岡 初めてお会いしたのは、2011年でした。
松本 100年くらい前から知っている気がするんですが(笑)。
高岡 外資系トップで長く業績を伸ばす人は、僕のなかでは本物感がありました。だから、憧れの人だったんです。ひょっとして怖い人なんじゃないかと思ったんですが、すごく優しい人で、引き込まれました。
松本 言語が同じなんですよ。ひとつは関西の言葉(笑)。そして、考えていること、やることが似ている。格好つけないし、ズバッと実行する。
高岡 僭越ながら、役員の集まる会にもお招きいただいて。
松本 日本のお菓子業界は勝手に儲からないと思っているんです。そんなことはないのに。
高岡 そうですね。ジョンソン・エンド・ジョンソンもネスレもそうですが、世界的な企業は、ものすごく利益率が高い。
松本 どうやったらもっと高収益になるか、頭を完全に切り換えないといけなかったんです。
高岡 僕自身、日本だからできないとは思っていないです。
松本 CMやPRに、思わず人に話したくなるニュース性を盛り込む話は特に面白く、考えさせられました。あなたのすごさはイノベーティブなところ。僕はそれができない。僕がやっているのはリノベーションですから。
高岡 松本さんにお褒めいただくのは、本当に嬉しいです。日本で経営することの厳しさを、本当によくご存知なので。
松本 高岡さんは、仕事が好きでしょう。それが一番。僕は今も毎週末、小売店巡りをしています。他社の商品を見て、これはどうやって売るのがいいんだろう、なんて考えたりしている(笑)。同じじゃないですか。
高岡 はい(笑)。いろいろ考えるのは面白いです。予想がハズれることもありますが。
松本 ハズれるほうが多いですよ。大事なのは打率です。
高岡 そして打席を増やすことも大事なんですね。
松本 仕事より面白いものはないと思うんです。世のため人のためになる。お金を稼ぐことができる。僕らはオーナーじゃないから、儲けても自分のお金にはなりませんけど(笑)。
高岡 税金を納めることが、最大の社会貢献だと思うんです。
松本 こんなふうに話がスパッと通るんだなぁ(笑)。
高岡 自分にとって、松本さんはロールモデルです。それこそ父親代わりだとも思っています。
松本 ハイ、私の12歳のときの息子です(笑)。
ネスレ日本 代表取締役社長 兼 CEO 高岡浩三(左)
1960年生まれ。「キットカット」受験生応援キャンペーンを成功させ話題に。2010年に、100年の歴史のなかで、日本人の生え抜き社員として初の社長に就任。
カルビー 代表取締役会長 兼 CEO 松本 晃(右)
1947年生まれ。伊藤忠商事を経て、ジョンソン・エンド・ジョンソンに。8年間、社長を務めた。カルビーに転じて2009年から7期連続で最高益を更新。