MAGAZINE &
SALON MEMBERMAGAZINE &
SALON MEMBER
仕事が楽しければ
人生も愉しい

PERSON

2022.11.23

【成田悠輔】偉人の成功物語は本当に教訓になるのか──短期集中連載「Climbers 2022 – 秋 –」

アスリート、文化人、経営者ら各界のトップランナーによる新感覚オンラインライブイベント「Climbers(クライマーズ)」。その第5弾が、2022年11月14日から6日間にわたって開催され、ビジネスパーソンを大いに熱狂させた。今回、研究者/実業家の成田悠輔さんによる特別講義を一部抜粋して掲載。すべての講義を聴くことができるアーカイブ配信はこちら。※’22年11月20日〜11月30日18時までの無料限定公開。申し込みは画面内右上もしくは下の「視聴登録はこちら」より

成田悠輔

未来への可能性が潜んでいる領域とは

第16代ローマ皇帝のマルクス・アウレリウスはこう言いました。「空中に投げられた石にとって、落ちるのが悪いことでもなければ、昇るのが善いことでもない」と。

現代の社会では一般的に、昇っていくこと、乗り越えていくことが大切だとされています。そのため、世の中にはそういうストーリーがあふれています。恵まれない家庭に育ったが、環境に左右されない生き方を貫き、成功をつかんだというような。でも、そういうストーリーを聞いて、本当に意味があるのでしょうか。

たまたまいい出会いがあり、そもそも特殊な能力をもっていた人がうまくいっただけかもしれません。戦争に赴いた兵隊の中で、無事に帰ってきた一部の人の話を聞いても意味はない。帰ることができなかった兵士のほうにこそ教訓があるかもしれないのです。ほんの一部の話を聞いて、わかったような気になるのはよくないことだと感じています。

しかも成功者というのは、言いにくいことは語らないもの。美談として語り尽くされているストーリーというのは誰もが知っているものでしょう。その中に新たな教訓などあるのか、はなはだ疑問です。いまだに語られていない、「言ってはいけない、やってはいけない領域」にこそ、未来への可能性が潜んでいるのではないでしょうか。

最近はコンプライアンス基準が高く、ものを言いにくい世の中です。言ってはいけないことを堂々と語っているのは、ドナルド・トランプやイーロン・マスク、カニエ・ウェストくらい。それで世界中から叩かれています。私も「コロナ助成金は意味がない」「日本社会の老害、引退してほしい」などと言っていますが、彼らに比べるとかわいいものです。

言ってはいけないことを言う3つの方法

では、言ってはいけないことを上手に言う秘訣はあるのか。私は3つあると思います。「幼児性」「異国性」「武士性」です。アンデルセン童話『裸の王様』の中で子どもだけが真実を言えたように、幼児性を利用する。外国人のコンサルタントが空気を読まずにバッサバッサと首を切れるように異国性を使う。この2つは効果がありますが、内在的な変化までには至りません。あくまで一時的なもので、子どものようにすべての人々が王様に真実を言える世の中になることはないでしょう。

世の中の仕組みを変えるチカラを持っているのが、武士性を用いたアプローチです。具体例を2つ挙げましょう。ひとつは明治維新。武士が「自分が武士として生きられなくなることがわかっているのに改革を望んだ」という世界でも例を見ない革命です。

もうひとつが、第二次世界大戦後の渋沢財閥の解体。戦後、日本の財閥はGHQの施策により解体されてしまいました。でも、渋沢財閥はGHQから解体免除の特例措置を持ちかけられ、存続する道もあった。だが、渋沢財閥はその特権を拒否し、日本が次のステージに進めるよう、自分自身を解体する道を選びました。ニコニコと笑いながら、没落していったのです。

冒頭の言葉をもう一度言います。マルクス・アウレリウスは「空中に投げられた石にとって、落ちるのが悪いことでもなければ、昇るのが善いことでもない」と言いました。「乗り越えるより、没落しろ」。それも、ひとつの教訓だと感じています。

成田悠輔さんの講義全文を動画でチェック。※2022年11月20日〜11月30日18時までの無料限定公開。申し込みは画面内右上もしくは下の「視聴登録はこちら」より

Yusuke Narita
夜はアメリカでイェール大学助教授、昼は日本で半熟仮想代表。専門は、データ・アルゴリズム・ポエムを使ったビジネスと公共政策の想像とデザイン。ウェブビジネスから教育・医療政策まで幅広い社会課題解決に取り組み、多くの企業や自治体と共同研究・事業を行う。東京大学卒業(最優等卒業論文に与えられる大内兵衛賞受賞)、マサチューセッツ工科大学(MIT)にてPh.D.取得。一橋大学客員准教授、スタンフォード大学客員助教授、東京大学招聘研究員、独立行政法人経済産業研究所客員研究員などを兼歴任。内閣総理大臣賞・オープンイノベーション大賞・MITテクノロジーレビューInnovators under 35・KDDI Foundation Award貢献賞など受賞。著書に『22世紀の民主主義: 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』など。

TEXT=川岸徹

PICK UP

STORY

MAGAZINE

1月号 Now on sale

ゲーテ1月号表紙は松田翔太。エグゼクティブを刺激するスノーリゾート&時計の2大特集。

ゲーテ1月号

最新号を見る

定期購読はこちら

MAGAZINE

1月号 Now on sale

ゲーテ1月号表紙は松田翔太。エグゼクティブを刺激するスノーリゾート&時計の2大特集。

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌[ゲーテ]1月号が2022年11月25日に発売となる。本格的なウィンターシーズンの到来に向け、今月号はスキーリゾートを大特集。さらに、新作タイムピースをピックアップした時計特集ほか、新ビジネスを始めた松山ケンイチ、松田翔太のインタビューやゲーテ公式ECサイト「ゲーテストア」限定アイテムも必見!

最新号を購入する

電子版も発売中!

定期購読はこちら

SALON MEMBER

会員登録をすると、エクスクルーシブなイベントの数々や、スペシャルなプレゼント情報へアクセスが可能に。会員の皆様に、非日常な体験ができる機会をご提供します。

SALON MEMBERになる