役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者のそして映画のプロたちの仕事はある! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!
周りから何と言われようが諦めきれない男たちの奮闘に心揺さぶられる
2020年も終わりに近づいてまいりました。滝藤はこの秋冬、大河ドラマ『麒麟がくる』では純朴な将軍を演じ、その1時間半後に放送される『極主夫道』では元極道のクレープ屋さんを演じています。両作品で滝藤賢一44歳、脱がせていただきました。過去に3年ボクシング、今はキックボクシングに明け暮れ、自粛期間はひたすら筋トレの日々でした。おかげで今では懸垂がスイスイできるようになりました。フフ、自慢です。なので、ボクシング映画を観ると、“うぉ! 出たかった! なぜ、私を呼んでくれないんだ!”と嫉妬で気が狂いそうになるのでした。
今回ご紹介するのは、安藤サクラさんが出演された『百円の恋』の監督・武 正晴×脚本・足立 紳さんコンビの最新作『アンダードッグ』です。『百円の恋』素晴らしかったなぁ。あまりの面白さに立て続けに3回観てしまった。そして本作、『アンダードッグ』は前後編合わせて上映時間は276分! 日本チャンピオン戦で負けて以降、かませ犬としてリングに上り続ける主人公・末永 晃に森山未來さん。中年期に差しかかりチャンピオンどころか一勝すら果てしなく遠い。デリヘル嬢の送り迎えのドライバーをしながら、リングに立ち続ける。殴られても殴られてもボクシングというステージにしがみつく様が、俳優としてまったく仕事がなかった時に人をやっかみ、暴言を吐きまくり、言い訳ばかりしていた自分の若い頃に重なる。私も先の見えないなかで俳優という職業にしがみつきました。名古屋に帰ってきなさいと親に諭されても心は動かなかった。諦めなくてよかったと、今は心から思います。
そして、この映画、脇を固める俳優が皆さん魅力的です。どのキャラクターを見ても主役のようにドラマがあり、感情移入してしまいます。誰しも下り坂がやってくる。一気に転がり落ちるのか、踏みとどまって無謀だとわかっていても踏み止まって抵抗し続けるのか。どっちにしても苦しいだろうなぁ。引き際というものを考えさせられました。でも、まぁ私は死ぬまで俳優宣言させていただきます!
『アンダードッグ』
元日本ライト級1位の崖っぷちボクサー、過去に秘密を持つ若手ボクサー、大物二世タレントでTVの企画でボクシングに挑戦する芸人ボクサーが繰り広げる胸を震わす人間ドラマ。「AbemaTV」ではこの3人の男たちを取り巻く人々の群像劇を描いた配信版を1月1日よりプレミアム会員向けに独占配信。
2020/日本
監督:武 正晴
出演:森山未來、北村匠海、勝地 涼ほか
配給:東映ビデオ
11月27日よりホワイトシネクイントほかにて[前・後編]同日公開