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2024.05.30

ヤクザの親分は酒を飲まない? トップに立つ者の共通点とは

年功序列、終身雇用が崩壊し、欧米型の雇用環境に変わりつつある日本。これからのシビアな社会を生き抜くには、ただの「いい子」ではやっていけません。そんなときヒントになるのは、生き残りを賭けた戦いを日々、繰り広げている裏社会の人たち……いわゆるヤクザの生き方です。リーダーシップ、錬金術、逆境の乗り切り方など、彼らヤクザの「戦略」がよくわかる『ヤクザに学ぶサバイバル戦略』より、その一端をご紹介しましょう。

デキる男は「自己管理能力」が高い

親分衆の健康法は様々だ。ゴルフを筆頭に、マリンスポーツやスキー、武道、水泳、ジョギング、ウォーキング、登山から山菜採り、家庭菜園、カラオケ、乾布摩擦、青竹踏み、サウナ、木刀や竹刀の素振り、バッティングセンター通い……などなど。あるいは大声を出したり、趣味に打ち込むことが健康法という親分もいる。

(写真:iStock.com/taa22)

ワシの健康法は、熟睡することにつきるよ

とは、武闘派軍団として知られる西日本の某組長。さもありなん。トップの一瞬の判断が、組員の生死はもとより、組織の存亡にも重大な影響を及ぼす世界のこと。

「あらゆる状況をすばやく読み取って、最も効果的で合理的な判断を下さなくてはならないのがトップ。後まわしのできない重大な決断にもせまられるだろう。それが、寝ぼけ眼や酒臭い息を吐きながらの指示や判断だったら、結果がどうなるかは火を見るより明らか。ふしだらな生活をしている親分に、若い衆が生命を預けられるわけがないし、誰もついて行きませんよ」(事情通)

跡目をとり、代目継承者になったのを機に、酒をピタリとやめたという親分が多いのも、こうした理由からだろう。

とかくヤクザというと、好き勝手でやり放題、毎日を気ままに暮らしていると思われがちだが、それはとんでもない間違い。上になればなるほど自己を律し、ストイックな生活を送っているというのが実情であろう。

逆に、やたら伸びる素質を持ちながら、酒や女に溺れたがために、若くして潰れていく人間が多いというのは、ヤクザもカタギも何ら変わることはない。

ある長老が、しみじみといったものだ。

「不思議にオレの兄弟分や同期の知りあいというのは、若くして殺されたり、いつのまにか消えていった人間が多いんだ。オレが何でこの歳まで生きてこられたのか……。つくづく考えてみると、やっぱり酒を飲まなかったからなんだな。酒を飲んでいたら、オレもいま頃はどうなっていたかわからんよ」

たとえば、この長老の兄弟分にあたるA組長が若い時分、B組組員に射殺されたのは、もとはといえば酒の席での暴言がきっかけだった。

馴染みのB組長と飲んでいるうちに、つい口を滑らし、B組長に対して、いわずもがなのことをいってしまったのだ。冗談では済まされない内容のそれを、お共でついていたB組組員が聞き逃さず、翌日、すぐさま報復の銃弾は放たれたのだった。

酒にだらしない名親分はいない

ヤクザ界では、こうした酒のうえでのトラブルをきっかけにして勃発する抗争事件(さすがにいまはほとんどないだろうが)が、昔から少なからずあった。もとより抗争事件の根はもっと深いところにあるのだが、酒が呼び水となって一挙に爆発してしまうのである。某組長がこういう。

(写真:iStock.com/Dmitrii Ivanov)

「昔から“酒は気狂い水”というからな。私も酒のうえでのつまらないトラブルから消えていった若い衆をずいぶん見てきた。私は若い頃から酒は一滴も飲まない。酒はとかく間違いのもとになるし、人間、酒を飲むと日頃抑えている本音がポロッと出てくるからな。

『あのヤロー、面白くねぇ』なんて洩らしてみろ。それを聞いた若い衆がすぐ行動に奔って、もう抗争事件だ。それに酒飲んで喧嘩して、勝てるわけがないし、大怪我のもとだからな。若い頃から酒を飲まずに喧嘩したから、私はまず喧嘩に負けたことはなかったよ」

かといって、酒を飲まないことが名親分の必須条件というわけでもない。酒を好む親分が数多く存在するのも確かである。ただし、酒にだらしのない名親分は存在せず、要は酒といかに上手につきあうか、であろう。

その点、立派なのが地方都市で渡世を張るC組長だ。

ネオン街に繰りだすときは、決して若い衆のお共をつけないでひとりで歩く。そうでないときはカタギの人たちと一緒である。C組長は、一見するとヤクザの親分にはまったく見えない。そのため、街のポン引きのアンちゃんに「おっさん、どうや」などと勧誘されたり、ときには喧嘩を売られることもある。

このポン引き氏、C組長の正体を知ったら腰を抜かすこと請けあいだし、若い衆がいたら、それこそ顔のかたちが変わるほど痛めつけられるだろうが、どんなときでもC組長は笑って受け流す。そこは貫禄なのだ。

C組長も、若いときこそ酒のうえでの間違いが、一、二度あったが、以後は心を改めて酒と接してきた。以来、間違いは皆無である。現在のC組長にとって、酒はストレスの解消、明日の稼業への活力として適当に楽しむものだ。酒を飲むならこうありたいものだが、要は自己管理もできない者は酒を飲むべからずというところだろう。

この記事は幻冬舎plusからの転載です。
連載:ヤクザに学ぶサバイバル戦略
山平重樹

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