あらゆる関連事業が接続できるブロックチェーンインフラ
ブロックチェーン技術を使って、アートの世界をもっと滑らかにする。
それが、アートの流通や評価を保証するためのインフラネットワーク「Startrail」を構築・展開しているスタートバーンのミッションだ。同社の代表である施井泰平氏はこう話す。
「マーケットでアートを流通させる際には、作品が本物であることを示す証明書、それに作品の来歴が重要となります。そこが信用できないかぎり、正当な値づけができませんから。ところが、従来型の紙の証明書では改ざん、コピー、偽造、紛失など、多くのリスクにさらされてしまう。作家や作品に付随する情報も、出所と真偽が不明なものが交ざっていたりして、あまりにもグレーゾーンが多すぎるんです。そんな状態では、よほど事情に精通している人でないと警戒してしまい、アートマーケットにお金を注ぎこむことができません。作品を売る側も、来歴の調査や権利関係の整理に莫大な時間と費用をかけているのが現状です」
作品の真正性と情報の信用性が脆弱(ぜいじゃく)であること。それがマーケットへの不信感を生み、アートの社会への浸透を阻んでいる。そこを解消するのが、ブロックチェーン技術を活用したデジタル証明書の発行だ。
「ICチップを用いて作品とデジタル情報を紐づけておくことで、世界中のアート関連サービスを横断して、持ち主や保管状態、展覧会出品など、来歴の記録も刻々と更新していける。作品の流通経路や発生した金額が正確に記録できれば、二次流通から発生する売上の何パーセントかを、アーティスト本人へ還元することもできるようになります。現状だと、作品をプライマリーで売った時以外に、アーティストが潤うタイミングがない仕組みとなっているので」
流通の信頼性担保の弱さがアート市場発展の阻害要因だと見定め、テクノロジーを用いてその課題を解決するのが、スタートバーンの活動というわけだ。
「二次流通の安全性・公正性が高まれば、日本でのアート市場の規模は、想像を超えるスピードで大きくなっていくはずだと私は踏んでいます」
ブロックチェーンによる、アートマーケットの新しいインフラ構築。それはまさに、コレクターにもアーティストにも多大なメリットをもたらす。そもそも施井氏は起業家である以前に、「インターネット時代のアート」をテーマに作品を制作し続けているアーティストでもある。そうした経験から、美術家の視点で現在の情報化社会を眺め、今の世にどんな作品を作っていくべきなのか、そのためにはアートの世界がどんな状況であればいいか、と発想していった。その結果、流通の「穴」に気づいたわけだ。
「事業の構想は作品づくりの延長線上にあるということです。日本のアートの世界はまだまだ小さく、閉じている。世界から見れば、日本の市場なんて地方の公民館レベルでしかないかもしれない。だからこそ、アートの価値づけをするインフラづくりから、日本のアートをもっと開いた場にして、裾野を広げていきたい。また、今のアート界にはテクノロジーに対する拒絶も根強いように感じます。そんな状況を少しでも変えていきたいと思っています」
Policy of スタートバーン
1.新時代のアート流通・評価のインフラづくり
2.アーティストにきちんと対価を還元する
3.世界をどうしたいのか、そこから発想を膨らませる
Taihei Shii
1977年東京都生まれ。幼少期をアメリカで過ごす。多摩美術大学絵画科油画専攻卒業後、美術家として活動。2014年、東京大学大学院在学中にスタートバーンを起業した。特技はビリヤード。
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