世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム115回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
コースでダフりを連発する理由
先日、50代になってゴルフを本格的に再開したというアマチュアとラウンドする機会があった。この半年間、インドアの練習場でレッスンを受けながらラウンド再開に向けて取り組んできたそうで、スイングも基本に忠実でしっかりと練習していることがうかがえた。
しかし実際のコースでは、マットの上でボールを打つシュミレーションゴルフとは勝手が違ったようだ。コースに出れば傾斜もあるし、バンカーやベアグラウンドでも打たなくてはならない。実際に、そのアマチュアも林の中に入ってしまった際に、ベアグラウンドでダフって林から脱出できなかったり、フェアウェイど真ん中から大ダフりをしたりと、コースとインドアの違いに困惑しているように見えた。
しかし、今までシュミレーションゴルフばかりで、実際のコースに慣れていないゴルファーには仕方のないことだ。インドアの練習場では多少ダフり気味でも、マットの上をクラブが滑るのでミスがカバーされる。しかし、フェアウェイバンカーやベアグラウンドなど芝のない場所はもちろん、短く刈り込まれたフェアウェイからでも、同じような感覚で打つとダフりのミスになってしまうことが多い。
なぜ、ダフりのミスになってしまうのかというと、多くの場合すくい打ちになっていることが原因だ。特に、インドアのマットの上で練習をしていると、ダフりが許容されるため、すくい打ちの癖がついてしまうことがある。さらに、地面にあるボールが空中に上がる仕組みを理解していないことも、すくい打ちによるダフリの原因となる。クラブヘッドにはロフトと呼ばれる角度がついているが、このロフトはボールを上げるために欠かせない機能を持っている。クラブヘッドが下降軌道でボールに当たれば、ロフト角とフェースの溝が与えるスピンによって、上げようとしなくても自然とボールは上がっていく。
クラブのロフトを信じてダウンブローに打つ
地面にあるボールを高く遠くへ飛ばそうと思えば、下から上へすくい上げようとしてしまうのは人としての本能だ。日常生活の中でクラブのような道具を使うことはほとんどないので、この原理をわかっていたとしても、ボールを目の前にするとクラブのロフトを信じられず、地面にあるボールを上げに行きたくなる心理は理解できる。だから、ボールをすくい上げてしまう人はイメージを変えることが大切だ。
すくい打ちによってダフる傾向にあるゴルファーは、ボールの先にある地面を削るようにダウンブローでインパクトするイメージを持ってほしい。コーチによっては「打ち込む」という表現をすることもあるが、言っていることは同じだ。要するに、ボールの先にスイングの最下点がくるようにイメージすることが大事だ。そうすれば、クラブヘッドが下降軌道の中でボールをとらえることができるようになるだろう。
前出のアマチュアには、ベアグラウンドではボールの先の土を削るようにアドバイスした。そのイメージを視覚化するため、ボールの先にある枯葉などの目印になるものを一緒に打つイメージを持ってもらった。すると、林の中から上手に脱出できるようになっただけではなく、そのイメージを持つことでフェアウェイやラフからもナイスショットを連発し、見違えるような球を打つようになった。
インドアや練習場でフォームを固めることは重要なことだし、シュミレーションゴルフでラウンド感覚を養う練習をすることも大事だと思う。しかし、芝の上やベアグラウンドでしか身につかない技術もある。すくい打ちでダフり傾向のゴルファーは、ロフトを信じてダウンブローでボールをとらえてみてほしい。