キャリアと年齢を重ねてなお磨きがかかる水晶のようなボイス
2021年にこの人の新作を聴けるとはーー。シュープリームスのメンバーとしてモータウンレーベルからデビューして以来60年のレジェンド、ダイアナ・ロスが、22年ぶりのオリジナルアルバム『サンキュー』をリリースする。
1曲目のタイトルチューン「サンキュー」では、多くのリスナーの期待に応えるように、モータウンサウンドを楽しませてくれる。華やかなホーン、ピアノのリフ、打ちこみのハンドクラップ、スラップ奏法のベースなどフルコースだ。
バラードナンバーもたっぷり。全編を通して楽器の音数が少なく、そこに生まれるスペースに美しい声が響く。1980年代半ばくらいまでのダイアナは、豊かな声量のロングトーンの印象が強かった。その後水晶のような澄んだ声に磨きがかかり、今なお透明度が増し続けている。
「カウント・オン・ミー」はジャズバラード。ドラマーはブラシ奏法でソフトにリズムを刻み、アップライトのベースは、歌に寄り添うように"歌う"。ダイアナは’06年に若いころに録音したジャズを集めたアルバム『ブルー』を発表した。比較して聴くのも楽しい。
最後の来日は’15年。もう一度生の歌を聴きたい。
KAZUNORI KOUDATE
音楽ライター。『新書で入門ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮社)『上原ひろみ サマーレインの彼方』(幻冬舎)など著書多数。