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2021.11.13

新幹線1時間で行けるビール天国。いま、静岡のクラフトビールが面白い!【#3 醸造所・前編】

近年、静岡県がクラフトビールのブームに沸いている。県内には22のクラフトビールの醸造所があり、ビール好きから評価の高い銘柄も多く存在。そんな県のビールを各種試すなら、静岡市内のビアバーと醸造所を巡るのが効率的で楽しい。第3回目は市内にある南米の個性が光る醸造所「García Brewing」を紹介する。【#1 ルーツ編】【#2 店舗編】

「夜ごはんの前に一杯でも飲みに来て」とフレディさん。味わい深くも軽やかなビールは、最高の食前酒となる。

日本で初めてキヌアを使ったクラフトビールを醸造

静岡駅から徒歩15分の横丁に、ペルーと静岡が混じり合う酒場がある。毎夜ビール好きや店主に会いに来る人で賑わう店の名は、「FIESTA GARCIA」。スペイン語で“ガルシアさんちのパーティー”を意味する。

店主はペルーのリマ出身のフレディ・ガルシアさん(44歳)。2019年に自身の醸造所「García Brewing」を設立し、できたてのビールを横丁の店で提供している。メニューには「インカ帝国」、「ブエナビスタ日本平」など、ラテン好きの心をくすぐりつつ、静岡らしさも感じられるビール名が並ぶ。

右からアイリッシュ ドライスタウトの「ノチェ デ フィエスタ」¥650、インディア ペールエールの「インカ帝国」¥800、ペールエールの「ブエナビスタ日本平」¥700。定番5種とシーズンごとの新作2種をタップで提供。

フレディさんが造るビールの最大の特徴は、ペルー産キヌアを使っていること。キヌア入りのビールを日本国内で醸造したのはここが初めてで、現在でも他に1社あるのみ。麦芽を糖化させるタイミングでタンパク質豊富なキヌアを入れると、度数を上げずとも奥深さがでる。「ビールによって反応が変わるのも面白い」とフレディさんは言う。

「例えば黒ビールだとコクが増して、ペールエールなどクリアなビールだとホップを感じやすくなることも。インカ帝国IPAでは爽やかな仕上がりになった。研究してビールごとに量を変えています」

店舗内装もフレディさんの手作りで所々にペルーの小物が置かれている。カウンターの裏には4テーブルを用意。気楽な雰囲気でひとりでも入りやすい。

キヌア効果に加え、フレディさんのビールはドライで瑞々しく、甘くなりがちなヘイジーIPAですらキレがある。人気の黒ビール「ノチェ デ フィエスタ」は旨味がありつつ軽やかで、新感覚の飲み心地。すべてアルコール度数5〜6%と高過ぎず、素直に喉を通っていく。

とはいえ、ここまでくるのに時間はかかった。ペルーのリマから静岡まで大海原を超えて約1万5000km。2004年に来日してから、クラフトビールで商売できるまでの道筋もまた、いまの美味しさに繋がっている。

右はペルー産とうもろこしやフレッシュチーズが入った「キヌアサラダ」¥700。左はペルーでよく食べられる牛肉の煮込み「アサド」。ミキサーにかけた玉ねぎとスペイン産唐辛子で炒めてから赤ワインで煮込んでいる。旨味とピリ辛がいい塩梅。¥700

12年越しに叶ったクラフトビール造り

生まれはリマ郊外の酪農一家。家族全員動物が大好きで、乳牛50頭に鶏30羽、大きな犬たちに囲まれて育った。高校卒業後はフジモリ元大統領の母校でもあるリマのラ・モリーナ国立農科大学の畜産学科へ進学。母がペルー料理店を切り盛りしていたこともあり、若い頃から料理にも親しみがあった。

大学を卒業すると実家の農場で働き出したが、20代半ばで景気悪化の影響を受け倒産。兄を頼りに静岡にやってきた。その後、工場で働いていた’07年頃に初めて飲んだ沼津の「ベアード ビール」が夢の入口となった。

