世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム121回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
あれこれ考えるとクラブが上がらない
先日、ラウンドレッスンをしたAさんが「素振りではスムーズにクラブを振れるのですが、実際にボールを打とうとすると力が入るんですよね。素振りと同じように振れるといいんですけど・・・」と悩みを相談してきた。
「素振りではうまくスイングできるのに」という思いはAさんだけではなく、多くのアマチュアが抱いているのではないだろうか。実際、素振りは良いのに、ボールを打つ段になるとぎこちないスイングになってしまうアマチュアは多い。
Aさんの場合、素振りのスイングと本番のスイングで一番異なる点は、バックスイングだった。素振りではスムーズにクラブヘッドが上がっていくのに、ボールを前にすると「ガクッ、ガクッ」と音がしそうなくらい力が入ったぎこちないバックスイングになる。さらに、体とクラブの動きが遅くなり、素振りの軽快なバックスイングとは全く別人になる。バックスイングの速度が遅いので、そのままのスピードでダウンスイングを行うと当然速く振ることができない。その結果、ダウンスイングで急に加速することになり、上半身に力が入ってしまっていた。
本番のスイングでバックスイングがゆっくりとした動きになるのは、肩を回そうとか、力をためようなど、いろいろなことを考えすぎてしまうことが原因となる場合が多い。ボールを前にして、あれこれ考えているようでは良いスイングはできない。素振りと同じようにスムーズなバックスイングを心がけることが大切になる。
バックスイングはサッと上げる
バックスイングがぎこちなくなってしまう原因として、力みを出さないようにゆっくり丁寧に振ろうと心がけていることも挙げられる。確かに、力が入ってスイングが必要以上に速くなることはミスの原因となる。いわゆる打ち急ぎという状態だ。しかし、速くなっていけないのは切り返しであり、バックスイングの段階から必要以上にゆっくりする必要はない。むしろ、ゆっくりバックスイングをすると、ヘッドの運動量が少なくなり、無意識に切り返しで力を入れてクラブを急加速させてしまうことがある。
また、手先でクラブをヒョイっと上げるのを防止するため、バックスイングを体の動きを使ってゆっくり上げるというレッスンを聞いたことがあるかもしれない。たしかに体が動かずに手先だけでクラブを振り上げるのは問題だが、クラブヘッドと体の運動量が同じになるほどゆっくりバックスイングをすると弊害が出る。適切なバックスイングでは、体の運動量よりクラブヘッドの運動量が多くなるので、クラブヘッドにある程度の速度が必要になる。
私にアドバイスを求めたAさんには、素振りのようにバックスイングでクラブヘッドをサッと上げてもらった。素振りと同じスピードになるように、始動で1、インパクトで2となるようにリズムを口ずさみながら、実際にボールを打ってもらった。最初は気持ちが悪く、これで当たるのか不安だったようだった。しかし、実際に打ってみると、ボールをしっかり捉えることができただけではなく、バックスイングの速度が上がってためヘッドスピードも上がって飛距離も出ていた。これには本人も「いろいろ考えずに打っても当たるものですね」と驚いていた。
スイングの形を考えすぎたり、必要以上にゆっくり動くことでバックスイングの動作がぎこちなくなり、スイング全体の流れが悪くなる。実際のスイングでは考えることを極力減らし、リズムやスイング全体の流れをスムーズにするように気を付ければ、素振りのようなスイングができるようになるだろう。