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2024.08.07

「PST分析」で分かったダイエットが続かない理由。「すぐ」&「確か」な結果に人間は動きがち

英会話、資格の勉強、ダイエット、禁煙など、始めたいのにできない人には共通の傾向があった……! 行動科学マネジメントの第一人者、石田淳さんが誰がやっても成果を出せる実践的メソッドで「始め方」を指南。『始める力』より、一部を抜粋してお届けします。

ケーキを前に喜ぶ女性の写真

得られる「結果」には、いろんな種類がある

あとで得られる結果は、目先の結果に負けてしまう

これも、「始めたことが続かない」大きな理由になります。

今度は、ダイエットに挑戦しては挫折を繰り返す、女性会社員のSさんに登場してもらいましょう。

Sさんは、とにかく甘いもの好き。とくにケーキには目がありません。会社でのストレスフルな時間を過ごしたご褒美に、夕食後にケーキを食べるのが最大の楽しみです。でも、ケーキを食べ過ぎたら太るのはわかっています。

実際にケーキのせいで体重は増え続け、スマートな同僚と同じ制服を着ていると、自分の「ぽっちゃり」がどんどん目立つようになって嫌になります。脚が長くてもともとのスタイルは悪くないSさんですから、やせたらかなりイケルという自覚があります。だから、やせたいのです。ケーキを食べるのをやめたいのです。

このときの、Sさんの先行条件(A=Antecedent)は、「やせたい」「かっこ良く制服を着こなしたい」というものです。

行動(B=Behavior)としては、「ケーキを食べる」ではなくて、「ケーキを食べる代わりにノーカロリーのガムを噛む」などにしたいわけです。

では、それらの行動の結果(C=Consequence)はどうなるでしょうか?

「ケーキを食べる」の場合

(1)「美味しい!」と満足する

(2)「また食べちゃった」と後悔する

(3) 体重が増える

「ケーキを食べる代わりにノーカロリーのガムを噛む」の場合

(4)「美味しくないし物足りない」と感じる

(5)「なんとか我慢できた」とほっとする

(6) 体重が減る

などが考えられます。

これらを見ていると、人の行動によって得られる結果には、いくつかの種類があることがわかってきます。

たとえば、(1)や(4)はすぐに得られるけれど、(2)や(5)は少ししてから、さらに(3)や(6)はかなりあとから得られる結果です。また、(1)(5)(6)はポジティブで、(2)(3)(4)はネガティブな結果です。

こうした結果の種類に着目すると、さらに面白いことがわかってきます。

ポジティブだけど時間がかかる不確実な「結果」では、人は動かない

行動科学マネジメントでは、人の「行動」で得られる「結果」について、「PST分析」と呼ぶ3つの座標軸で分類しています。

  • タイプ   「P=ポジティブ」か「N=ネガティブ」か
  • タイミング 「S=すぐ」か「A=あと」か
  • 可能性   「T=確か」か「F=不確実」か

すべての結果は、この3つの座標軸の組み合わせ。つまり、次の8種類の結果が存在することになります。

  • (1)「ポジティブ」で「すぐ」で「確か」な結果
  • (2)「ポジティブ」で「すぐ」で「不確実」な結果
  • (3)「ポジティブ」で「あと」で「確か」な結果
  • (4)「ポジティブ」で「あと」で「不確実」な結果
  • (5)「ネガティブ」で「すぐ」で「確か」な結果
  • (6)「ネガティブ」で「すぐ」で「不確実」な結果
  • (7)「ネガティブ」で「あと」で「確か」な結果
  • (8)「ネガティブ」で「あと」で「不確実」な結果

このうち、人に行動を繰り返させるのに、最も効果的な組み合わせは(1)です。「ポジティブな結果が、すぐに&確かに得られる」と知っていれば、人は積極的にその行動を取るようになります。

とくに「タイミング」は重要ファクターで、「あと」から得られる結果よりも「すぐ」に得られる結果に、人の行動は左右されます。

先ほどの例を振り返ってみましょう。

「ケーキを食べる」の場合

(1)「美味しい!」と満足する→(1)「ポジティブ」で「すぐ」で「確か」

(2)「また食べちゃった」と後悔する→(7)「ネガティブ」で「あと」で「確か」

(3) 体重が増える→(8)「ネガティブ」で「あと」で「不確実」

「ケーキを食べる代わりにノーカロリーのガムを噛む」の場合

(4)「美味しくないし物足りない」と感じる→(5)「ネガティブ」で「すぐ」で「確か」

(5)「なんとか我慢できた」とほっとする→(3)「ポジティブ」で「あと」で「確か」

(6) 体重が減る→(4)「ポジティブ」で「あと」で「不確実」

Sさんにとって、本来最も重視すべきである体重が減るという結果は、「ポジティブ」ではあるけれど、かなり「あと」から表れるものですし「不確実」です。

ところが、「美味しい!」と満足するのは、「ポジティブ」で、しかも「すぐ」で「確か」なことなのです。

だから、Sさんはどうしても「ケーキを食べる」という行動を取ってしまうわけです。

挫折しないための「PST」な結果は、自分でつくれる!?

ここまでで充分に理解できたと思いますが、あなたが「始めた」1つの行動を、「続ける」に持っていくためには、PSTの結果、つまり「P=ポジティブ」&「S=すぐ」&「T=確か」に得られる結果が効果的に作用します。

この、PSTの結果は自ら用意するということもできます

それには、始めたことの本来の結果とは別のルートを模索するのも一法です。

新しいルートのイメージ画像

勉強にしろ、ダイエットにしろ、あなたが本当に欲しがっている結果は、「ポジティブ」ではあっても、どうしても「あと」&「不確実」なものです。だから、途中で挫折しやすいのです。

そこで、ちょっと違うご褒美を「すぐ」&「確か」に自分に与えてあげます

ある資格専門学校の講師は、公認会計士を目指して勉強する受講者に対して、「火曜日の午後だけ、ご褒美時間にしろ」と指導しています。

べつに、火曜日の午後でなくてもいいのでしょうが、1週間のうち、半日だけは思いっきり遊ぶことを提案しているのです。

そして、「その火曜日の終わりには、次の火曜日になにをして遊ぶかを決めてしまいなさい」とも言っています。

「公認会計士の資格試験に合格する」という「ポジティブ」な結果は、「あと」からのものだし、あまりにも「不確実」で、受講者のモチベーションがなかなか保てません

でも、「1週間頑張れば、次の火曜日には必ず○○ができる」というご褒美があれば、勉強を続けることができるわけです。

「1週間先だなんて、全然、すぐではない!」

というなら、その日のうちにご褒美を与えてあげてもいいでしょう。

「今日の朝、30分勉強できたら、仕事帰りにいつもより高い缶ビールを買おう」

「思いきってスポーツクラブに入会できたら、その足でかっこいいウェアを揃えよう」

「8時までカフェで参考書を読んで、それから映画を観に行こう」

なんでも結構。あなたがわくわくするようなご褒美を用いて、続ける仕組みをつくってみてください。

この記事は幻冬舎plusからの転載です。
連載:始める力
石田淳

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