ビジネスの最前線で闘うリーダーやスペシャルな人の傍らには、仕事に活力を与え、心身を癒やす、大切な愛用品の存在がある。それらは、単なる嗜好品にとどまらず、新たなアイデアの源となり、自らを次のステージへと引き上げてくれる、最強の相棒=Buddyでもあるのだ。今回紹介するのは、ゼットン創業者・稲本健一氏の相棒スキー&ブーツ。特集「最強の相棒」
MST(港区スキーチーム)とは?
氷点下の寒い状況下で見られるさらさらした雪をアスピリンスノーという。そんな極上の粉状雪質で知られる岩手県・安比高原スキー場に、港区スキーチーム、通称「MST」が集った。MSTはスキー愛好家10人ほどの経営者によって2016年に結成。飲食業のゼットン創業者で、再生医療、ホテル業など数多の経営に携わる稲本健一氏は部長として所属する。
「先月行ったニセコには10人、今回の安比は5人。だいたい5〜10人ほどが集結します。会長は博多串焼き『ごりょんさん』などを展開するベイシックスのガンさん(岩澤博社長)で、顧問はフランフランの創業者・髙島さん(郁夫氏)、コーチは賢太郎(皆川氏)という結成して6年のチームです。年4回仲間と滑ってきましたが、大人の楽しい雪遊びとはいえ、他の経営者チームには走行距離の長さと走行スピードの速さで負けたくないので、真剣(笑)」と稲本氏。
実は今、スキーを始める経営者が増えてきているとか。それはニセコの活況も背景にあるのかもしれない。それはさておき、冬季オリンピックに4大会連続日本代表として出場した元アルペンスキー選手の皆川氏をコーチに迎え、ストイックに滑る。MSTのスキー魂を感じつつも、気になるのは相棒として更衣室の外に並んで立てかけてあったアトミックのスキー&ブーツだ。「結成当初はスキーもブーツもばらばらだったんですが、今はアトミックで統一してます」
その5本、ひと目でわかる計100万円オーバー
1955年オーストリアでスキー板専業メーカーとして生まれたアトミックは、アルペンスキーワールドカップ男子総合優勝11連覇を成し遂げるなど、圧倒的な勝率を誇るブランド。なかでもMSTが乗る「レッドスター」は世界のトップレーサーが使用しているものと同じ技術を採用し、レースでタイトなラインと最速タイムのために開発されたシリーズ。皆川氏いわく「上位機種の攻撃的な加速力は随一。クルマでいうならラグジュアリースポーツカー」だ。
「毎回滑りだす時に感じるのは、スキーは重力を感じ地球にひっぱられる感覚のある落下スポーツだということ。体重を前方にかけなければ上手く滑れないし、ターン時に腰が引けた状態だとエッジを使えずアンコントローラブルになる。アトミックはレースに勝利するためにつくられているのですごいスピードが出ます。だから重力加速度をコントロールして自分を抑えて落下していく恍惚感には高揚しかないですね。自分にはオーバースペックな道具かもしれないですが、逆に安心感もある。なので、ミスった時にハイスペックに助けられることもある。うまく言えないですが、アトミックに乗って凹凸の斜面に対応して滑って自分の重力を感じた瞬間、自分のなかで新しいエネルギーが生まれるのを感じるんですよ」
撮影は早朝。スキー場オープン前の極上ファーストトラックを滑走する5人に、経営者ならではのストイックさとアトミックのレーシーさに相通じるものを見た。
「チームで道具を揃えるのって超大切で。チームの魂をひとつにするんです」
ゼットン創業者
稲本健一
1967年石川県生まれ。スキー歴50年。’95年、外食産業の会社ゼットンを設立。国内外に話題のレストランを多数展開。現在は飲食業のみならず、いくつもの会社経営に携わる。スキーだけではなく、トライアスロンやサーフィンを愛するマルチアスリート。「世界中の人が日本の雪質を味わいたいと思っているなか、日本人は気軽にスキーをしに行ける環境にある。どれだけ雪に恵まれているのかを感じている」