MAGAZINE &
SALON MEMBERMAGAZINE &
SALON MEMBER
仕事が楽しければ
人生も愉しい

LATEST ISSUE
2024年9月号
人生の楽しみ上手が集う島 沖縄に住む
STORE

ENTERTAINMENT

2015.01.06

『フォックスキャッチャー』滝藤賢一の映画独り語り座01

今月の1本は『フォックスキャッチャー』。連載「滝藤賢一の映画独り語り座」とは……

フォックスキャッチャー

アカデミー賞男優賞超有力!その壮絶な“演技”とは!?

今月から、僕が観て心に残った映画を語らせてもらいます。さて第1回は『フォックスキャッチャー』。役者として、僕もこんな作品に出合いたい、と嫉妬するくらいの名作でした。無駄をそぎ落として演じれば、伝えたい神髄だけが残るという滅多にない脚本なんです。その象徴が冒頭。主人公は喋らないし、BGMもない。殺風景な部屋でお湯を沸かし、インスタント麺を手でクシャッと潰す。このシーンだけで主人公が不遇なことが一瞬でわかって引きこまれた。演技って“足していく”ことより“引いていく”ことのほうが難しいと僕の尊敬する俳優さんが仰っていたのですが、この脚本は役者に、極限まで“引く”ことを求めているなと。

1984年のロサンジェルス・オリンピックで金メダルに輝いたレスリング選手、マーク・シュルツの身に起きた事件の映画化だそうです。僕が感じたテーマは「分岐点」と「コンプレックス」とでも言いましょうか。マークには同じく金メダリストの兄、デイヴがいて、兄を越えられないジレンマがある。そこに大財閥の御曹司、ジョン・デュポンからスポンサー契約の話が来る。弟はその話に乗るけれど、兄は断るんです。妻と子供の環境を変えたくないと。僕も子供が4人いるから、家族を一番に思う気持ちが理解できますし、そのことで弟のコンプレックスを刺激してしまい悲劇へとつながるところも響きました。

一方のデュポンも偉大なる母にコンプレックスを持つ男。この役は『40歳の童貞男』のスティーヴ・カレルが演じていますが、今回はコメディーの要素を完全に封印。前歯を立てて笑ったり、高い声で喋ったり、佇まいが“異様”で、ぞっとする。僕も“異様”な役がきたら、彼を参考にしたいくらい。

で、デュポンとマークが深夜、レスリングをする場面、アメリカでは同性愛の暗喩として解釈され、モデルとなったマーク本人が否定する騒ぎになったそう。ベネット・ミラー監督の前々作『カポーティ』はそんな話でしたが、本作はグレーな演出で、僕はそこにも好感を持ちました。

本作唯一の欠点は、「ゲーテ」読者が、どんな女性を劇場に誘えばいいか想像がつかない点(笑)。この渋さが理解できる女性は素敵なんですけどね。

フォックスキャッチャー

『フォックスキャッチャー』
2014年/アメリカ
監督:ベネット・ミラー
出演:スティーヴ・カレル、
チャニング・テイタム ほか
配給:ロングライド
2月14日新宿ピカデリーほか全国公開

過去連載記事

■連載「滝藤賢一の映画独り語り座」とは……
役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者の、そして、映画のプロたちの魂が詰まっている! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!

↑ページTOPへ戻る

COMPOSITION=金原由佳

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2024年9月号

人生の楽しみ上手が集う島 沖縄に住む

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2024年9月号

人生の楽しみ上手が集う島 沖縄に住む

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ9月号』が7月25日に発売となる。今回の特集は“沖縄”。“住むための沖縄”を堪能している人のライフスタイルに迫る。表紙を飾るのはバスケットボール男子日本代表・AKATSUKI JAPANの富樫勇樹選手と、河村勇輝選手。パリ五輪を直近に控えたふたりが意気込みを語った。

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

SALON MEMBER ゲーテサロン

会員登録をすると、エクスクルーシブなイベントの数々や、スペシャルなプレゼント情報へアクセスが可能に。会員の皆様に、非日常な体験ができる機会をご提供します。

SALON MEMBERになる