
一番出汁の風味と旬の味覚を満喫できる夏の椀物。主役のかさごは小田原直送で鮮度抜群。ふっくら炊かれた加茂茄子、いんげん、花柚子が夏の香りを運ぶ。
住宅街に佇む地元密着型の懐石料理店
都立大学駅近くの住宅街に溶けこむ扉を開けると、白木のカウンターを配した和の空間が現れる。パリッとした白衣姿の店主、上江洲(うえず)直樹氏は、老舗『菊乃井』の東京店で修業し、料理長まで務めた凄腕だ。得意とするのはもちろん、折々の季節を写した京懐石。ただしここは地域密着型の店ゆえ、常連の声を反映した関東好みの要素も取り入れられている。

頭は香ばしく、身はふっくらと焼かれた鮎の塩焼き。
夏の懐石の先付は、冷んやりなめらかなじゅんさいと加減酢の涼感に、ウニやサザエの濃厚な旨味、枝豆やうすい豆の香りと食感がアクセントをつける一品。八寸と向付(お造り)を挟んで供されるお椀では、引き立ての出汁の馥郁(ふくいく)たる香りと、端正な椀種の旨味をしみじみ味わえる。お椀のかさごをはじめ、魚は小田原の早川漁港から届く新鮮なものが中心。鮎は早川の清流で釣られた天然物だ。

じゅんさい、ウニ、サザエ、枝豆、うすい豆の先付。青柚子と穂じそが香る。料理はすべて¥14,500のコースの一例。
懐石の後半は魚と肉の焼物2種、釡炊きご飯、そして水物。しめて1万4500円とリーズナブルなのは、上江洲氏がブランド食材に拘こだわらず、自身で選んだ食材を用いているため。秋の松茸や冬の蟹などの高級食材は、希望すれば別料金で楽しむこともできる。まさに行きつけにしたい一軒だ。

店主の上江洲直樹氏。『赤坂 菊乃井』で村田吉弘氏に16年間師事し、2017年に料理長に就任。『ハルヤマシタ』統括料理長を経て’21年2月に開業。

カジュアルとフォーマルの中間を狙った店内。木曽檜のカウンターが清々(すがすが)しい。
八雲うえず
住所:東京都目黒区八雲1-3-9
TEL:03-5726-9359
営業日:18:00~
休業日:不定休
座席数:カウンター9席
料金:コース¥14,500(完全予約制)
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