GOLF

2020.11.27

固定はミスの原因! 陥りやすい「下半身どっしりアドレス」の罠【ゴルフレッスン】

世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム119回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。

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「どっしり構える」への誤解

先日のラウンドレッスンで、下半身に力を込め、重心を低くしてアドレスするアマチュアのBさんがいた。膝を大きく曲げ、足に必要以上に力が入っていたため、スイング中に下半身が適切に動いていなかった。特にバックスイングで足に力を込め、沈みこむような動きになっていたため、その反力によってダウンスイングで前傾角度が伸びあがってしまい、振り遅れのミスが出ていた。どうやら本人は、足に力を込めることで下半身が安定したアドレスになっていると思っているようだった。

よく、アドレスを教える時に、「下半身をどっしりと構える」という表現をすることがある。これは、重心を低くして安定させるという意味で、確かにプロのアドレスを見ると下半身が安定して、どっしりと構えているように見える。このようなプロの安定感のあるアドレス自体は間違ってはいないのだが、アマチュアはしばしば、「どっしり構える」という意味を誤解してしまう。重心が低く、どっしり構えているように見えるのと、下半身に力を込めて固定することは意味が違う。

プロのアドレスがどっしりして見えるのは、決して力を入れて固めているからではない。むしろアドレスでは下半身には余計な力を入れずに、重心のバランスをとりながら立っている。

アドレスをどっしりさせようと、最初から最後まで下半身に力を入れて地面を踏みしめてしまうと、スイング中に適切な順番で体を使うことができなくなるだけではなく、飛距離を伸ばすために必要な地面反力も使えなくなる。地面反力は押したものが返ってくる「反力」なので、ずっと下半身に力を込め、地面を押し続けていては使うことはできない。特にBさんのようにバックスイングで地面を押し続けると、ダウンスイングで左足を使って地面を押すことができず、逆にそれまで押し続けてきた反力によって伸びあがってしまうことがある。これでは、効率的に下半身を使うことはできず、飛距離をロスしたり、方向性が安定しない原因となる。

膝の曲げすぎを解消して下半身を使う

Bさんには、下半身を適切に使うために、アドレスで膝を曲げすぎないようにしてもらった。膝を曲げると下半身にテンションが生まれ、頑張っている感じや安定している感覚が出る。しかし、膝を曲げて下半身に力を込めることで、ずっと地面を押している状態となり、ダウンスイングで伸びあがってしまう原因となる。タイガー・ウッズをはじめとするPGAツアー選手のように、膝を曲げるのではなく、骨盤を前傾させることで前傾角度を作り、膝は緩める程度に曲げるようにするといいだろう。そうすることで、足を自由に使って上下左右の動きを行いやすくなる。

そして、Bさんには下半身から始動しやするために、アドレスで足踏みをしてもらった。下半身を固めたアドレスでは、下半身から動き出してテークバックを行うことが難しくなる。「静から動」ではなく、「動から動」のほうが始動がスムーズになるので、足踏みをしてリズムをとる「足ワッグル」を行ってもらった。Bさんは最初はぎこちない感じだったが、徐々に自然にできるようになっていった。もし、あなたがアドレスでリズムよく足踏みできないのなら、必要以上に下半身に力が入っている証拠だ。慣れてきたら実際に、右足を踏み込んでバックスイングをし、左足を踏み込んでダウンスイングするというリズムで素振りしてみるのもいいだろう。

Bさんには、膝の曲げすぎを抑え、足踏みをしながらアドレスをしてもらったが、相当な違和感があるようで「重心が高くて不安定な気がします」「足が動きすぎる感じがします」などと言っていた。それまで重心が低すぎ、足を動かしにくいアドレスをしていたので、当然違和感があったのだろう。ところが、新しいアドレスでボールを打ってみると、スイング動作が滑らかになり、良い球筋のドライバーショットを放つことができた。

重心を低くして地面をグッと踏み込んでいれば、なんとなく安定感があり、力も入りそうな気がするかもしれない。しかし、両足で地面を押しっぱなしでは、スイング中に適切なタイミングで地面を踏み込むことができなくなり地面反力が使えないばかりではなく、適切な体重移動もできない。本人は下半身を使っているような気がしているかもしれないが、実際は下半身を固め、腕と手だけでスイングしてしまうことになる。下半身の安定とは、力を入れて固めることではないことを理解し、積極的に動かせるようなアドレスをするようにしよう。

TEXT=吉田洋一郎

PHOTOGRAPH=小林 司

COOPERATION=取手桜が丘ゴルフクラブ

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