コロナ禍の緊急事態宣言明けの2021年11月、佐野元春が東京、横浜、大阪、名古屋でライヴを行った。デビューして41年、ロックするエネルギーは増すばかり。17年目のザ・コヨーテバンドのグルーブも気持ちいい。
12月には、日本武道館と大阪城ホールで行われたデビュー40周年記念ライヴを映像に収めた『YAH!』をリリース。1980年代の「アンジェリーナ」「サムデイ」から2010年代の「東京スカイライン」「純恋(すみれ)」まで全30曲。「ハートビート」や「ロックンロール・ナイト」のような8分クラスの大作もフルバージョンで歌う。
「記念ではなく、祝祭でもなく、歌う理由を知るためのまぎれもない証」
映像のなかでそう語られる。40周年ライヴだけど、祭りの雰囲気はない。ステージ上の佐野は黒のパンツに革ジャケットで激しくシャウト。〝たどりつく〞〝越えていく〞など主人公が前進する歌詞が多く、その言葉とバンドが生むグルーブが見事にはまる。オーディエンスやリスナーの心に火をつける。デビュー当時の曲にも、新曲と同じように生々しい〝今〞を感じた。
全身黒の佐野が持つ、ワインレッドのストラトキャスターが美しく映える。
Kazunori Kodate
音楽ライター。『新書で入門 ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(新潮社)、『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎)など著書多数。