澄みきった優しい味わいの日本酒「東洋美人」。蔵元の杜氏で社長の澄川宜史(すみかわたかふみ)氏がこれからの海外展開について語った。【特集 ニッポンのSAKE】
自由度の高さに日本酒の新たな可能性を感じた
山口・萩で100年続く澄川酒造場。「十四代」の高木辰五郎氏の薫陶を受けた現社長の澄川宜史氏は、コロナ前までは海外展開に消極的だった。
「海外の人が日本酒を飲むのは、ほとんど日本食レストランに限られていました。現地の人たちにとって、日本酒は非日常の酒。すでに世界酒になっているワインと肩を並べていくには、もっと現地の日常に入りこみ、現地の料理と一緒に飲まれるような売り方をしなければ、と感じていました」と澄川氏。
2022年その思いを実現するチャンスが到来した。シドニー発のオールデイダイニング「bills」の世界中の店舗で、ハウスワインならぬハウス日本酒として「東洋美人」を提供したいというオファーを受けたのだ。
「bills」の打ち合わせでシドニーを訪ねた際、現地の人気レストラン「KURO」のシェフ寺本考宏氏とバーテンダーの道下邦明氏と意気投合。2023年4月に「東洋美人」とイノベーティブな料理のマリアージュを楽しむイベントを開催し、好評を博した。
「非常に手応えを感じるイベントでした。日本酒はアルコール度数が高いイメージもあるからか、さまざまなカクテルで楽しまれる人も多く、その自由度の高さに新たな可能性を感じました。日本酒は世界に類を見ないほど繊細な発酵過程を経て完成するもの。その価値をもっと多くの人に知ってもらうためにも、伝統的な日本酒をさらにブラッシュアップしていきたいと思っています」
この記事はGOETHE 2024年1月号「総力特集: ニッポンのSAKE」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら ▶︎▶︎特集のみ購入(¥499)はこちら