世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム118回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
自分で基本に立ち返る力
私のもとに長く通っているシングルプレーヤーAさんが、先日、珍しく愚痴をこぼした。Aさんはコツコツ努力するタイプで、これまで定期的にレッスンに通い、真面目に練習に取り組んできた。決して、「練習が面倒だ」とか「手っ取り早く上達する方法はないのか」などと不平を漏らすような人ではない。
そんなAさんが「これ以上、上手くなれる気がしないんです」と言う。新型コロナの影響でレッスンを受けられなかった期間にも、連絡があるたびに「調子が悪い」と言っていた。試合でも、ドライバーで大きなミスをしてスコアを落としてしまうことが多く、良い成績を残すことができなかった。
半年ぶりにスイングをチェックしたが、思わず「これでは上手くなるイメージがわかないのも無理はないですね」と言ってしまうほどひどい状態だった。簡単に言ってしまえば、基本的なことがスッポリ抜けてしまい、スイングが根本から崩れている状態だった。これではドライバーでまっすぐ飛ばすほうが難しく、大きなミスをするのも当然だった。
初級者ならば、毎回基礎的なスイングの方法や考え方を根気よく教えるが、シングルプレーヤーに対して同じように毎回基礎的なことを教えたりはしない。スイングの基礎部分は今まで何十回も指導していることであり、できていて当然のことなのだ。
中上級ゴルファーは、不調になる前に自ら基本に立ち返り、自身でスイングを管理しなければいけない。今までの知識や経験では、どうしても自分で解決できない時にコーチに頼るくらいならいいが、いつまでも初心者のように同じことを何度も教わっていては進歩は望めない。
スイングの基礎知識を身につけ、自分で解決する力を
中上級者のゴルファーであれば、それまで多くのレッスンを受け、アドバイスをもらってきたに違いない。そのなかには基礎的な知識もあったはずだが、自分でスイングについて考えられない人は、そうしたスイングの体系的な基礎知識が定着していない場合がある。
スイングの基礎知識が身につかない理由として、マンツーマンレッスンに原因がある場合がある。マンツーマンレッスンは、自分のスイングに特化して効率的に教わることができる一方、体系的なスイング知識を学ぶのには適さない。
マンツーマンレッスンの場合、生徒のスイングをコーチが分析し、問題点を明らかにし、修正方法を伝える。医師が検査をし、適切な処置をし、薬を出すという流れだ。一見何の問題もないように思うだろうが、ゴルフの場合、時として自ら医師となり、自分の病気を直さなければいけない。マンツーマンレッスンに慣れてしまうと、生徒側は知識もないままコーチの解決策を「そうか、こうやればいいのか」とだけ理解し、すぐに課題を解決してしまう。それが積み重なると、体系的なスイング知識が抜け、自ら考えることができないゴルファーになってしまう。そんな状態では、スイングが狂ってしまった時に自分で直すことができず、コーチに何度も同じことを聞きに行かなければならなくなる。これでは、いつまでたっても正しい知識は身につかないし、試合で良い結果も望めない。
中上級者には自ら考え、スイングを修正できる「自立型ゴルファー」を目指してほしい。シングルになり、さらにその上を目指したいのなら、いつまでもコーチに頼っていてはいけない。
自立型ゴルファーになるためには自らのスイングを分析する能力を養い、幅広いスイング知識を武器として戦うしかない。そのためには体系的なスイング知識を身につけるしかない。スイング知識があれば、簡単なズレは自分で修正できるし、経験が蓄積すれば難しい応用問題も解けるようになる。
まずは基礎的なスイング理論を理解するために、教わっているコーチの書籍や動画、オンラインサービスを利用してみるといいだろう。そのようなコンテンツがなければ、勉強会を開いてもらえるようにお願いしてもいい。まずはボールを打たない場所で、多くのスイング知識に触れてみるといいだろう。一見、自分には関係のないもののように思えるものが、後々役に立つことがある。その学んだ知識のなかから揺るぎない「自分だけのスイング理論」を発見することができるだろう。
ゴルフはすべて自分で責任を取る厳しいスポーツだ。誰もコースでは助けてくれないし、ミスをカバーしてはくれない。試合で結果を残したい中上級者には、叱咤激励の意味も込めて、あえて厳しい言葉を贈りたい。