35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」第144回!
grammable=インスタ映え
My plate of food is not very grammable. But it tastes good
ロンドンの語学学校にいた時にクラスメイトだった韓国人の友人から、そういうメッセージとともに、ホットケーキの写真が送られてきました。
ホットケーキの上にはかろうじてイチゴ、バナナ、チョコレートソースに生クリームが乗っているものの、ホットケーキ自体はいびつな形をしていました。
Looks good!
おいしそうだね
と返してから、彼女が送ってきたメッセージの意味を考えていました。
My plate of food is not very grammable. But it tastes good
「私の料理、すごく“grammableなわけではないけど、おいしいよ」
“grammable(グラマボウ)”とははなんなのか、意味がわからず一瞬「魅力的な」という意味の“glamorous”という形容詞が浮かびました。けれど末尾に“able”がついているのでこれはなんだろう、もう一度彼女が送ってくれた写真を見てみると。
イチゴとバナナ、チョコレートソースに生クリーム、これだけでもう美味しいのはわかっています。ただ、手作りなので生クリームもお店のように絞り出されたものではありません。クリームはゆるめで、スプーンか何かですくって置いたのでしょう、べちょっとして見えるといえば見えます。イチゴも、ちょっと古いのか、一部がピンクになっていました。
お店のようにキラキラなわけではありませんが、親近感のあるホットケーキです。
grammable=インスタ映え
という意味でした。
「インスタ映えしないけどさ、おいしいよ」
と彼女は言っていたのです。
調べてみると、この言葉、近年できた造語でしょうが、ちゃんと辞書に載っていました。ケンブリッジの辞書にはこう説明されています。
attractive or interesting enough to be suitable for posting on the social media service Instagram.
「インスタグラムに投稿するにふさわしい、魅力的でおもしろいもの」
ということで、まさにインスタ映えです。もともとは“Instagrammable”という言葉で、これを省略して“grammable”になったようです。
“Instagram”に「できる」という意味の“able”がくっついて「インスタに投稿できるくらい素敵」=インスタ映えする」ということのようです。
諸説ありますが、調べると日本語の「インスタ映え」という言葉が先にあり、それを翻訳して“Instagrammable”とか、“instagenic(インスタジェニック”)という英語になったという説もありました。“Instagenic”は“Instagram”と「写真映えする」という意味の“photogenic(フォトジェニック)”がくっついた言葉で、日本でも言われているので聞いたことがあるかと思います。ただ、こっちはケンブリッジの辞書には載っていませんでした。
“grammable”の例文にはこんなものもあり、イメージしやすいかと思います。
The holiday cottage was very pretty, very grammable.
(その別荘はとってもかわいくて、インスタ映えする)
彼女はよくチヂミを焼いて学校に持ってきてくれました。「たくさん作って食べきれないから」と言って、ジップロックに入れてきてくれたのです。他国の人にももちろん振る舞っていましたが、「わ〜チヂミだー!」と最初から喜ぶ日本人の私の方が、施し甲斐があったのかもしれません。最後の方は、私のためだけに焼いて持ってきてくれました(毎日お昼に3ポンドのサンドイッチばかり食べていた私を不憫に思ったのかもしれません)。
ジップロックに無造作に詰められたチヂミ、けっしてインスタ映えはしないけど、おいしかったな、と懐かしく思い出しました。
Illustration=Norio