35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。「人のEnglishを笑うな」第73回!
玄関で靴を脱ぐか脱がないか、それが問題だ
ロンドンで暮らしていた頃、備え付けの家電が次々と壊れたり、上の階の人が水道を出しっぱなしにして天井から水が漏れてくるなど、家のトラブルが多くありました。その度に修理の人が部屋にやってくるのですが、英語が喋れなくても壊れている箇所を指させばいいだけなので、人がくるといってもあまり緊張する必要もありませんでした。
しかし、最初にどうしてもこれだけは言わなければなりません。
Please take off your shoes.(靴を脱いでくれますか)
欧米では部屋に上がる時に靴を脱ぐ文化はない、と聞いていましたし、現に私の部屋にも日本にあるような靴を脱ぐスペースはありませんでした。しかし私は習慣からか部屋に入る時は靴を脱いでいましたので、できればお客さんにもそうしていただきたかったのです。
“take off”は飛行機に乗るとよく聞く「離陸」という意味で覚えていましたが、「取り除く」という意味もあり、日本語で言えば「脱ぐ」「外す」と言いたい時にこんな風に使えます。
He took off his tie.(彼はネクタイを外した)
Please do not take off your mask.(マスクを外さないでください)
以前にもご紹介した、美容院で使える“Please take ends off.「毛先を切ってください」”というフレーズ、も、この「取り除く」という意味の“take off”が使用されているんだと思われます。
しかしそれだけでなく、ケンブリッジの英英辞典では、このような意味もあると書かれています。
to suddenly become popular or successful= 突然に人気者になったり、成功したりする
to suddenly increase in value or amount=突然に価値や量が増える
to suddenly leave somewhere, usually without telling anyone that you are going= 誰にも言わず突然いなくなる
例文としてはこのようなものがあります。
That new song by Samantha has really taken off in the charts.(サマンサの新曲はチャートで本当に急上昇している)
The shares took off, climbing more than 130%.(株価は急上昇し、130%以上上がっている)
When he saw me, he took off in the other direction.(彼は私を見たら、突然歩く方向を変えたのよ)
Take offはまさに文脈によって意味が変わってくるので、注意しないとなりません。
ちなみに「家に入る時靴を脱ぐのはアジア人だけ」なんて思っていましたが、今はわりと「部屋を汚したくない」という理由で、多くの人が玄関先で靴を脱いで生活しているようです。私がイギリスに住むアメリカ人の家に行った際は、「欧米人は脱がないんだろう」と思って断りもなしに土足で入ってしまい注意されたこともあります。
ですので、私がお客さんに「靴を脱いで」と言う前に、向こうから「靴脱ぎますね」と言ってくれることも多く、せっかく覚えたこのフレーズも実は数回しか言ったことがありません。
覚えておきたい。キャンセルのもう一つの言い方
イギリスでは再ロックダウンもささやかれ、今も多くのイベントの中止が決まっており「開催中止のお知らせ」をメールで受け取ることも毎日のことです。
だいたいはこのような文面でお知らせがきます。
This event in London has been cancelled.(ロンドンのこのイベントは中止になりました)
ここでは“cancel(キャンセル)”という単語が使われていて「ああ、キャンセルか」とすっと意味が入ってきますが、たまにこう書かれていることもあります。
This event was called off because of current circumstances.
“call off”がなんなのかわからなかったのですが、“because of current circumstances = 現在の状況により)”という、コロナ渦によく使われている表現が入っていることで、「あ、中止かな」と予想できました。
call off=中止する
ただし、この言い方はあまりフォーマルではないようで、主に話し言葉で使われるようです。
また“take off”と同じく、目的語とセットで使われるため、代名詞を使う時には、「call +代名詞+off」となり、以下のように表現するそうです。
I was supposed to have dinner with my boyfriend tonight, but he got ill and called it off.(彼氏と今夜食事に行こうかと思っていたんだけど、彼の体調がよくなくて中止になった)
まだまだイベントの「キャンセル」が続きそうで、耳にする機会も多いであろうフレーズです。
MOMOKO YASUI
編集・ライター。1983年生まれ。男性ライフスタイル誌、美術誌、映画誌で計13年の編集職を経て2018年渡英、’20年帰国。