今、アートにハマるビジネスパーソンが増えている。アートを所有することは人生にどんな刺激を与えてくれるのか。リンクル創業者兼エンジェル投資家である川崎祐一氏に、アートを楽しむ極意を聞いた。
「我が家には、アートをかけていない壁は一面もありません」
奈良美智に村上隆、デイヴィッド・ホックニーにオスカー・ムリーリョ……。WEB広告の運用代行やマーケティングを手がけるリンクルの創業者、川崎祐一氏の自宅には、国内外の著名アーティストの作品がずらりと並び、まるでプライベート美術館のようだ。
「玄関には家の顔になるものを、寝室にはリラックスできるものをと、エリアごとにテーマを設け、年4回くらい作品を入れ替えています。アートが季節を教えてくれるような感じですね」
川崎氏のアート選びの基準は、「家に飾りたいかどうか」。値上がりを期待する投資対象でも、厳重に保管しておく資産でもなく、家族や友人と鑑賞し、楽しむためのものだ。「多くの人に見てほしい」という想いがあるため、アーティストが個展をやるとなれば迷わず貸しだし、見たいという人がいれば喜んで家に招く。それを機に、親しい交流が始まることも珍しくない。
「オフィスにも飾っていますが、それが来訪者との会話の糸口になるなど、アートはビジネスにもひと役買ってくれています。もっとも、7年前に旅先の軽井沢で大雨に見舞われ、時間つぶしで入った美術館の草間彌生展を見るまでは、アートにまったく関心がありませんでした。草間さんの名前すら知らなかったくらい(笑)」
ところが、そこで草間作品の虜となり、その場で『南瓜(かぼちゃ)』を購入。それも、起業に向けて貯めていた資金の大半を注ぎ込んで、だ。
「そうさせるだけの不思議なパワーが草間作品にはあったんですよね。実際に絵を観ていると、エネルギーがみなぎってくる。『アートの力ってすごい!』と、どんどんのめり込み、今では500点以上を所有しています」
軽井沢にいなければ、大雨が降らなければ、草間彌生展が開催されていなければ、アートコレクター川崎祐一は生まれなかったというわけだ。日本では、アート収集は芸術に造詣が深い、一部の富裕層のものと思われがちだが、「僕みたいなケースもありますからね。要は“出合い”があるかどうか」と、川崎氏。
「出合いの場としてお薦めなのが、アートフェア。さまざまな作品が展示されるので、好みの作家が見つかりやすい。アートは日常を豊かにし、交友関係を広げ、ビジネスチャンスまでつくってくれる。アートを所有することで得られる価値は、まさに無限大! 多くの人にそれを、ぜひ体感してほしいですね」
Yuichi Kawasaki
1984年神奈川県生まれ。リクルートを経て、2011年にリンクルを設立。京都芸術大学客員教授も務める。現在は500点以上のアート作品を所蔵。InstagramとTwitterでアート情報も発信している。