世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム111回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
ゴルフクラブはただの棒ではない
よく見てみると、ゴルフクラブは不思議な形をしている。長い棒の先にフェース面がついたヘッドがついている。しかも、ヘッドにはロフト角がついていて、ボールを打つ面が目標に正対していない。それに加えて、シャフトの延長線上に重心がないため、棒の先端部分で打つことができない。棒の先端から飛び出たヘッドの中心でボールを打つ必要がある。こんな変わった道具を使うスポーツは他にあまりないし、これに似た道具は日常生活でもほとんど使わない。他のボールを道具で打つ競技を見れば、野球やソフトボールは棒状のバットを使って打つし、テニスや卓球は面が大きなラケットを使う。このようなシンプルな道具は、棒や面のどこで打つかを意識することはあっても、スイング中に打つ面がどこを向いているかわからなくなることはほとんどないだろう。
しかし、ゴルフクラブは複雑な構造をしているため、フェース面がどこを向いているのか感じることができないゴルファーもいることだろう。クラブフェースの向きはボールが飛ぶ方向に大きく影響するので、スイング中のフェースの向きを管理し、どこを向いているのかを感じ取ることが必要になる。
以前、メジャートーナメント3勝のPGAツアー選手、ジョーダン・スピースを指導するキャメロン・マコーミックに話を聞いた際、スピースを指導し始めたときに一番驚いたのが、フェースの向きを感じ取る「空間認知能力」だと語っていた。この空間認知能力が高ければ、フェースを思い通りにコントロールし、ボールをイメージ通りに操ることができるという。ボールの曲がりが大きく思い通りにボールが打てない人は、フェースの向きに問題がある場合が多い。そのような人は再現性の高い球を打つために、一度フェースの向きを確認してみるといいだろう。
フェースの向きを感じる力を養う
フェースの向きを確認する場合、まずは鏡の前でハーフウェイバックやトップなどのポジションごとに、スイング中のフェースがどこを向いているか確認してみるといいだろう。
グリップやスイングタイプによってフェースの向きや使い方は変わるので、「どのフェースの向きが正しい」というものはない。ただ、スクエアグリップであれば、バックスイングでシャフトが地面と平行のポジションでフェースが45度から60度。トップで45度、ダウンスイングでシャフトが地面と平行になるポジションで90度というのが目安になるだろう。これはあくまでも目安なので、誰にでも当てはまることではないという点には注意してほしい。フックグリップの場合は、トップでフェースが空を向くシャットフェースになりやすいし、ウィークグリップの場合は、トップでフェースが70度から90度になるオープンフェースになることもある。大事なのは、自分にとって最適なフェースの向きを確認し、毎回同じフェースの向きに管理することだ。そのために、スイング中フェースがどこを向いているのかを感じることが大事になる。
フェースの向きを認識できるようにするために、目をつぶってクラブを握り、フェースの向きを感じながら素振りをしてみよう。目からの情報を遮断した状態でスイングすることで、フェースの向きを感じやすくなる。今まで意識していなかったクラブの動きを感じることで、空間認知能力を高めるトレーニングにもなるだろう。ある程度フェースの向きを感じることができるようになったら、スイングを撮影して実際のフェースの向きと自分の感覚をすり合わせてみてほしい。実際のフェースの向きと感覚にズレがあったとしても、何度も確認と修正を繰り返していくことでギャップは埋まってくる。スイング中のフェースの向きを感じることができるようになれば、フェースの向きの異変に気付くことができるようになるので、ミスの原因もわかるしスイングの不調も早期に対処できる。
ボールがどうしても曲がってしまうという人は、フェースの向きに問題があるのかもしれない。これまで、フェースの向きを意識していなかった人は、一度確認してほしい。