「トレーニングは腑に落ちることが大事」
生放送のキャスターほど過酷な仕事はないのではないだろうか。時事問題から芸能情報まで、時々の話題を解説するとともに持論も述べる。時間内に進行するために使う神経は、どれほどのものなのだろう。
そんなハードな仕事を30年もの間務めてきた宮根誠司。2004年に朝日放送を退社してフリーになってからは、東京・大阪間を移動しながら、現在、週6日の生放送番組に出演する。だが、相当アクティブに仕事をする宮根の心身はそこまで強靭ではない。自身でも「自分の身体は大丈夫なのか?」と深刻に感じた時期があったという。
「3年前の年末に、東京での特番も重なって移動が増えた。その時に初めて、ヘロヘロというか、自分の身体の状態に不安を覚えたんです。それで訪ねたのがこの鍼灸院でした」
単なるトレーニングジムではない。元は力士という奥村紀計(のりかず)氏が開く「アームズ鍼灸院」は、東洋医学を元にした診療を行い、身体のゆがみやハリなどを診る。その後、必要ならば鍼灸治療もするし、弱い部分を強化するための筋トレ指導も行う。パーソナルトレーニングが基本だ。
宮根も、その日の身体のコンディションを診てもらい、必要なトレーニングを指導してもらうという。
「最初に診てもらった時に、かなりいろいろな部分が弱っていることがわかったので、それからは週に一度、1時間のトレーニングをお願いしています」
かつては、ボディメイクに力を入れ、腹筋を割ることを目標にしたこともあった。けれど今は、それよりも身体をニュートラルにしたいと思っている。生放送を毎日やっていると、緊張で身体がこわばり、筋肉が硬くなっていると感じていた。
「トレーニングするうちに、筋トレの意味やどこを鍛えれば今の自分によいかが、ストンと腑に落ちました。僕がやっているのは、ある意味筋トレではなく強烈なストレッチなんですよね」
まずは、ウォーミングアップのために身体を動かし、その後は大きな筋肉、つまり広背筋や肩の筋肉、太腿の筋肉などをマシンやバーベルなどを使って動かし鍛えていく。
90キロのバーベルを上げながらのデッドリフトやTバーローイング、サイドレイズといった部位に合わせた筋トレを次々にこなす。開始から10分もすると玉のような汗が吹きだしてきた。
「最初はキツいと思いましたが、今はこれがないと、かえって不安になります。食事制限もまったくないから、苦労なく続けられるんです」
白米を中心に、糖質をたくさんとりながら、そのエネルギーで筋トレをするのが、ここのスタイル。痩せることなく、いつしか上半身に筋肉がつき、逆三角形の体型になっていた。
「背中や肩を鍛えると、腕や腰に負担をかけず重いものを棚から下ろせる。太腿を鍛えると、つまずくこともない。いわば、リハビリなんですよね(笑)。実はゴルフの上達にもつながっています。僕のレッスンプロを奥村さんに紹介したことで、ふたりの間で僕の身体の情報を共有し、ゴルフ上達のための筋肉のつけ方を、トレーニングに加えていただけるようになりました」
とはいえカメラの前に立つ仕事。前提として、颯爽と見えるようにという想いがある。
「もちろん褒められれば嬉しいですよ。でもそれより今は健康のためです。少しでも長く仕事をするためにも、トレーニングは続けたいですね。身体に自信が持てると、仕事にも自信が持てますから」