ENTERTAINMENT

2016.02.02

知っておきたいLDHの今 大ヒット連発の仕かけの秘密・・・

LDHの快進撃は音楽だけにはとどまらない。飲食やアパレルなど手がける事業は軒並みヒット。なぜ彼らはヒットメーカー集団となれるのか、その秘策とは──

TETSUYA

1 HiGH&LOW
固定観念を打ち破れ!あらゆるメディアをミックスした世界初のエンタテインメント世界的に前例なし! 総合エンタテインメント

世界的に前例なし! 総合エンタテインメント

LDHと日本テレビが固く手を結んだ『HiGH&LOW』が、一大ムーブメントになっている。

伝説は、ある街から幕を明ける―─。その一帯は、かつて「ムゲン」というチームが支配していた。そんななか、彼らの力をもってしても潰すことのできない凶悪な存在があった。雅貴と広斗の雨宮兄弟だ。何十倍もの戦闘集団にひるまず突っこむ雨宮兄弟。そして死闘のなか、ムゲンは解散。兄弟も姿を消した。

物語『HiGH&LOW』は、その後の街から始まる。山王連合会、White Rascals、鬼邪高校(おやこうこう)、RUDE BOYS、達磨一家(だるまいっか)。5つの組織のプライドをかけた闘いが繰りひろげられようとしていた。

企画プロデュースは、HIROさん。監督は久保茂昭。EXILE、三代目 J Soul Brothers、E-girls......。各チームのメンバーが次々と登場する。

このエンタテインメントは、ドラマにとどまらない。世界中どこにも前例のない総合プロジェクトだ。スケールアップした映画を劇場のスクリーンで、登場人物たちのパフォーマンスをライブツアーで、劇中で流れる音源はCDで、ディレクターズカットをHuluで楽しめる。コミックではアナザーストーリーを読める。

ドラマ内で登場人物がSNSにアップした写真やコメントはInstagramでリアルタイムにチェックでき、ファンは、登場人物たちが自分たちの街に存在しているような気持ちになる。

物語の登場人物は全員が主役。複数メディアでのアプローチで、ドラマが多角的になり、詳細が描かれ、観る側はどのキャラクターにも感情移入できる。

男女のパフォーマンスチームが充実し、複数の優れたシンガーがいて、劇団やタレントも所属するLDHでしかありえないエンタテインメントだ。

2 DIGITAL
想いを共有するLDH流デジタルコミュニケーション術
SNSを活用したコミュニケーション

「時代ごとにコミュニケーションの仕方も変わりますが、いつも最適なやり方で丁寧に行いたい。ただ情報を発信するだけではなく、ファンの皆さんと想いを共有できるかが大事」と広報担当部長の石井一弘氏。LDHでは各SNSの役割にあわせて、Twitter、Instagram、YouTubeなどを組み合わせて活用している。三代目 J Soul BrothersのTwitterのフォロワーは140万人を超える。

「『R.Y.U.S.E.I.』が多くの人に知ってもらえた要因のひとつに、ランニングマンのダンスがSNSで広がったというのがあります。EXILEの新曲『Ki・mi・ni・mu・chu』も、ツアー初日の前日にメンバーがダンスを踊る動画をInstagramにアップすると、当日のライブでお客さんがみんな踊ってくれました。感情移入できたり、みんなで盛り上がれるのもSNSならでは。今後もSNSを活用して、世界中にLDHを伝えていきたいです」

3 KITCHEN
食は日常のエンタテインメント ベストパフォーマンスに不可欠な食事を提供
ヘルスサポートをきっかけに飲食業を開始

LDHにはなぜ飲食部門があるのか? 元々はHIROさんの幼なじみに料理人がいたことがきっかけで本格的にスタートした。飲食店の運営や所属アーティストたちのヘルスサポートに加え、メンバーひとりひとりの要望を取り入れたお弁当作りも担当しているという。

「トレーナーさんと相談し、栄養バランスのとれた最良の食事を提供するためです。所属アーティストたちは身体の手入れにものすごく気を遣っています。ちょっとした食生活の変化で、身体のキレが違ってきます」とは、LDHキッチンチーフマネージャーの三盃(さんばい)隆氏。

EXILEや三代目 J Soul Brothersは、ライブともなれば3時間を超え、ツアーが始まれば20回程度ステージをこなし、それはとてもタフなものになる。そのため日頃からの食事も含めた身体づくりが重要なのだ。

所属アーティストは高たんぱく低カロリーの鶏肉を好んで食べることが多いことから、良質な鶏肉を徹底的に追求しているという。LDHが鶏鍋や焼鳥の飲食店を展開しているのもそこからきている。

「アーティストのためにこだわり抜いた食事。そこで得たノウハウをもとにつくられたこだわりの料理を、多くの方に楽しんでほしいという想いで飲食店を展開しています。店舗ではメンバーの食事と同等のメニューをご用意しています」

