GOURMET

2021.09.16

フランス料理界の重鎮、ドミニク・ブシェの挑戦。「自閉症の子供たちの未来をアートの力で輝かせる」

フランス人シェフのドミニク・ブシェがクラウドファンディングを立ち上げ、自閉症の子供たちの輝く個性と創造力を応援するクラウドファンディングを9月16日に開始する。自閉症の存在と子供たちの可能性を一人でも多くの人に知ってもらいたいという気持ちを一冊のブックレットにして賛同者に贈呈することで、世界中にメッセージを届けていく。

ドミニク・ブシェが手がけるクラウドファンディング

フランス人シェフのドミニク・ブシェは、かつて名だたるグランメゾンで総料理長を務めた後、自身の名を冠したレストランをパリに1軒、日本に4軒(銀座2軒、京都、名古屋)オープンした。軽やかでありながら、味わい深いフランス料理を若いシェフたちとともに作り続けている。

そのフランス料理界の重鎮が、このたび、自閉症の子どもたちの輝く個性と創造力を応援するプロジェクトを立ち上げた。自閉症の存在と彼らの可能性を一人でも多くの人に知ってもらいたい――。そんなドミニクの思いを実現するため、そして、子供たちの未来を応援するために、「アート(生の芸術)とガストロノミー」をひとつに繋げ、一冊のブックレットとして形にする予定だ。本には、アートからインスパイアされた料理レシピ、子供たちの作品や両親のインタビューなどが盛り込まれている。完成した本は、自閉症の子供たちのアートとプロの仕事をクロスさせることで、新しいワークスタイルを作り出すCROSS TEAMを通じて贈ることを目標とする。そんなプロジェクトへの応援を求めるクラウドファンディングを9月16日に起動した。

生の芸術(アールブリュット)と食(ガストロノミー)を繋げる

障がい者の豊かな創造性にかねてより魅力を感じていたドミニクシェフは、友人の息子である自閉症のJun Junと彼の友達のLilyと出会い、彼らの創りだすアートに魅了される。作品を初めて見たとき、その色彩の豊かさに衝撃を受けたいう。多くの言葉を発することができなくても、心の中に限りなく広がる、ピュアで優しい、色鮮やかな一面を垣間見た思いがしたと。彼らの隠されたエネルギーに料理魂が揺さぶられ、次々と、歓びと躍動の新しい発想の料理が誕生。それを一冊のブックレットとして形にしようという試みが、今回のプロジェクトである。


本格的な始まりは2019年。ドミニクシェフが料理の撮影をしている最中、カメラマンの機転でお皿の代わりにアクリル板を使ってみたという。シェフはパレットを与えられた子供たちのように、その上に自由にのびのびと料理を「描いて」 いく。それからは若きシェフたちの協力も得て、大好きな食材を次々とピュレに変え、美味しそうな「絵の具」が次々と並んでいったのだった。色と味のハーモニーを頭の中で何度も描いて熟考したものもあれば、即興で生まれるものもあり……。ドミニクシェフのアール・ブリュットは、まさに、ガストロノミーへと発展していった。

ドミニクは今回のプロジェクトについてこう話す。

「長い料理人人生の中で、こんなふうにワクワクさせてもらったのは、久しぶりのこと。自閉症の子供たちの心は限りなくピュアで、彼らの生み出すアートの可能性は無限大です。でも、彼らの存在は意外に知られていないようです。Jun JunとLilyと触れ合い、親御さんたちと話す中で、彼らに今、早急に必要なことは何かを知りました。自閉症を知って、理解して、優しい眼差しで見守る。それだけで彼らの安らぎにつながるのだと。 それなら自分にもできることがありそうだと思ったのです。彼らの頭の中から、心の中から溢れでるアートをぼくもお皿の上で描いてみようと。レシピにしてみなさんにも作っていただき、レストランではコースの一皿として味わっていただき、自閉症の人たちのアートの素晴らしさに触れていただけたら、それだけで嬉しいです。

子どもたちは日々成長します。Jun Junはあっという間に父親である友人の背を超え、Lilyももうすぐお母さんの肩に届きそうです。親御さんは未来の話をするのは厳しいと声を詰まらせます。自分たちがいなくなった後にこの子たちはどうなるのか。

自分たちと違うから目を逸らすのではなく、同じ社会に生きる一人の仲間として見てほしい、そんな、ささやかなようで大きな願いに、少しでも寄り添いたいと思っています」

DOMINIQUE BOUCHET(ドミニク・ブシェ)
フランス ポワトゥー・シャラント地方に生まれ、大自然の豊かな食材に囲まれて育つ。13歳で料理人としての道を歩み始め、1974年、コンコルド・ラファイエット開業時にジョエル・ロブション氏の右腕となって活躍する。以後、パリの「ジャマン」、「トゥール・ダルジャン」、「ホテル・ド・クリヨン」の総料理長を歴任しフランスのガストロノミー界を牽引する。2002年、レジオン・ドヌール勲章を受章。2004年独立。新境地として、自身の目と心が行き届く、小さくて美しい隠れ家レストラン「ドミニク・ブシェ」をパリ8区にオープン。オーナーシェフとして、世界中のお客様をお迎えする。2013年「ドミニク・ブシェ トーキョー」を銀座五丁目に開業。2015年一丁目に移転オープン。2016年にルレ・エ・シャトー加盟、2019年に名古屋に「レ・トレフル ドミニク・ブシェ」、京都に「ドミニク・ブシェキョート」開業。

TEXT=ゲーテ編集部

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