日本で1軒しかない“江戸料理”の『日本料理 たかむら』と焼肉好きの理想郷と謳われる『西麻布 焼肉X ~TEN~』。そんなレストラン同士が出合い、コラボレーションして生まれた至高のディナーをご紹介。
互いの持ち味を生かして誕生した新ジャンル「江戸肉割烹」
冬の季節には雪が降り積もる秋田県・秋田駅からほど近い場所に、日本のみならず世界中から美食家がこぞって通う店がある。それが江戸料理『日本料理 たかむら』だ。
レストランのランキングサイト「ラ・リスト (La Liste)」で96.5点の高得点を獲得し、「OAD( Opinionated About Dining)」でもトップ50に入る名店中の名店。店主の高村宏樹氏は、伝説の江戸料理『太古八』で修行を積んだ唯一の江戸料理の継承者でもある。
そんな高村氏は20年以上秋田の地、一筋で腕を揮ってきた。しかし『西麻布 焼肉X ~TEN~』を手がける肉マイスターの田辺晋太郎氏が口説き落とし、「江戸肉割烹」をテーマに2夜限りの貴重なコラボレーションディナーが実現。
今回のコラボレーションで大切にしたのは、互いの店の持ち味を生かした料理を作り上げること。音楽プロデューサーでもある田辺氏はその考えをミュージシャン同士のコラボレーションを挙げて説明する。
「例えば絢香さんとコブクロが一緒にライブを行うとします。その時に絢香さんが前半30分、コブクロが後半30分じゃつまらない。どうせなら最初に『WINDING ROAD』を歌ってよって思うじゃないですか。絢香さんの『三日月』をコブクロが歌ったり、逆にコブクロの曲を絢香さんが歌ったり。コラボでなければできないことをゲストは楽しみたいと思うんです。
そのため、今回のコラボでもそこは意識しました。『日本料理 たかむら』のスペシャリテである『蕪餅(かぶらもち)』には鰹出汁を合わせるところを、『西麻布 焼肉X ~TEN~』のテールスープを合わせたり、『肉刺し』の肉は『西麻布 焼肉X ~TEN~』の厳選したもので食べさせ方は『日本料理 たかむら』流にしたり。
世のなかではさまざまな肉割烹があると思うのですが、それらとはまったく違うものを作りたかった。なので、江戸料理のただひとりの継承者である高村さんと焼肉の頂天を目指す『西麻布 焼肉X ~TEN~』が肉割烹を作ったら騒ぎになるだろうと思いましたね(笑)」
肉好き垂涎の料理が続々登場!
田辺氏の予想通り、『日本料理 たかむら』と『西麻布 焼肉X ~TEN~』が融合した料理は思わず陶然するほど肉の旨味が際立つものとなった。コースは全14品。「横綱浅利と和牛ミノの玉締め」に始まり、『日本料理 たかむら』のスペシャリテである「蕪餅」をアレンジした「特製テールスープで炊いた蕪餅」などシンプルでありながら味わい深い料理が次々に舌を楽しませてくれる。
秋田の天然舞茸に『日本料理 たかむら』の鰹出汁と『西麻布 焼肉X ~TEN~』のコンソメを合わせた「お椀」。お椀は『日本料理 たかむら』で使われている160年前のもの。
ゲストの目の前で胡麻から油を抽出して作る『西麻布 焼肉X ~TEN~』の定番料理「レバニラ」を『日本料理 たかむら』流に仕上げた「炙りレバニラ 江戸肉割烹スタイル」もこれまでにない新鮮な印象が残る一皿に。
また『西麻布 焼肉X ~TEN~』の〆に欠かせない冷麺は、『日本料理 たかむら』の〆でも用いられるつるつるとした独特な食感が特徴の「たかむら麺」を組み合わせた「フローズンキャビア冷麺 たかむら麺を使って」にアレンジ。
他にも「肉刺し」「熟成但馬牛タンといくらの春巻き」「和牛センマイと旬の野菜の胡麻酢和え」「但馬玄ヒレの焼物」「松茸と但馬玄特上カルビの筏焼き」「もつまぶし 江戸肉割烹スタイル」「玲瓏豆腐(こおりとうふ)」が次々と供された。
特に出色だったのが「但馬牛タンの吉野煮」。選り抜かれた但馬牛のタンに『日本料理 たかむら』の鰹出汁と『西麻布 焼肉X ~TEN~』のコンソメが合わさったひと皿は、今回のコラボレーションの集大成ともいえるものになったと高村氏は話す。
「『牛タンの吉野煮』は店の定番料理でもあるのですが、『西麻布 焼肉X ~TEN~』のコンソメと合わさることで印象が大きく変わりました。私が作っている江戸料理は武士の料理ですので、派手ではなく華美でもなく、美しくということを大事にしています。
調理も3パターンくらいまでしか手を加えずにシンプルに作る。いかに素材の味を高めるか、というところに重点を置いています。今回のコラボレーションでもそこは大切にして『江戸肉割烹』という新しいジャンルを『西麻布 焼肉X ~TEN~』と作り上げました。
この試みは自分にとって本当に学びの数々でした。普段、店で肉を使う機会は少ないのですが、こういう風にアプローチすれば江戸料理でも肉を使えるんだな、と新しい発見がありました。これをきっかけに江戸料理のなかで、肉のメニューの幅を広げていきたいと思います。
料理はワクワクがないと面白くない。食べ手も作り手もワクワクするような料理をこれからも作っていきたいですね。2夜だけの特別ディナーでしたが、これで終わりだと思っていません。年に1回とか、春や夏など季節ごとにできればいいですね」
『日本料理 たかむら』と『西麻布 焼肉X ~TEN~』による、最高の和牛を江戸料理独自の技法で昇華させた料理の数々。日本初の試みでゲストを唸らせ、料理の新たなる可能性を生んだ稀有な体験となった。次のコラボレーションが待ち遠しい。
『西麻布 焼肉X ~TEN~』
住所:東京都港区西麻布1-4-46カーサスプレンディッド西麻布B1F
TEL:03-5786-1129
営業時間:17:00~23:30
休業日:日曜
座席数: 16席(全席個室のみ)
料金:ディナーコース¥32,000〜
https://nishiazabu-yakiniku-ten.com/