新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。アフターコロナのお金論19回。
世界の金融教育と日本の金融教育
2021年の世界長者番付。電気自動車大手テスラ社のCEOであるイーロン・マスク氏が、アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス氏を抜いて1位になったニュースが話題となりました。テスラ社の株式価格の上昇が大きな要因ですが、その主な要因となったのが実は仮想通貨で有名なビットコインです。
テスラ社は、総額15億ドル相当ものビットコイン購入を発表し、これが金融界に大きなインパクトを与えました。なぜなら、S&P500に入る大手企業としてビットコインを企業資産(約10%)に組み入れた、初めての事例だったからです。
ビットコインは、あくまで暗号資産である仮想通貨の一種であり、他にも仮想通貨は数多く存在します。ただビットコインは、仮想通貨の中で時価総額が最も大きくて知名度が高いことから、仮想通貨の代表格となっています。
仮想通貨は、分散型台帳を作る技術であるブロックチェーンを利用することで、中央管理者をおかずにインターネットを通して自由に価値の保存や移転を行えることが特長です。
それでは、お金のトレーニング。ビットコインは、リーマン・ショック直後の2008年秋、謎の人物がインターネット上に公開した論文からスタートしています。その論文を発表した人の名前は何でしょうか?
答えは、サトシ・ナカモト氏。日本人の名前です。
続けて、お金のトレーニング。ビットコインも仮想通貨の一種ですが、仮想通貨は全部で何種類あるでしょうか?
答えは、3000種類を超えています。イーサリアム、リップル、ネムなども有名です。また先月、アメリカの仮想通貨取引所であるCoinbaseの上場申請ニュースも発表され、これからの仮想通貨の動向を含めて注目を集めています。世界では、ビットコインをはじめとした暗号資産である仮想通貨について、高等教育のカリキュラム導入が進んでいる国もあります。
では、お金のトレーニング。その国はどこでしょうか?
答えは、フランス。フランスの金融教育は、家計管理や投資に関する教育が中心ですが、そこに暗号資産である仮想通貨を導入する動きが進んでいます。法定通貨と仮想通貨を比較して学ぶことで、伝統的な金融システムが果たしてきた役割を理解し、さらに未来の金融システムを考えるきっかけにしているのです。ビットコインはいつかユーロと置き換えられるのか? ということを、子供のうちから自分の頭で考えはじめることができるのです。
世界では、金融教育の導入が日本よりも進んでいます。
ここでお金のトレーニング。金融教育の発祥とされるのは、どこの国でしょうか?
答えは、イギリス。2014年より公立学校のカリキュラムに金融教育が導入され、必修科目となっています。イギリスは金融教育に非常に力を入れていて、CTF (Child Trust Fund) という制度も2005年にスタートしています。これは、税制優遇措置のある子ども名義の投資・貯蓄制度で、子どもと親が投資・貯蓄の習慣を身に付けられるようになることを目的につくられました。
日本でもNISAという少額投資非課税制度があり、利用者も増加しています。この制度は、海外のある国の制度を参考につくられています。
お金のトレーニング。それはどこの国でしょうか?
答えは、これもイギリスです。イギリスでは、Individual Savings Accountの頭文字で「ISA」と呼ばれています。ちなみにNISAの「N」は「Nippon」の頭文字です。
アメリカでも金融教育は導入されていて、特徴としては「パーソナル・ファイナンス」と呼ばれる個人のお金について、シュミレーションゲームのようにお金を稼ぐこと、貯めること、増やすこと、借りること、について学習できることです。また金融教育のICT化もアメリカは進んでいます。
それでは、日本。高校の学習指導要領の改定により、2022年4月からいよいよ金融教育が導入されることが決まりました。ただ世界と比較すると、日本は金融教育についてはまだまだスタート地点です。
これから子どもも大人も、みんなが金融教育を受けられる社会になっていくことが、個人の人生がより豊かになり、さらに日本全体の成長も牽引するものになると思っています。
Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。趣味はサーフィン。