エンタテインメントから生まれた食へのこだわりは、アーティスト、そして店舗のパフォーマンスまでも格上げする。

4 APPAREL
HIPHOPカルチャーを発信 アーティストを巻き込んだブランディングとは?
アーティストとの相乗効果でブランディング

EXILEがコラボする「24karats」をはじめ、「XX FOUR」、「J.S.B.」、「SEVEN」、「Enasoluna」など、ストリートファッションからカジュアルウェア、アクセサリーなど、10のブランド、計8店舗を擁するアパレル部門。その拡大と躍進がすごい! つい先日、HIROさんやDJ MAKIDAI、VERBAL、DJ DARUMAからなるユニットPKCZ(R)がアーティスト活動だけでは表現できないカルチャー、アート、ファッションをミックスしたセレクトショップ『PKCZ(R) GALLERY STORE』をオープン。アーティスト×デザインの化学反応が、ヒップホップカルチャーに新たな旋風を巻き起こす。

5 FINDING
キラリと光る才能が化学反応を生む!? LDHが考える人材発掘の極意とは
企画に人を合わせずに人に企画を合わせる

LDHの最も大きな功績のひとつは、ダンサーをパフォーマーという名称にしたことだろう。EXILE TRIBEやE-girlsのパフォーマーがボーカリストと常に組み、表現することで、フィジカル性だけでなく、アーティスト色が濃くなった。ダンスは中高校の体育のカリキュラムにも組み込まれ、裾野が広がっている。

若い世代にパフォーマーを目指す人口が増えると、競争の原理が働き、切磋琢磨によって全体のレベルが上がる。また、自分の差別化を意識するので、個性も育つ。そんななか、LDHは『VOCAL BATTLE AUDITION』などメディアと連動したオーディションを開催し、新たな才能を発掘している。技術や容姿だけでなく、人間力も重視し、その個性や才能に適したプロジェクトが動き出す。

6 DEVELOPMENT
若い頃に苦労すべし!苦しみの先に豊かな人間性が育つ
夢者修行、座禅、掃除。徹底して人間力を磨く

現在、LDHでは国内10都市に加え、ニューヨークと台北でダンススクールEXPGを運営している。海外では3校目となるロサンジェルス校もオープンに向けて準備中だ。それぞれのスクールでは、ダンス、ボーカル、アクトのレッスンが行われ、そこで育った才能がオーディションを経て、デビューを目指す。

注目すべきは各オーディション中の合宿だ。最終候補に残った者は、共同生活を送り切磋琢磨する。ここでの生活態度も審査の対象となる。早朝から夜間まで続く合宿生活には、座禅や地域の掃除なども組み込まれる。つまり、パフォーマンススキルや容姿だけでなく、人間性や社会貢献への姿勢も評価の対象となる。

さらに、デビュー前には、複数回にわたる「"夢"者修行」が課せられる。マイクロバス、あるいはワゴン車で全国を回り、パフォーマンスを行う。その会場は実にさまざま。駅前広場、公園、百貨店の屋上......など、基本的には無料スペースである。

開演2時間前には、ショッピングモールの特設ステージや駅前、商店街へ赴き、自分たちの手でフライヤーを撒き、集客活動を行う。機材類も、もちろん自分たちの手で運ぶ。一日に2都市回る日も珍しくない。昼過ぎに一回、すぐに移動して夕刻に一回。決して生半可な気持ちでできるものではない。

このような体験によってハートが強化され、体力も養われ、パフォーマンスも磨かれる。こうしたプロセスを経てこそ、人間としての内面が充実していく。それは間違いなく面構えや佇まいに表れるのだ。

7 GLOBAL
日本のエンタテインメントを世界へ 海外アーティストを巻き込む新たな試みとは

おもてなしの心で海外進出を実現させる

m-floのVERBALさんの名刺には「PKCZ(R)/国際事業部プロデューサー」と印刷されている。

2016年以降、LDHはアメリカでの事業を展開予定。VERBALさんはPKCZ(R)のメンバーとして活動しながら、LDH国際事業部の主要メンバーとしても積極的に携っているのだ。

「LDHがワールドワイドなアーティストとクリエイティブな活動を行う時に直接コンタクトをとるのが僕の役割です」

過去にカニエ・ウェストなどとコラボしてきた人脈とキャリアが活かされている。

「海外アーティストとコラボレーションをするにはホスピタリティーを極めることが重要です」

その点でHIROさんの"おもてなし"は徹底している。

「オランダのDJアフロジャック来日時には、HIROさんの目指しているものやLDHのエンタテインメントを創造する仕組みなど、アフロジャック自身が理想としていたものが日本にあった! と共感してくれました。世界的に珍しいLDHのエンタテインメントのスタイルに魅了され、次々とコラボが決まる。実際に、アフロジャックのサポートで海外事業が次々と展開しています」

