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2022.03.08

【森田恭通】流儀が見える男には、必ず貫いているものがある──連載「経営とは美の集積である」Vol.23

好きを貫き、概念を変えてきた男たちがいる。そこにあるのは彼らなりの確固たる流儀。その姿は、とても潔く、カッコいい。デザイナー・森田恭通氏の周りにいる、独自のスタイルと美学を持つ、一目置かれる男たちとは。連載「経営とは美の集積である」Vol.23。

森田恭通

シャンパン好きの重松氏が、過去に飲んだ「サロン」のボトルを溶かして作ったオリジナルのシャンパンクーラー。

ユナイテッドアローズの名誉会長、重松理さん、GMOインターネットグループの熊谷正寿さん、NIGO®くんが一目置かれる理由

僕の周りには、独自のスタイルと美学を貫くカッコいい方々が多い。流行に流されず、独自の世界観を確立している人。一番に思い浮かぶのはユナイテッドアローズの名誉会長、重松理(おさむ)さんです。着物の着こなしひとつにしても、そのセンスと風格には、同じ着物好きながら到底及びません。シャンパン好きの重松さんですが、特に「サロン」という銘柄がお好きで、これに関して驚いたことがあります。年に数回、重松さんとGMOインターネットグループの熊谷正寿さん、僕の3人で「着物の会」と称して集まっているのですが、ある時店に着くと、見たことがないガラスのシャンパンクーラーでサロンが冷やされている。聞いたところ重松さんが持ちこまれたものでした。

「クーラーまで持ちこまれるの?」と驚いたのもつかの間、これは重松さんが過去に飲んだサロンのボトルを集めて溶かし、そのガラスで作ったオリジナルだったのです。そのセンスとこだわりたるや! この方は自分の人生を1分1秒も無駄にせず、自分の世界観を楽しんでいる方なんだなと感銘を受けました。

そしてGMOの熊谷さんも違った意味で好きをとことん追求する方。世界中の富裕層を見渡せば、飛行機、船、ヘリコプターを所有している人はたくさんいます。でもそれら全部を自分で操縦するという人はそういません。国家資格のなかでも高難易度を誇る飛行機の免許も5年という年月をかけてついに取得され、本人は照れ隠しのように「こういうことやっていないと、仕事のことを考えてしまうから」とおっしゃいますが、時間をやりくりし、猛勉強して取り組まれた姿には頭が下がります。

同じく"博士並み"に好きを追求する方といえばファッションデザイナーのNIGO®くん。彼は決して流行をつくるつもりもなく、好きを貫いて流行をつくりだしてしまう人。器が好きなだけでなく、師匠を見つけ、自らろくろを回して素敵な器を作ってしまう。着物に目覚めた時は、大島紬の着物を作り、お揃いのハンティング帽を作って合わせ、独自の新しい着物スタイルを楽しんでいました。着物も器も昔からある伝統的なものですが、彼のフィルターを通すと違うものになって生まれ変わる。先月、パリで老舗メゾンブランド「KENZO」のアーティスティックディレクターとして初のショーを成功させ、今後NIGO®くんがどんな世界をつくりだしていくのか、本当に楽しみです。

一目置かれる人は、必ず己を貫く何かを持っています。だからこそ、周りが憧れる存在となるのではないでしょうか。もちろんそういう方々にも目指していた諸先輩方が存在するのでしょう。でも人の流儀を真似するのではなく、噛み砕いてそこにオリジナリティを加えるから、それが流儀になるのです。

インテリアデザインの世界で独自のスタイルを貫くのは、実はとても難しいことでもあります。己を出しすぎてはアート作品になってしまうからです。でも自分のこだわりをカメレオンのように変化させ、クライアントの意向を汲みとりながらもオリジナリティを感じるものに仕上げるのが森田流。その塩梅に日々悩みながら仕事をしています。いつか周りから「これが森ちゃんの流儀だね」と言われる自分になりたいですね。

Yasumichi Morita
1967年生まれ。デザイナー、グラマラス代表。国内外で活躍し、2019年オープンの「東急プラザ渋谷」の商環境デザインを手がける。その傍ら、’15年よりパリでの写真展を継続して開催するなど、アーティストとしても活動。オンラインサロン「森田商考会議所」はこちら。

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連載
森田恭通/経営とは美の集積である。

デザイナーとして、多くの経営者の経営展望や理念、彼らの求める機能やニーズに応えてきた森田恭通氏。そのなかに見えたのは、経営者こそが持つ、オリジナリティ溢れるセンスと美学だという。「経営」と「美」の関係性、その先にあるものとは。

TEXT=今井 恵

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