川谷絵音プロデュースバンド「ジェニーハイ」の最新アルバム『ジェニースター』が9月1日に発売となる。新譜に込められた思いを直撃インタビュー!
多作だからこそ新しい音が生まれます(川谷)
アンニュイなボーカルの背景で鳴らされる、シャープなギター。一度聴くと身体の中でくり返されて止まない、キャッチーなキーボード。9月1日にリリースされるジェニーハイの新譜『ジェニースター』は、1曲目「華奢なリップ」、2曲目「夏嵐」と疾走していくような楽曲から始まるアルバムだ。サウンドはきらきら輝いている。それでいて、切ない。
ジェニーハイは、ギターの川谷絵音(えのん)がプロデュースする男女5人組のバンド。スタートは2017年。吉本新喜劇座長の小籔千豊(かずとよ)が、BSスカパー!のバラエティ番組『BAZOOKA!!!』のレギュラー、アーティストの中嶋イッキュウと野性爆弾のくっきー!とバンドを結成。川谷と音楽家の新垣隆に声をかけた。
音楽の土台を支えるリズムセクションは、お笑いのふたりが担う。小籔のドラムスに、イッキュウの歌が際立ち、歌詞の世界が広がる。くっきー!のベースは、歌手のように太く歌う。
「バンドのデビュー曲『片目で異常に恋してる』で、ふたりは僕の思っていたレベル以上の演奏をしてくれました。そこから1曲ごと、難易度を上げてレコーディングしています」(川谷)
「ジェニーハイが始まってから本格的なドラム練習をしている感じです。9時から11時まで基礎を反復しデモテープに合わせて叩いて、眠い目をこすりながら劇場へ向かう日々です。レコーディングが近づくと、気づくと楽屋でもスティックで腿を打っていて、内出血で紫色になった大腿部を見て奥さんに一瞬驚かれるんですけど、いつもの時期が来たんだなと思われていますね(笑)」(小籔)
川谷はジェニーハイのほかに、indigo la End、ゲスの極み乙女。、ichikoroと4つのバンドのメンバーとして活動しながら、DADARAY、美的計画のプロデュースや楽曲提供も行っている。ジェニーハイの楽曲アレンジと各パートのディレクションには川谷のバンドそれぞれの主力を動員し、in digoの佐藤栄太郎がドラムを、ゲスの極み乙女。の休日課長がベース、ちゃんMARIがキーボードを担当している。
「お笑いは瞬間の反応が大切。一方音楽は反復が大切。それがわかりました。基本の反復もクリエイティヴな作業だと、音楽に教えられています」(小籔)
ドラムスとベースが音のキャンバスなら、そこに彩り豊かな景色を描くのは現代音楽家である新垣のキーボード。
「ガッキー(新垣)の才能は別次元。先日も彼の公演を観てレベルの高さに驚き、自信喪失して帰宅しました。そんな人がジェニーハイでは譜面どおりに、温かい音色を奏でてくれる。一流の音楽家なのに、バンドでは不慣れなラップにもトライしてくれます」(川谷)
川谷が作詞作曲する作品は年間数十曲にのぼる。自分のバンドだけでなく、SMAPやMISIAにも楽曲を提供してきた川谷にとって、毎日の曲づくりは、特別なことではないという。
「たくさんつくれば、曲と曲との相互作用で新しいものが生まれます。個性が違うほかのバンドでの体験がジェニーハイに生き、ジェニーハイの音楽がほかのアーティストの制作にも還元され、曲のバリエーションが豊かになってきました」
コロナ禍で在宅時間が増え、さらに創作に拍車がかかった。
「実は、音楽で自分を表現したいとか、気持ちを伝えたいとか、一度も考えたことはありません。それでも、間違いなく僕になくてはならないのが音楽です」
音楽をやらなければ自分自身を維持できないーー。川谷は確信している。
「うまくできたことが、ほかに何もないんですよ。10代まで地元ではまったく認められない存在でした。でも音楽をやっていれば、みんなに聴いてもらえる。音楽と出合えてよかった、と思っています」
GENIE HIGH
2017年に、BSスカパー!『BAZOOKA!!!』をきっかけに結成。さまざまなジャンルのジェニー(フランス語で天才の意)が集結した5 人組バンド。メンバーは、ドラムに小籔千豊(1973年大阪府生まれ)、ベースにくっきー! (’76年滋賀県生まれ)、キーボードに新垣隆(’70年東京都生まれ)、ボーカルに中嶋イッキュウ(’89年滋賀県生まれ)、ギター& プロデュースに川谷絵音(’88年長崎県生まれ)。2018年にデジタルシングル「片目で異常に恋してる」でデビュー。同年にミニアルバム『ジェニーハイ』、’19年にフルアルバム『ジェニーハイストーリー』を発表。9月25日に神奈川県のぴあアリーナMMでライヴ「アリーナジェニー」を行う予定。