晴海埠頭に突如姿を現したソーラーパネルの巨大船
レース・フォー・ウォーター・オデッセイについて知ったのは、2018年のバーゼルワールドだった。海洋プラスティック汚染について広く警鐘するため、5年をかけてオデッセイ号で世界を大航海する。
ブレゲはこのプロジェクトに賛同し、その年フルモデルチェンジしたブレゲ「マリーン」コレクションの新たな船出を祝し、活動への参加を宣言したのだ。
あれから2年が経ち、オデッセイ号は東京湾に静かに停泊していた。実際に目の当たりにすると、そのスケールに圧倒される。カタマラン(双胴船)の船体はまるでUFOのようだ。デッキに上っても周囲をソーラーパネルに囲まれ、そこが船上であることを感じさせない。
太陽と風、水を動力に、操船に関わる乗組員はわずか5名というのも驚かされる。だがそれだけソフトエネルギーが偉大であることの証明でもある。
船内にはセミナールームが設けられ、世界の寄港地で環境保全に向けたプレゼンテーションやレクチャーを行う。それも航海の大きな目的だ。
環境保護に対し正論をかざすのはたやすい。だがそれは実体験を通してこそ価値があり、説得力がある。それも冒険という好奇心と発見の喜びがあるからこそ語られる内容は、より共感を呼び、深く沁(し)みる。社会が閉塞する今、この航海はさらに輝きを増し、未来を拓く勇気を与えてくれるだろう。