「たまたまクラフトビールを飲んだ時に、あ、見つかった!と思った。昔からモノ作りが好きで、自分もこういうビールを造りたいと目標ができた。酵母からできるビールは生き物みたいで、育てる感じにも惹かれました」

木曜から日曜は三保の醸造所でも樽生を飲むことができる。国の名勝でもある三保の松原から徒歩12分ほどなので、富士山と駿河湾を拝んだあとにクラフトビールを飲むのが最高だ。

それからは、水産工場や自動車部品工場で1日12時間働きながらクラフトビールを研究。給料を貯めて少しずつ機器を増やしていった。

「水産工場は魚を冷凍のまま加工するから、寒い場所での作業でめちゃ大変だった(笑)。クルマの工場は元から興味があって、そこでマシンを勉強したのがいま役立っている。クラフトビールが好きだったから、諦めずに続けられた。それに、日本には仕事がある。選ばなければちゃんとある。ペルーは政権が変わると急に仕事がなくなったりして不安定。景気がよくなったと思ってもすぐ悪くなる。外に出ればお金をとろうとする悪い人もいて、いつか自分もやられちゃうかもと疲れてしまう。日本は安心で安全。大変でも、ここで仕事ができること自体ありがたい」

’10年と’14年には、クラフトビールブーム渦中のリマの醸造所で学んだ。戻ってきて’16年に「FIESTA GARCIA」を醸造に先駆けて開業。兄が作るフレッシュチーズやペルー料理、輸入クラフトビールを提供して地盤を作った。

「最初から完璧に揃えるんじゃなくて、できることからスタートさせる。そしたらあとは頑張るだけ」と邁進。’19年夏に醸造免許をとり、晴れて同年11月から自分のビールを提供できるようになった。器用に何でも自分で作るフレディさん。サーバー設備もお手製だ。

日本では珍しいペルー伝統のフレッシュチーズ。フレディさんの兄・ジャンさんのお手製で、作りたてが店に届く。絞ったばかりの朝霧高原の生乳を即日加工しているため、ミルクのフレッシュさが際立つ味わい。¥650

自ら店に立つメリットは、飲む人のリアクションを直に見られること。いい反応をみた瞬間について「最高だね」と笑う。改めて、クラフトビールの楽しさを聞いた。

「全部が楽しい。レシピを考えている時も、ドキドキしながら造る時も。8割はこんな感じになるとイメージできるけど2割はわからない。どれだけ勉強してもね。何回も調整して完成するものもあれば、ヘイジーIPAみたいに一発でできるのもある。最初に試す時は緊張で飲む前に震えてるよ(笑)。それで完璧に美味しかった時がたまらない」

自分の舌を過信せず、兄も「美味しい」と断言したものを世に出す。そんなガルシア兄弟は、キヌアを使うことを前提に、いちごやみかんなど静岡の特産物を副原料にしたビールも造る。

「日本平ブエナビスタ」を飲むフレディさん。ビール名は「日本平の絶景」を意味する。「静岡の好きな場所をビールの名前に入れています。これは苦味と甘みを少しずつ感じられて料理の邪魔もしないビール」

「第二の故郷・静岡への恩返しとして、静岡の特産物を使ったクラフトビールを造って全国に発信したい」

今日もフレディさんの1日は忙しい。昼は清水区三保にある醸造所でビールを造り、夕方になると「FIESTA GARCIA」で開店準備。パンを焼いたり肉を煮込んだり、営業が始まれば24時まで店に立つ。そんな毎日のなかでビールの新作を考案。しんどい時もあるが、「好きな仕事だから幸せだよ」と、12年越しに叶った夢を楽しんでいる。

Fiesta Garcia
住所:静岡県静岡市葵区七間町11-5 イマココビル1階-12
営業時間:水曜~土曜(18:00~00:00)、日曜(14:00~21:00)

【#1 ルーツ編】
【#2 店舗編】

TEXT=大石智子

PHOTOGRAPH=松川真介

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