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2021.02.09

【試乗】BMWクーペ「4シリーズ」は観る者を引き込む魔性のクルマ

歴史ある名車の"今"と"昔"、自動車ブランド最新事情、いま手に入るべきこだわりのクルマ、名作映画を彩る名車etc……。国産車から輸入車まで、軽自動車からスーパーカーまで幅広く取材を行う自動車ライター・大音安弘が、さまざまな角度から"クルマの教養"を伝授する!

独自の世界に磨きをかけた2代目「THE 4」

高級車の中でもクーペは、特別な存在だ。今や4ドアモデルやSUVにさえ、クーペルックのものが溢れているのも、その証拠といえよう。もちろん、現実的な回答として、フォーマルなスタイルよりもスポーティなイメージが強められることや、燃費にも効果的な空気特性の向上なども挙げられる。だが、やはり最大の理由は、市場の活性化にある。その優雅なスタイルが多くの人を魅了し、憧れを抱かせるが、同時に、実用面を考え、購入に躊躇する人も多いのだ。

その現実を打破すべく、メーカーがクーペルックを新たな商機と捉えたのである。では、多様なクーペに溢れた今、2ドアクーぺは不要かといえば、然(さ)にあらず。やはり、今も憧れの頂点として君臨し、各モデルのイメージリーダー的な役割を担う。それだけにデザイン的な差別化にも熱心で、BMWの新型4シリーズもそんな一台といえるだろう。

簡単に4シリーズの歴史を振り返ると、その原点は、BMWの主力モデル「3シリーズ」のクーペだ。ただ単なるボディ違いではなく、仕様や価格もセダンよりも上位となる、より贅沢なモデルであった。それがBMWの車種拡大戦略の一環として、2013年に独立。その名からもポジションが理解し易い「4シリーズ」を名乗るようになった。その第2世代が、今回のご紹介する「M440i xDrive」だ。

優雅さと寛ぎを兼ね備えるラグジュアリークーペ

優雅な2ドアクーペのスタイルは伝統通りだが、3シリーズとの差別化を図るべく、BMWのアイコンであるキドニーグリルを巨大化させたフロントマスクは、度肝を抜く迫力に満ちている。流れるようなボディラインに強烈なアクセントとなるマスクは、独特の雰囲気を放つ美女のようだ。正直、このスタイルの評価は、賛否が分かれるだろう。しかし、傍に置いてみると、観るものを引き込む魔性のようなものを感じさせるから不思議。それこそ、デザイナーの狙いなのだろう。

インテリアの基本レイアウトは3シリーズと同じデザインとなるが、クーペボディによる流麗なキャビンと大型2枚ドアが演出する伸びやかなトリムのデザインが、優雅さと寛ぎを感じさせてくれる。この辺りが、タイトさと緊張感を漂わせるスポーツクーペとは異なるラグジュアリークーペの魅力なのだ。

試乗車は、グレード名の頭に「M」の文字を持つ。これは高性能な「BMW Mパフォーマンスモデル」であることを意味するものだが、意外なことにスポーツカーらしいトゲトゲしさとは無縁だ。その立ち振る舞いも優雅で、乗り心地にも優れる。全長と全幅は、デザイン上の差別化のために、3シリーズセダンよりも、少し拡大されているが、取り回しは、ほぼ同等なので、都市部でも扱いやすい。近年のラグジュアリーカーはサイズも大きめなので、都市部を中心に動き回ることが多いドライバーならば、上位の8シリーズクーペよりも頼れるパートナーとなるだろう。また4シリーズクーペならば、一般的にクーペではエマージェンシーとなる後席も比較的実用性が高く、きちんと4人乗りに使えるものだ。

今や特別の証であるシルキー6

搭載されるエンジンは、BMW伝統の直列6気筒エンジンだ。大排気量となる3.0Lのターボで、最高出力387ps、最大トルク500Nmを叩き出す。その心地よい回転フィールから、愛好家より「シルキー6」と称えられてきたBMWの6気筒エンジンだが、その味わいもしっかりと受け継ぐ。丁寧に扱えば、滑らかにパワーを紡ぎだし、歌うようにリズミカルなエンジン音を響かせてくれる。しかし、アクセルを強く踏み込むと、その本領を垣間見せるのだ。その瞬間、ドライバーは、アクセルを床まで踏み込むことなど許されない現実を、強烈な加速とともに思い知らされる。それは、0-100km/h加速が4.5秒にすぎないというデータからも証明されている。なぜならば踏み込んだ瞬間に、クルマは100km/hに到達してしまうのだから……。

やはり「M」の名は伊達ではない。しかも、そのパワーを余すことなく路面に伝達すべく、4WDシステムを標準化。もちろん、スタッドレスタイヤに履き替えれば、雪上での大きな武器にもなる。まさにオールマイティな存在なのだ。

もちろん、Mらしさを前面に打ち出すモードも用意。それがドライブモード「SPORT」だ。各ギアの使用回転域を高め、ギアも低めのギアをセレクト。足回りやステアリングもよりハードなセッティングとなる。ブレーキングの際は、素早いシフトチェンジのために、自動的にエンジン回転数を高め、積極的なダウンシフトも行ってくれる。見た目に変化はないが、ボタンひとつでラグジュアリーカーからスポーツカーに変化するのも特技なのだ。

価格はエントリーモデルの約2倍の1025万円!

このように、M440i xDriveは、新しい4シリーズの中で最も二面性の強いモデルだ。BMWらしい走りのモデルという顔を、上品なシルエットの中に巧みに隠した。アクの強いフロントマスクは、その象徴として4シリーズの秘めた本質を物語る。その奥に収めれたBMWらしさ溢れる6気筒エンジンの魔性が写したように……。

もちろん、基本的なデザインは4シリーズのベース車と同じ。そちらには4気筒エンジンが搭載される。ビジュアル的な話なら、4気筒の標準車でも、所有欲は得られるだろう。だからこそ、その違いを大きな価値として捉えるユーザーがターゲットとなる。それは価格にも明確に表れており、エントリーモデル「420i」が577万円に対して、M440i xDriveは1025万円と2倍近い。特別なクーペの中でも特別。まさに選ばれし者のクーペを地で行く存在なのである。

TEXT=大音安弘

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