VERBAL(m-flo/PKCZ(R))
1975年東京都出身。MC、DJ、音楽プロデューサー、デザイナー。98年に音楽プロデュースユニット、m-floでデビュー。国内外のアーティストと多数共演。

8 CONTRIBUTION
子供たちの夢を応援するエンタテインメントだからこそできる社会貢献

TETSUYA

ダンスには、人の心を動かすパワーがある

「エンタテインメントだからこそできる社会貢献」という想いをカタチにすべく、2010年、LDHは社会貢献部を設立した。主に行っているのは、未来を担う子供たちのためのサポートや教育的な体験の場の提供。中心となって活動しているのが、EXILEのÜSAさんであり、今回取材に応じてくれたTETSUYAさんだ。小・中学生を対象にしたストリートダンスコンテスト、「DANCE CUP」では審査員を務め、「EXILEパフォーマンス研究所(E.P.I.)」では、13年にスタートした「TETSUYA"S カリキュラム」を引っ提げて、全国各地と台湾にあるEXPG校を巡るなど、特に教育関係に熱が入る。14年、福島県いわき市で開催された「中学生Rising Sun Project 夢の課外授業SPECIAL 2014」(二十一世紀倶楽部主催)にもダンス講師として参加した。

「(夢の課外授業は)すごくやりがいがありますね。毎回、うるっと涙が出るほど感動する場面が必ずあるんですよ。ダンスを経験したことがない子たちが、一生懸命がんばって踊れるようになった時の笑顔とか、僕が口にした言葉に対して何かを感じてくれたのか、目がキラッと光った瞬間とか。ダンスには、人を笑顔にするパワーがあるんだと実感させられ、すごく幸せな気持ちになるんです」

初めて訪れた場所で、初めて出会う子供たち。なかにはEXILEにあまり興味がない子もいる。それでも一緒に踊るうちに、心が通い、一体感が生まれる。「踊り切った」という達成感を共有した時の心の震えは、5万人を前にライブをする時の感動にも匹敵するという。

「それを自分自身が感じたくて、やらせていただいているようなもの。だから、社会貢献をしているという意識はあまりないんですよね。ダンスを通して人を感動させたいし、自分も感動したい。その先にたまたま社会貢献があるという感じで......。自分が好きでやっていることが、結果的に他の人を幸せにしているというか」

さらりと口にするTETSUYAさんだが、陰では努力も惜しまない。自分の言葉が子供に大きな影響を与えることを考えて言葉の使い方を学び、ダンスを極めたいと思う子にアドバイスをするために身体のことや食事、睡眠までも研究する。

子供たちに特に伝えたいのは、「夢を持つことの素晴らしさ」だとも、TETSUYAさんは言う。

「(TETSUYASカリキュラムでは)子供たちに夢を色紙に書いてもらい、裏に僕のサインと日付を入れて渡しています。もう700人くらいになったかな。時がたって色紙を見返した時に、同じ夢を抱いているなら励みにし、別の夢を持っているなら分岐点を考えるきっかけにしてもらえれば。

僕自身、ダンスをあきらめかけた時もあります。でも、『最後にもう一度だけ』と死ぬ気で取り組んだことが、今につながった。夢を持ち、挑戦することには、すごい力があると思います」

夢をかなえた者だからこそ放つ輝き。それが、子供たちを勇気づけ、未来を切り開く後押しをしているのだろう。

TETSUYA
1981年生まれ、神奈川県出身。2007年に二代目J Soul Brothers、09年からはEXILEのメンバーとして活動。14年に淑徳大学人文学部表現学科客員教授に就任。

LDH our promise

白地に赤い文字で「LDH our promise」と書かれた表紙を持つ、一冊の書物。LDHに所属する全アーティストと全社員に入社時に配布される。LDHに関わる全員の行動規範が記され、アーティストも社員も何度も読み返すバイブルだ。

「LDHの理念」「EXILE statement」「LDH rules for artist」「LDH rules for staff」「EXPG statement」の5章から成り、すべてHIROさんが自ら綴った。前文で「ありのままの正直な想いがつまっています」と記しているとおり、エンタテインメントの世界に描いた理想と、それを絶対実現させるのだという熱が、そのまま文章になって表れている。

LDH our promise

夢を生み出し、かなえ、その夢が希望となって新しい未来を創る。そうした循環を生み出し、社会に貢献することがLDHの使命であるという。そのうえで、エンタテインメントとはどんな存在であり、何ができるのかを真摯に考え、LDHのアーティスト、社員が目指すべきところが明確に記されている。

アーティスト、社員、EXPGで学ぼうという人たちそれぞれへ向けて、絶えず心に留めておくべきルールを、ひとつひとつ極めて具体的に説く。LDHがグループとしての統一感や「熱」を保ち続けられるのは、この一冊が根幹にあるからこそなのである。

*本記事の内容は15年12月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。 14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)

TEXT=今井 恵、神舘和典、村上早苗

PHOTOGRAPH=大森 直、坂田貴広

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