世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム124回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
タオル1本でできる素振り
今年の冬は寒いうえに、気軽に外に出ることもできないため、ゴルフ場や練習場に行くことをためらう人も多いだろう。今回は自宅にいる機会が多い人向けに、自宅でもできるタオルを使った練習をご紹介したい。
ゴルフ場や練習場以外でクラブを振る場合、かなり周囲に気をつけなければいけないが、柔らかいタオルを使えばリビングやベランダなど場所を選ばずに練習をすることができる。テレワークをしている人には、ゴルフの練習というだけでなく、休憩中の軽い運動として気分転換やストレス解消にもなるだろう。
用意する物はタオル1本のみ。バスタオルくらいの長さのタオルを見つけたら、タオルの片方の先を結んで玉を作る。アドレスでタオルの先端部分が、地面に軽く触れるくらいの長さに調整する。玉になった部分を下にして両手でタオルを持ち、素振りをすれば正しいスイングの感覚を身に付けることができる。
シャフトをしならせヘッドを走らせる感覚を養う
タオル素振りを行う前は「こんな簡単なことだけでいいのか」と思うかもしれないが、意外にうまくいかない人が多い。クラブと違いタオルは柔らかいので、「シャフトをしならせてヘッドを走らせる」ことができないと効率的にスイングをすることができない。タオル素振りは、効率的なスイングができているかチェックしつつ、スイングの感覚を養うことができる優れた練習なのだ。
バックスイングから順を追ってタオル素振りで気を付ける点を説明していきたいと思う。まず、バックスイングでは先端の玉が加速しながらバスタオルを振り上げる必要がある。アマチュアの場合、手元ばかりが先行して、先端部分がなかなか上がっていかないことがある。手元を動かしすぎたり、バックスイングのスピードが遅かったりすることが原因だ。このような状態では、オーバースイングになるだけではなく、トップで反動が使えなくなり、インパクトで速く振ることができなくなる。少し速いと感じるくらいのスピードでバックスイングを行い、運動量の比率が「先端部分>手>体」の割合になるように行ってほしい。
トップではタオルが体に巻き付いて玉が背中に当たるが、この巻き付く感じが大切だ。ただ単にタオルを担ぎ上げるのではなく、玉がバックスイングの勢いで勝手に背中に当たる感覚が、スイングの「タメ」につながるので、この「間(ま)」をしっかりつかんでほしい。
そして、玉が背中に当たった後に切り返しに入るのだが、ここでも腕や手を振り下ろすのではなく左足を踏み込んで、体を適切な順番で使ってほしい。バックスイングの後半あたりから左足を踏み込み、ダウンスイングを行うことでタオルを下半身で振り戻すことができる。
ダウンスイング後半からインパクトにかけては、手元が右腰あたりまで下りたら、目標に向かってタオルを放り投げるようにリリースしてほしい。適切なタイミングでリリースできれば、タオルの先の玉は目標方向に出ていく。左方向に出ていくのなら、リリースのタイミングが遅かったり、スイングの軌道がアウトサイドインになっている証拠だ。
このリリースが適切にできているか確認するために、タオルを投げることができるスペースがあれば、実際にタオルを投げてみてほしい。タオルの先端部分が目標方向へ飛んでいけば正しいタイミングでリリースできている証拠だ。
最後にフォロースルーではタオルが背中に巻き付くよう勢いを保ち、腕を高い位置にしてピタリと体を止めてフィニッシュを決める。
タオルは柔らかく、すぐに曲がってしまうのでクラブとは違うように思えるかもしれないが、実際のクラブもシャフトがしなり、シャフトが元に戻るのに合わせてヘッドが走る。だから、タオルを使って素振りをすることで、シャフトをしならせてヘッドを走らせる感覚が養えるのだ。先端部分の重みを感じること、タオルのしなり、スピードやタイミングなど、タオル素振りの感覚を体に覚えこませてほしい。まずは両手で行い、右手、左手と片手でも素振りをすれば、より効果的だ。
タオルで上手に素振りができるようになれば、力任せにクラブを振ることがなくなり、クラブに働いてもらうという感覚を養うことができる。ぜひ、家で過ごす時間の合間を使って、タオル素振りに取り組んでほしい。