まだまだ先行きが見えない日々のなかでアスリートはどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「コロナ禍のアスリート」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。
バスケットボール女子において日本人4人目となる加入
世界最高峰リーグでの挑戦がいよいよ幕を開けた。バスケットボール女子Wリーグの富士通から米プロリーグWNBAに加入した町田瑠唯(29)が2022年4月25日にワシントンで入団会見に臨み「自分の求められている役割をして、チームの目標である優勝に貢献したい。小さくても世界で通用するところを見せられるように頑張りたい」と意気込みを語った。WNBAで公式戦デビューすれば日本人4人目となるが、身長1m62は最も小柄。29歳での挑戦は最年長となる。
WNBAは男子のNBAの支援のもとに、1996年に発足。’97年にシーズンがスタートし、現在は12チームで構成される。東京五輪を制した米国代表の全12選手が同リーグに所属するなど世界のトップ選手が集まるリーグ。日本人は過去に萩原美樹子(サクラメント・モナークス、フェニックス・マーキュリー)、大神雄子(マーキュリー)、渡嘉敷来夢(シアトル・ストーム)がプレーしている。
町田のポジションはポイントガード。俊敏でハンドリング技術が高く、広い視野を生かしたノールックパスなどトリッキーなプレーが持ち味だ。昨夏の東京五輪では準決勝のフランス戦で五輪新記録となる1試合18アシストをマーク。大会通算75アシストでアシスト王に輝き、ベスト5にも選手された。日本の銀メダル獲得に大きく貢献したプレーに世界が注目。WNBAの挑戦権を勝ち取った。
WNBA公式サイトによると、町田の契約は「トレーニングキャンプ契約」。12人のメンバー入りは保証されていないが、クラブ側はプレー歴と指導歴のある通訳と新たに契約した。万全のサポート体制を整えており、ケガなど不測の事態がない限りは開幕前のカットはないとみられる。会見に同席したティボー監督も「彼女は頭がいいし、しっかりチームに適応できるはず。リラックスしてプレーすれば大丈夫。このリーグで成功すると思う。楽しみ」と期待を寄せる。
八村塁との対面を熱望。Wルイのコラボも近い!?
WNBAのレギュラーシーズンは約3カ月で36試合。約半年で24試合のWリーグに比べて過密で、全米各地を転戦するハードな日程となる。本場での成功に向け、町田は同じワシントンに本拠を置くNBAウィザーズの八村塁(24)との対面を熱望。「会う機会があればいろいろ聞きたい」と助言に期待した。
ミスティックスのオーナー企業「モニュメンタルスポーツ&エンターテイメント(Monumental Sports & Entertainment)」はウィザーズや2017-18年シーズンのNHL王者・ワシントン・キャピタルズも傘下に置く。ウィザーズとミスティックスのビジネス部門の代表は同じ人物が務めており、今後は日本市場をターゲットにしたSNS戦略などで2人の〝ルイ〟がコラボする機会が増えることも予想される。
町田は17日にWリーグの全日程を終え、23日に渡米。18日からキャンプを開始しているチームに約1週間遅れで合流した。新天地でもアシスト量産が期待される中で「アシストは一人でできない。選手の特徴を早く理解して、みんなを生かしていきたい」と強調。「たぶん(ポイントガードの)バックアップになるが、試合に出た時はスピードを生かしてアップテンポな展開にもっていきたい」とイメージを膨らませた。
チームは24日に今季初の対外試合を終え、27、30日にもプレシーズンマッチを予定。3年ぶりの優勝を狙う新シーズンの開幕戦は5月6日、ホームでインディアナ・フィーバーと対戦する。町田は「こんなにいい経験ができる機会は、なかなかない。気候などのコンディションは日本とは違ってくるので、やりながら調整していけたらいい。大変なところもあると思うが、楽しみの方が大きい」と視線を上げた。昨夏の東京五輪、21~22年シーズンのWリーグはともに準V。届かなかった頂点にWNBAで挑む。