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2021.06.13

麻布十番 秦野よしき|ユニークなアプローチで楽しめる個性派の鮨

秋元 康、小山薫堂、中田英寿、見城 徹の美食を探求する4兄弟の偏愛レストランを大公開するゲーテレストラン大賞「ゲーテイスト」が今年も開催に! 暖簾をくぐり、静謐な店内のカウンター席に姿勢を正して座り、店主の所作を眺める。そうして目の前に供される美しい握りを口に運ぶ。それは、思わず頬が緩む瞬間だ。鮨には人を幸せにする魔力がある。

麻布十番 秦野よしき

油と相性のよい茄子を揚げて、酢飯と合わせた「揚げ茄子の握り」。テーマである「酸と脂」の一体感をわかりやすくするために考案。挨拶がわりに最初に供される。

見城徹「テーマは酸と脂。その象徴、茄子の握りを3回もおかわりしたよ」

多くの鮨店を食べ歩き、独自の哲学で「鮨とは何か」を追求。シャリの米の甘み、酢の酸、ネタの脂の三位一体の表現をテーマにしたストーリー性豊かなコースで注目を浴びている。

 自分なりの哲学を持って、ユニークなアプローチで楽しませてくれる個性派です。

 自身の名前を店名にしているんですね。

絶品の穴子

絶品の穴子。穴子の仕入れ、扱いが豊洲No.1と評判の『ウエケン』の穴子を使用。完璧な脂を生かしてぷっくり煮揚げ、コースのクライマックスを飾る(料理はすべて¥27,500~のおまかせの一例)。

 とにかく一本筋が通っているんだ。「酸と脂」というコンセプトをたてて、鮨として魚の個性をどう引きだすか、常に考え、研究しているよ。行くたびに旨くなっている。

 それはすごいですね。

 テーマの象徴として、揚げてタレに漬けこんだ茄子の握りを最初に出してくるの。

 僕も一番初めは見城さんに連れていっていただいたのですが、めちゃくちゃ美味しかった。酸と脂というテーマを伝えるために、最初に茄子を出すという考えに至ったのに感服。

大トロ

鮪は、まず大トロを握り、次に赤身の漬けから中トロへと続く。

 酸と脂ってのはこういうもんだってわからせてくれて。口の中で乳化して一体になる感じがクセになるんだ。どうしてもまた食べたくなって、途中で2回おかわりして〆にまた頼んで合計4貫食べたりする。

 本当に美味しいですよね。

 つまみの牡蠣の南蛮漬けも美味しかった。季節によってはメヒカリだったり鮎だったり。

 南蛮漬けも酸と脂ですね。

赤身の漬け

順番の理由は「中トロの繊細な味わいを楽しめるから」。

 ワインでも料理でも酸の背骨が通っていることが大事というのが見城さんの持論。

 そう、一流のセンスの持ち主は、酸っぱいんじゃなくて、綺麗な酸を表現できる。

 僕は茄子が食べられないから……。他に印象的なネタは?

 穴子だね。秦野よしきの穴子が一番好きかもしれない。臭みがないのはもちろんだけど、骨がまったく当たらない。柔らかいけど煮崩れしていなくてぷっくりとした食感。旨いよ。

「牡蠣の南蛮漬け」

「牡蠣の南蛮漬け」。握りに入る前に、酸と脂のテーマへの理解の総仕上げとして出される。

 秦野さんはどこで修業されたのでしょうか?

 いろんなタイプの店で仕事をしながら評判の店を食べ歩いて出会ったのが札幌の『鮨 一幸』の工藤順也さん。2年間毎月1回通って、話を聞いて考え方を学んだそうだよ。お店の内装も工藤さんから札幌の店の設計図をもらって再現したほどリスペクトしているそう。

「きんきの揚げ刺し」

「きんきの揚げ刺し」。きんきに衣をつけてレアに揚げ、脂が少し溶けた状態にして、玉ねぎのすりおろし入りポン酢でいただく。

 そうなんですね。僕も『鮨 一幸』好きですよ。最近は予約が取れなくて行っていないけど。

 彼の敬愛ぶりを見ていると『鮨 一幸』に行きたくなるね。

ーー今年のゲーテレストラン大賞「ゲーテイスト」は「秘密のレストラン」「陶酔のフレンチ&イタリアン」「美しき芸術の鮨」「職人の技に酔いしれる料理」「百花繚乱の超絶中華」「知る人ぞ知る隠れ家&穴場」「究極の肉を喰らう」がラインナップ! 完全保存版です。

 

Azabujuban Hatanoyoshiki

店主、秦野芳樹氏が握るカウンターは札幌『鮨一幸』に倣い、職人の手元すべてが見えるよう境目をなくしてフラットに。

Azabujuban Hatanoyoshiki
住所:東京都港区麻布十番2-8-6 ラベイユ麻布十番B1F
TEL:03-6809-4250
営業時間:18:00~、20:30~(2部制)
休業日:日曜、祝日の月曜
座席数:カウンター8席、個室カウンター4席
料金:おまかせ¥27,500~

TEXT=藤田実子

PHOTOGRAPH=岡本 寿

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