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2020.10.21

【試乗】電動車シフトの世界的潮流を突っ走るボルボ最新小型SUV「XC40」の本気度とは?――クルマの教養

電動車シフトの世界的潮流を突っ走るボルボ最新小型SUV「XC40」の本気度とは?【クルマの教養】
歴史ある名車の“今”と“昔”、自動車ブランド最新事情、いま手に入るべきこだわりのクルマ、名作映画を彩る名車etc……。国産車から輸入車まで、軽自動車からスーパーカーまで幅広く取材を行う自動車ライター・大音安弘が、さまざまな角度から“クルマの教養”を伝授する!

世界的に進む排ガス規制の更なる強化

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近年、電動車という言葉をよく耳にするようになったのではないだろうか。まず最初に思い浮かべるのは、やはり電気自動車(BEV)だろう。ただ電動車はそれだけに留まらない。水素で発電を行い、その電気で走る「水素自動車(FCV)」、充電機能を備えるハイブリッドカー「プラグインハイブリッドカー(PHEV)」、そして、日本では馴染み深いハイブリッドカーも含まれるのだ。つまり動力にモーターを使っているクルマと思えばよいだろう。

なぜ急速に、電動車が騒がれるようになったのか、それは世界各国で環境対策のひとつとして、自動車の排ガス規制の更なる強化が図られているからだ。例えば、欧州のCAFE規制では、規模や販売台数などを考慮して自動車メーカー毎に燃費基準を設け、それを守れなければ、莫大な罰金が課されることになる。燃費性能とCO2排出量は比例関係にあるので、結果的に温室効果ガスも抑制も行えるというわけだ。

この流れを受けて、欧州各国も将来的なエンジン車販売禁止まで言及するようになっており、イギリスのジョンソン首相は、2035年までにエンジン車の廃止を宣言し、フランスも'40年までのエンジン車の廃止を政府発表として行っている。驚くべきは、自動車大国ドイツさえ、連邦議会が'30年までにエンジン車の廃止を採択していることだ。

新たな巨大自動車市場である中国でも当然、環境規制を強化。さらに米国では、今年9月末に、独自の環境対策を打ち出すカリフォルニア州が、'35年までに州内販売されるすべての新車をZEV(ゼロエミッションビークル)、つまり排気ガスの出ないクルマにすると発表した。このような世界的な流れを受けて、このように電動車へのシフトは、自動車メーカーにとって急務となっているのだ。

だからといって、明日から全ての乗用車をBEVやFCVなどに切り替えることはできない。今や車載の駆動用バッテリーの供給は大きな課題であり、そもそも充電インフラも更なる整備が必要となる。そこで当面の主役は、PHEVやハイブリッドになるわけだ。

マイルドハイブリッド化したボルボ「XC40」

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その中でいち早く行動に移したのが、スウェーデンの自動車メーカー「ボルボ」だ。'19年から全てのモデルを電動車とすることを'17年時点で発表。日本でも、販売するボルボの新車も年内に全て電動車へと切り替えるとしている。

その当面の主力となるのが、ガソリン車のマイルドハイブリッドだ。これは電気モーターによるエンジンアシストとエネルギー回生を行う電動車で、一般的なハイブリッドと異なり、電気だけで走ることはできない。しかしながら、走行中のエンジン負荷の軽減が行えるので、燃費が向上。さらにモーターと充電用のリチウムイオン電池も小型のもので賄えるのが、メリット。これならば価格上昇も最小限に抑えることが出来るし、車内のスペースへの影響もない。

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ボルボの新たなエントリーモデル「XC40」も、'21年モデルよりガソリンエンジン車が、マイルドハイブリッド化された。パワーユニットは、2.0Lの4気筒DOHCターボに電気モーターを組み合わせたものだが、エンジン本体にも手を加えるなど、各部のアップデートが加えられているのが特徴だ。マイルドハイブリッド仕様のXC40には、標準仕様となる「B4」とパワフルな「B5」の2種類が用意されている。

試乗したのは、パワフルなエンジンを積む「B5」で、最高出力197ps、最大トルク300Nmを発揮。これに10kW/40Nmの電気モーターがアシストを行う。従来型「T5」と比べても、視覚的な差はわずか。しかし、乗ってみると劇的な差を感じることになる。

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まず加速が軽やかになったことが挙げられる。これは言うまでもなくモーターアシストの恩恵だ。もちろん、モーターアシストは必要に応じて、シームレスに切り替えられるのだが、その差は体感できないほど滑らか。さらに燃費向上のために、エンジンには状況により2気筒化させる気筒休止機能も備わるが、その作動も実感不能。この気筒休止の存在を薄めることにも、モーターアシストは活躍する。単にモーターアシストを加えただけでなく、かなり細かく作り込まれているのだ。

さらに驚くのは、アイドルストップからのエンジン再始動だ。通常、エンジンの再始動には、エンジンスターターが使われるので、多少なりとも振動が生じる。しかし、マイルドハイブリッドでは、その機構上、アシストする電気モーターが使われるため、静か且つ滑らかなエンジン始動が可能。時に疎ましく感じるアイドリングストップの不快さを打ち消してくれるのだ。これは、乗ればだれもが感じられる魅力だ。また走行中にエンジンとモーターが切り替わることもないので、乗り味は、まさに通常のガソリンエンジン車と変わらず、違和感もない。

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ボルボは、全モデルを電動化させる最初のプレミアムブランドとなると宣言している。それは、環境対応が目的であることは間違いないが、そのハードルをチャンスと捉え、よりクルマの乗り味を上質に仕上げ、プレミアム感を増しているのは見事だと感じた。

実際、上級SUV「XC60」のマイルドハイブリッド仕様では、かなりエンジンの存在感が薄められている。ただエンジンの持つ躍動感が好みだという人もいるはずだ。その点、XC40のマイルドハイブリッド仕様は、エンジンとハイブリッドの組み合わせが、エンジン車の魅力を引き立ててくれている。

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「XC40」は、ボルボの電動化戦略の中でも重要な役目を担う。'21年モデルよりPHEVの販売開始。さらに欧州では、EV仕様「XC40リチャージ」の生産が開始され、年内に欧州のユーザーの元に届けられる予定だ。日本導入も前向きに検討されているという。このようにボルボの今を最も強く反映されているのが、小型SUV「XC40」という存在なのである。

TEXT=大音安弘

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