“文化の街”を築く壮大な試み
経済や政治の街はあるが、文化の中心がない東京に新たな文化都心をつくりあげたい。そんな構想のもと、2003年に誕生した六本木ヒルズ。そのシンボルである森タワー最上層部には、現代アートを中心にエッジの効いた展覧会を開催する森美術館が開館した。’07年には国立新美術館と新しいサントリー美術館がオープン。3つの美術館は連携を図り、地域をあげて“アートの街”として世界に向けた六本木の情報発信に取り組むことになった。
「3館で『六本木アート・トライアングル』を結成し、さまざまな取り組みを行ってきました。そして’09年には東京都などが主催に加わっている一夜限りのアートの祭典『六本木アートナイト』がスタート。3館も実行委員会に加わっていて、来年11回目を迎えます」と、六本木アートナイト実行委員会事務局長の三戸和仁氏は言う。
どうしてアート鑑賞の舞台に夜を選んだのか? そもそも六本木の夜のイメージは、決していいとはいえなかった。
「アートナイトによって六本木に、健全なナイトカルチャーを根づかせたい。街の安心感を高めて、訪れる人の増加や消費の喚起に結びつけていけたら」
六本木アートナイトをはじめとしたアート拠点化構想が成功しているか否かは、ギャラリーの動向を見れば明白だ。かつて現代アートを扱うギャラリー街として、江東区の清澄白河が知られていたが、人気ギャラリーが続々と六本木へ移転している。
ギャラリー街の中心地になっているのが、森ビルが運営するふたつのビルだ。ピラミデビルにはペロタン東京、オオタファインアーツ、ワコウ・ワークス・オブ・アートなどの有名ギャラリーが集結。complex665には小山登美夫ギャラリー、タカ・イシイギャラリー、シュウゴアーツが入居している。
「森美術館にはじまり、アートナイトなどの取り組みによって、六本木が東京のアートの拠点になったと評価いただけた結果だと思います」
コロナの影響を受け、今年のアートナイトは中止になった。
「残念な結果でしたが、こうした活動は継続していくことが何よりも重要。来年2月にスピンオフ企画として開催予定です。密を避けるために期間を長く設定し、今までにない新しいコンテンツを打ちだしていきます」
世界のアートファンが注目するROPPONGI。アートの街・六本木は今後さらに進化していく。
六本木アートナイトの歩み
2009年からスタートした一夜限りのアートの饗宴。六本木を新たな芸術都市にする取り組みのひとつ。
2009. 第1回「出会い」
2011. 開催中止
東日本大震災による状況を考慮し開催中止。
2012. 第3回「アートでつくろう、日本の元気」
2016. 第7回「六本木、アートのプレイグラウンド ~回る、走る、やってみる。~」
2018. 第9回「街はアートの夢を見る」
2020. 開催中止
新型コロナウイルスの影響で開催中止。
Policy of 森ビル
1.美術館同士が一丸となり、アートと街の魅力を発信
2.六本木アートナイトをはじめ、イベントを継続的に行う
3.商店街やギャラリーを巻きこんで、アートの複合体をつくる
Kazuhito Mito
1964年埼玉県生まれ。慶應義塾大学卒業後、’88年に森ビル入社。上海秀仕観光会務有限公司総経理などを経て、現在、森美術館営業企画・運営グループ課長/六本木アートナイト事務局長を務める。
Illustraition=尾黒健二