新型コロナウイルスにより、多くの⼈がお⾦について真剣に考えたはずだ。先⾏きが⾒えないなかで、今後どうお⾦と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お⾦のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児⽟隆洋⽒が、コロナ後のお⾦と資産運⽤についてレクチャー。お⾦とは何か、投資とは何かを考える。アフターコロナのお⾦論18回。
アフターコロナは若年層の投資⼈⼝が増加
新型コロナウィルス感染拡⼤の影響により、我々の⽣活は急激に変化し、それは株式市場にも⼤きな変化をもたらしました。
コロナを契機に、⽇本でも新しく投資を始めた⼈が増えています。ネット証券の⼝座開設数をみても、2019年と2020年を⽐較すると⼤きく伸びています。また特徴的なのは、20代30代の若年層の投資参⼊が⽬⽴つことです。コロナでの巣ごもり需要がその利用を後押ししていますが、さらにスマートフォンで気軽に投資を始められるフィンテックサービスの登場やSNSの普及が要因となり、若年層の投資参入が増えているのです。もしまだ利便性の高いフィンテックサービスがなく、投資手段のオンライン化が進んでいなかったとしたら、今回のコロナをきっかけにここまで投資人口は増えていなかったでしょう。
そして、これは⽇本に限った話ではなく、アメリカにおいても若年層の投資参⼊がコロナを契機に増加しているのです。コロナ対策の給付⾦を元⼿として投資を始めた⼈も多いとの調査結果もでています。
それでは、お金のトレーニング。2021年1月、アメリカの人気SNSサイト「レディット」に集結した個人投資家による投機的な株取引が株式市場を大きく揺らし、アメリカの株式市場が個人投資家の投機的動きに翻弄されたというニュースが世界中を駆け巡りました。そのとき利用されたインターネット証券はなんというフィンテックサービスでしょうか?
答えは、「ロビンフッド」。スマートフォンで株取引ができ、手数料無料のインターネット証券です。ロビンフッドを利用者している人はロビンフッダーと呼ばれ、頻繁に株式売買を繰り返すことが特徴です。ロビンフッドの利用者はすでに1000万人を超えており、SNSのような使いやすいUIUXを提供していること、少額から売買ができることも人気の理由で、利用者の8割が若年層世代とされています。
今回のアメリカでの事態は、まず個人投資家がレディット上で、業績不振であったアメリカのゲームソフト販売会社「ゲームストップ社」の買いを煽ったことから始まっています。その結果、若年層を中心にゲームストップ社への買い注文が殺到しました。値下がりを見込んで空売りしていたヘッジファンドは、高値での買い戻しを迫られることとなり、株式投資のプロフェッショナルであるウォール街のヘッジファンドが多額の損失を被ったとみられています。このようなことから、今回の事態がアメリカで、ウォール街 vs 個人投資家とも言われているのです。
それでは、お金のトレーニング。この事態をうけて、ロビンフッド社がとった行動が議論をよんでいますが、どういう行動だったのでしょうか?
ロビンフッドはゲームストップ社などの一部の銘柄の取引を制限する行動にでました。これについて、ロビンフッドは個人投資家の自由な売買を妨げたとアメリカ政界からも声が上がっています。またその反面、SNSで特定の会社の買いを煽るような行為が問題であり規制すべきとの声も上がっていて、自由と規制の議論が巻き起こっているのです。
ロビンフッドは、株式の民主化を掲げた一般投資家向けのフィンテックサービスですが、米証券取引委員会も調査に乗りだしていて、今後の動向にも注目が集まっています。
金融もテクノロジーやデザインの力で大きく変わってきていています。それは今まで投資参入が難しかった若年層の参入ハードルを引き下げ、その流れは今後さらにスピードをあげて続くことになるでしょう。
そして、今回のアメリカでの事態のように、新しいサービスが増えたことによる投資の「自由」と「規制」についても、議論が加速し、新しいルールがどんどん決まっていく段階にあります。
大事なのは、そういうニュースにアンテナを張って情報を正しくキャッチし、自分の頭で考えて判断することです。正しく資産形成したいと思っている場合、SNSで盛り上がっているから、みんながやっているからなんとなく安心という思考停止状態で株式投資を繰り返すことは危険だと言えるでしょう。
最後にお金のトレーンング。日経平均株価が、2021年2月に3万円の大台を突破して、日本の株式マーケットでも大きなニュースとなっています。それでは、日経平均株価が3万円を超えたのは何年ぶりのことでしょうか?
答えは、30年ぶりです。この日経平均株価の上昇がアフターコロナでどこまで継続して上昇するのか、注目されています。
日経平均株価の歴史的な上昇、アメリカのロビンフッドのニュース、こういうニュースが投資に興味をもつきっかけにもなるのではないでしょうか。
大事なのはその後に、雰囲気だけに流されて思考停止状態で投資を続けるのではなく、自分の頭で考え、判断し、行動することです。そうすることで、長い人生において、自分の力で自分のお金のことを正しく決めることのできるお金のスキルが身についていくのです。
Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。趣味はサーフィン。