2010年にメジャーデビュー。それから12年、今市隆二は原点に立ち返ることを決意した。その決意の表れが、’22年6月に開幕したライヴツアー「RYUJI IMAICHI CONCEPT LIVE 2022 “RILY'S NIGHT”」だ。そしてツアーが続くなか、ソロアルバム『GOOD OLD FUTURE』をリリース。今市隆二の精力的な活動の源にある思いを聞いてみた。
原点に立ち返ることで新たな視点が見えてきた
「コロナ禍が少しずつ落ち着き、ライヴが開催できるようになっても、ファンは遠出しにくい状況が続いていた。『遠いから、行きたくても行けない』という声が聞こえてきて。全国からファンの皆さんが集まってくれるドームツアーは重要だけど、今は自分から全国のファンに音楽と感謝を届けに行きたいなと。デビュー当時の気持ちに立ち返り、北海道から沖縄まで全国各地のホールを、可能な限り多く回っています」
数万人を収容するスタジアムとは異なり、地方都市のホールは「距離が近い」。その近さが今市にリアルな刺激を与えた。
「ステージの上からファンの表情がはっきりと見える。目をキラキラと輝かせたり、感動して泣いてくれたり。感情がダイレクトに伝わってくる。その感情を受け止め、僕も気持ちをさらけ出したい。ライヴでは初めてQ&Aコーナーを設けています。ファンに質問してもらい、コミュニケーションを取りました」
ライヴは3日に1回という超ハイペース。「体力的にキツイっすよ」と苦笑いするが、それ以上の幸せを感じているという。
「コロナが収まってきたと思ったら、ロシアとウクライナが戦争を始めてしまった。世界が不安定な情勢のなかで、ごく普通に人と会えることは、なんて幸せなことなのかって。日常の大切さを改めて実感しています」
過密日程の合間を縫って、レコーディングにも臨んだ。2022年11月2日、ソロアルバム『GOOD OLD FUTURE』をリリース。
「忙しい時こそ、新しいチャレンジを行うべき。自分のマインドが落ちる暇がなく、高い集中力を持って仕事に臨めるから。これは、どんなビジネスにも言えることだと思っています。アルバムタイトルは“古きよき未来”の意味。自分が大好きな’90年代R&Bに敬意を払い、自分の感情を素直に表現しました」
今市の素直な感情は、楽曲のテーマや歌詞にダイレクトに表れている。そのひとつの象徴が収録曲「Song For Mama」だ。
「ずっと母に対してのメッセージソングを書きたいなと思っていて、今回やっとカタチになった。実家に残されていたホームビデオで、僕が小さかった頃や母の姿を見ながら作ったんです。アルバムでは音はもちろん、詞に注目してもらえると嬉しい。かけがえのない平凡な日常をテーマにした『Star Seeker』、’90年代R&Bへ愛を込めた「ROMEO+JULIET」。ライヴツアーの移動中や宿泊先のホテルで、コツコツと詞を書き上げていきました」
コロナ禍に蓄積した鬱憤をエネルギーに変えて突き進む今市隆二。ストレスやプレッシャーに押しつぶされそうになることはないのだろうか。
「どんなに忙しくても、毎日のランニングは欠かしません。体力アップはもちろん、メンタルも鍛えられると感じています。それと、ストレスを溜めないために趣味の時間を大切にしようと心がけています。仕事以外に打ち込めるものを持つべきだとずっと言われ続けてきましたが、やっと見つかった。実は今、ヴィンテージデニムに夢中。眺めて過ごすだけで、また頑張ろっか、という気になるんです」
取材時のアザーカットを公開
Ryuji Imaichi
1986年京都府生まれ。2018年にソロプロジェクトを始動し、現在はライヴツアー「RYUJI IMAICHI CONCEPT LIVE 2022 ”RILY'S NIGHT”」で、全国各地を精力的に巡る。